第150話麗は葉子へのフォローを考える。
麗は自分の部屋に戻り鍵をかけ、PCを開き、「葉子」のデータを確認する。
「22歳、奈良の名門女子大卒か、庶務係となっている」
「それがここの御屋敷に?」
「親は大学教授、姓からして藤原一族か」
「しかし、安心はならない」
「まずは、断って正解だった」
茜とその前にPCで使用人の顔を見ていた時には目に留めていなかったことも反省する。
「茜姉さん以外にも、若い女性は多い」
「今、見ているだけで、25歳未満では・・・8人はいる」
「料理や裁縫の屋敷の仕事、庶務,、いろいろだ」
「詳しくは茜姉さんと五月さんに確認するしかないか」
麗がそんなことを考え、PCの使用人データを確認していると、部屋のドアにノック音。
ドアノブを回そうとする音も聞こえるけれど、鍵をかけてあるので、回らない。
麗が慎重にドアに近づくと、「麗ちゃん、うちや、開けて」との茜の声。
それで麗はホッとして、ドアを開ける。
茜は、そんな麗を見て、少し含み笑い。
「桃香ちゃんの言う通りや、冷酷の冷ちゃんや」
麗は、風呂場でのことを知られたかと思うけれど、背中を流すのを断っただけ。
特に悪いことをしているとは思わないので、自分から言うこともない。
茜は麗の部屋のベッドに座り、麗を手招き。
「麗ちゃん、葉子さんを断ったんやて?」
麗は、そこまで知られているのなら、と素直に頷く。
「そんな背中流しなんて、いりません」
「自分で身体くらいは洗えます」
葉子に「拒絶の意」を示した時と同じことを言う。
茜は、クスッと笑う。
「葉子さん、泣いとった」
麗は、何も答えようがない。
必要がないことを、必要がないと言ったまで。
もちろん、突然の背中流しを申し出る若い女へと、京都人への警戒心からになる。
茜は真面目な顔。
「麗ちゃんらしいな、実に慎重」
「下手に女の誘いに乗らない」
「今夜のところは、仕方ない」
「葉子さんの、目論見は水の泡や」
麗は、ここで茜に確認すべきと思った。
それは、茜が持つ「葉子の行為」への評価の確認になる。
麗が、黙っていると茜が言葉を続ける。
「まあ、葉子さんの勇み足やな」
「麗ちゃんを甘く見たんやろ」
「22歳のお姉さんから見れば、18歳の男の子なんて、背中を流してくれるなんて言うたら、喜んで飛びついて来る」
「そして、自分も風呂場で裸になって、麗ちゃんに、いろいろと仕掛ける」
「そして、既成事実を作って、後々、自分に有利なように麗ちゃんを動かす」
「まあ、何と言っても、九条家の後継や、関係を作っておいて損はない」
「そう思ったんやろな」
麗は、「思った通り」だったので、横を向いている。
茜が真顔。
「さすがやな、麗ちゃん」
「でもな、麗ちゃん」
麗は、茜の真顔の裏を読む。
「つまり、葉子さんにも、上手にフォローをってことかな」
「笞の次に飴を」
「この屋敷に入ったばかり」
「下手に関係を遮断しないようにする」
茜は、頷いている。
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