人質救出

 12:00。バリケードの端のほうにしげるとフジはいた。


「ここは少し低いわ。じゃここから登って行って、ジャック」

「はい」


 校長と『自由解放組』との交渉が続く中、しげるは慎重にバリケードを登っていく。なんとかバリケードを登りきったしげるは忍び足で文化部室棟の2階に上がった。見つからないようにある部屋の窓をのぞくと、男が3人、そして椅子にすわっている女生徒がひとりいる。


「あの子が人質か。どうやって助けようかな?って俺も生徒だから味方のフリしていけば大丈夫か」


 大胆にも普通に部屋のドアを開けるしげる。


「なんだ、お前は」

「やあ、君たちの思想に賛同した一人だよ。俺達で自由を勝ち取ろうぜ」

「あんた、体操部の城ヶ崎さんだね。あんたのような有名人が我々の同志になってくれれば百人力だよ」

「ありがとう。ところでリーダーは?」

「リーダーは別室で校長と交渉中だ」

「それにしても、あんたバカな人だね」

「え?」

「ほんと、バカな人」

「あ」


 突然羽交い締めされるしげる。そして、そのまま椅子にしばりつけられる。

 縛り付けられたしげるは目の前の光景に驚いた。


「エージェント・フジ。なんで君が?」

「ヒロインが実は敵のスパイだっていうのはドラマの常識よ。もしかして、見てないの?」

「ああ、見てない」

「ほんとバカな男」


 その場を立ち去るフジ。しげるは隣の人質になっている女生徒に声をかける。


「君、名前は?」

「茶道部2年の桜小路です」

「なんで、こんな目に?」

「はぁ、茶室でお昼寝してたら、いつの間にかここへ」

「拉致か」

「拉致ってなんですか?」

「本人自覚なしか……」


 ため息をつくしげる。

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