初詣

 釜揚神社では多くの人が初詣に来ていた。モモたち三日月家の面々も初詣に来ていた。

 境内の前でお賽銭を入れお祈りをするモモ。


「それにしても、人が多いね」

「やっぱり元旦だからよ」

「お父さん、お母さん、人が集まっているところがあるよ。行ってみよう」


 モモたちが向かった先には餅をつくための臼が置いてあった。

 そこへ着物を着た藤田のり、そして袴を着た安永拳が現れた。


「これから新春餅つき大会をはじめます」


 安永が杵をもって餅をつき始めた。


「ヨイショ、ヨイショ!」


 周りから掛け声がかかる。しかし、餅をつく安永の姿がどことなく頼りない。


「拳ちゃん、もっと腰を入れてついて!」

「のりさん、これ意外と疲れるって」

「情けないこと言わないで、もっともっと!」

「えーい!」


 安永がへっぴり腰でもちをついていると、安永と同じ袴をきたもじゃもじゃ頭の男が突如現れた。


「拳ちゃん、そんなつき方じゃ駄目だな!ここはやっぱり主役の登場かな」

「洋ちゃん、頼みます」


 安永がひなた寿司の味泉 洋に杵を渡した。


「いよっ、待ってました、若大将!」


 周りからの期待の声が上げる。


「みなさーん、今年の年男、味泉洋が荒々しい餅つきをみせてあげますよ!」


 洋ちゃんが力強く餅をつき始める。


「ヨイショ、ヨイショ!」


 周りからの掛け声も盛り上がってきた。


 餅つきが終わり、みんなでついた餅を食べ始めた。

 安永が疲れた顔で餅を食べていると、肩を叩かれた。


「あ、モモッチ」

「ヤスケン、明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとうございます、モモッチ」

「餅つき、お疲れ様」

「あら、見ちゃった?」

「見ちゃったよ、見事なへっぴり腰」

「それは勘弁してよ」


 二人が話している姿を菊池萌子がすこし離れたところから発見した。

 二人の姿にいら立ちを覚えた菊ちゃんは持っていた餅を二人に向けて投げた。

 しかし、餅は二人の横を通り過ぎ、別の人の顔に当たってしまった。


「うわっ、なんで餅が?」

「あ、田勢くん」

「あ、モモ先輩。明けましておめでとうございます」

「おめでとうって、餅とったら?ってなんで顔に?」

「僕にもわかりません」


 田勢が懸命に顔についた餅を取る。すると、菊ちゃんが田勢に近づき、


「なんで、あぁたが当たるのよ!」

「あ、菊ちゃん」

「あ、安永先輩。あけましておめでとうございます」


 安永に発見され、恥ずかしがる菊ちゃん。


 4人が集まったところへしげるがやってきた。しげるの後ろにはルギー・タックの双子がいた。


「ヤスケン、モモッチ、あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとうございます、リーダー。って、ルギーさんが二人……」


 モモが金魚のように口をパクパクと開けた。


「ああ、モモッチ。ルギーさん実は双子だったんだ。これで、この前の謎は解けた?」

「うん……」

「モモッチ、大丈夫?」


 安永がモモの顔の前に手を振った。


 夜、モモはテレビを見ながら餅を食べていた。


「ああ、今日は疲れたな。お雑煮つくったり、初詣行ったり、ルギーさん双子だったりしてイベント多すぎだったよ」

「イベント大杉漣ってか」

「お父さん、それ寒い……」


 すると隣でモモと同じように餅をたべていたまさ子が、


「モモ、あぁたちょっと食べすぎじゃない?今日一日で何個餅食べたのよ?」


「えっと、朝5、昼3、神社で5、夜3、いま夜のおやつで2個目かな?」

「もう18個も食べてるじゃないの?いつもより8個も多く食べてるじゃない?今日はそれくらいにしなさい!」

「はーい。さすがにこれじゃ太っちゃうか」


 といいつつ、あまり気にした様子もないモモであった。

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