第182話明日から都内へ 茜の忠告

夕食も終わり、麗は大旦那、五月、茜とお茶を飲んでいる。


大旦那

「甘味屋も喜んでおった」

五月

「実に面白い、さすが麗ちゃんや」

「希望の光や、ここのお屋敷にも、京都にも」


麗は、その褒め言葉を話半分に聴く。

「さすがに家族になったんだから、口から出まかせでもないだろうけれど」

「そもそもの甘味屋の反応が軽過ぎる、おそらく京都特有の社交辞令、実はない」

「だから、全く期待しない」

「その前の俺の言葉も、思いついたことを適当に言っただけ」


大旦那の話題が変わった。

「お世話係の話も上手に落ち着いて安心や」

「明日から、東京に戻るか」

麗は頷く。

「はい、いろいろありまして」

五月は麗の手を握る。

「ほんの一週間やけど、寂しいわぁ」

「今度は茜やのうて、うちとデートしましょ」

麗は軽く握り返す。

「はい、楽しみに」

茜も寂しそうな顔。

「ほんま、最近、張りがあった」

「それが、スッと抜けるとつまらん」


大旦那が茜に声をかける。

「可愛い弟やな、茜」

茜は、少し涙ぐむ。

「その通りで、愛おしくてたまりません」

五月も茜の涙に感じるものがあったのか、目を潤ませている。


そんな「家族団らん」も終わり、麗が自分の部屋に戻ると、少しして茜が入って来た。


茜は、顔を下に向けた。

「まだ寂しいし、あそこでは言えない話もあるんや」

麗は茜の顔を真っ直ぐに見る。


茜は小さな声。

「言いづらいけど・・・麗ちゃん」

麗も小さな声。

「うん、何でも聴く」

茜は、顔を上げた。

「お姉さんたちに、恥をかかせんと・・・わかる?」


麗は困惑する。

意味がしっかりとつかめない。


茜の顔が赤い。

「つまりな、男と女の身体の話や」

「葉子さんも、涙流して、落ち込んだ」

「それ以上は・・・わかるやろ?」


麗は、答えづらい。

おそらく肉体関係の話とは理解する。

「お姉さんたちに恥をかかせない」とは、「葉子が涙を流して落ち込んだ」との関連から考えれば、「肉体関係を求められたら、ただ単に拒絶はするべきではない」との意味にとれる。

「俺との肉体関係の有無が、お世話係の心理に影響を与えるのか」

「俺との肉体関係まで、お世話係の職務なのか」

「そんなことまでは、望んでいない、それを言うと問題があるのか」


答えに困る麗に、茜。

「やさしゅうな・・・それだけ」

「麗ちゃんは、手当たり次第の性格やない」

「それは、ようわかっとる」

「でも、あの人は抱かれて、うちは抱かれないとなると・・・」

「その後が面倒に」


麗は、ここでも答えに苦しむ。

なかなか、返す言葉が思いつかない。

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