お正月

三日月家のお正月

 1月1日。三日月モモは母親と台所で悪戦苦闘していた。

「あらら、モモ大丈夫?」

「お母さん、大丈夫だって。いちいち口出さないでよ」

「だって、気になっちゃうから……」

「お母さん、骨折しているんだからおとなしくして!お母さんが隣にいるとできるものもできないよ」

「でもね……」

「おせちはお母さんもほめてくれたじゃない。任せてよ」

「わかったわよ……って、モモ醤油入れすぎだって!」


 モモの母まさ子は腕にギブスを巻いていた。モモは骨折した母に代ってお雑煮を作っていた。


「お父さん、おもちは焼けた?」


 モモがオーブンレンジの前にいる父三太に声をかける。


「おお、いい具合に焼けたぞ」


 三太がオーブンレンジからいい具合に焼けた切りもちを大量に取り出した。

 モモは三太からもちを受け取ると、用意されたお椀の中にもちを入れる。


「お父さんは2個、お母さんは1個、あたしは3個と」

「ちょっと、あぁた入れすぎじゃないの?」

「いいじゃない、お母さん。よくがんばったで賞だよ」

「もうしょうがないわね」

「じゃ、みんな席について」


 モモは餅の入ったお椀にお雑煮の具と汁を入れ、テーブルに並べた。


「ミッフィーおいで」


 モモは居間でごろごろしていたペットのミッフィーを呼ぶと、ミッフィーはコロコロと転がり込んできた。

 三日月家の三人が席に座る。


「では、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」

「お願いします。じゃ、食べましょ」


 3人がおせちとお雑煮を食べ始めた。


「お、なかなかうまいぞ、モモ」

「本当?ありがとう、お父さん」

「お父さん、あたし骨折してるんだから、食べさせて。はい、あーん」


 まさ子が三太に向けて、大きく口をあける。三太は数の子をまさ子の口へ優しく入れた。


「うん、おいしいわね。あたしの指導のおかげね。じゃもう一個、ダーリン。アーン」


 三太はたし巻き卵をまさ子の口に入れた。その光景をみたモモは、


「二人ともいい年して、アツアツだね」


 と少し呆れていた。


「モモ、いいじゃないの。こういう時しか甘えられないのよ。ほらダーリン、今度は昆布巻き。アーン」

「はいはい、わかりました。じゃ、あたしお雑煮おかわりするね」

「モモ、今度はもち2個にしなさいよ」

「……はい」


 モモは渋々と餅を2個だけ入れて、お雑煮のおかわりをした。

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