別に中国でなくても構わない。時代を隔てた昔である必然性もない。極言すれば、舞台を現代日本に定めてもおかしくない。さすがに飴売りの少年は見ないか。でも、それだけ普遍性のある物語だ。
影のあるハッピーエンド、光のあるアンハッピーが好きなんだそうな、作者は。
この作品を読むと、言い得て妙だなと思う。確かにそんな感じの作品である。
先達のレビューを読むと「読み直した」みたいなコメントが多発している。その気持ちも分かる。
収まりが良いのか悪いのか、何だか釈然としないけれど、気持ちの洗われるような微かに爽やかな読了感を味わえる。
私のレビューを読んでもサッパリ分からないだろう。シンプルな物語なので、逡巡するくらいなら一読してみよう。
飴売りの少年と、不思議な美少女の物語。
北宋時代の繁華街の賑わいを背景に、少年と少女が出会い、物語が始まります。
ですが、時にシビアで、時に明るく美しい日常の風景を描きながら、物語が語り掛けているのは、もっと別のこと。
北宋時代の少年と少女の日常の物語を読んだはずなのに、ほんのり暗い影を帯びた長編を同時に読んだような、不思議な読後感を味わいます。
日常を描くことに徹しながら、どのキャラクターもそれぞれ血が通った個人で、それぞれが抱える悩みまでをもひそかに描ききっているからです。すごい。
そして、読み終わった後は、必ず第1話から読み返したくなるはずです。
戸惑いながらも一歩を踏み出していく少女と少年が可愛いくて、読んでいる間はいつのまにか物語の中に私も連れていってもらって、人混みに紛れて、または茂みの陰から、二人を応援していました。
面白いです!