捕獲せよ!ハナモグラ


「いやあ~楽勝だったなあ~」

「楽勝じゃないでしょ。4よ4! 残ライフ」


 4人は25階層を抜けると24階層のダンジョンへと進んでいった。


「す、すみません……わ、わたくしのせいで」

「そーよ、あんたのせいで死んだんだからね!」

「まーまー、ディアーナとエレナのほうが俺を殺した回数多いんだし。気にするなよ。なんかフィオリナたんの聖水のせいで、スッキリした気分だしー」

「汚された、汚された、汚されたのデス! ワタシの暗黒の怨念がぁあぁああああああ」

「ま、一部、スッキリしたくなかったヤツもいるみたいだが気にするな! あとはハナモグラを捕って捕って捕りまくるだけの簡単なお仕事だぜーい!」


 エマの話によると、ハナモグラの群れは21階~24階までの階層にいる。だからボーマンのフロアを抜ければハナモグラの生息域だ。

 

「お? アレじゃね? ハナモグラ!」


 そこにはネズミを二回りくらい大きくした小モンスターがいた。これまで様々なモンスターを見てきたヒカルにしても、どちらかと言えばカワイイ、といえる容姿だった。しかし……


「あ、ホントだあ~うまそーう! よしヒカル! 行くよ!」

「おうディアーナ捕まえまくれ! なにせ目標千匹確保だからな~」


 ――ハナモグ♪ ハナモグ♪ ひと儲け♪ ふた儲け♪

 ――ハナモグ♪ ハナモグ♪ 丸焼き♪ 焼肉♪

  

 ハナモグラが金にしか見えないヒカルと、肉にしか見えないディアーナは鼻歌さえ歌いながら、ハナモグラを次から次に捕獲していった。

 

「やばい、やばいぞディアーナ! がっぽがっぽだぜ、ちょろすぎるぜ! もはやコンビニバイトなんてできないレベルだぜ!」

「うんうん! 珍味珍味! 煮てよし焼いてよし、だかんね~」


 脇へと伸びる横穴をどんどん進んでいくと、ハナモグラの数も増えていった。エレナとフィオリナは少し怖くさえあったが、ディアーナとヒカルは相変わらず意気揚々と狩っていった。


「そ、そろそろ戻りたいのデスが」

「何いってんだよエレナ! まだ500匹ってとこだぞ? あと半分だ」

「ご、500あればとりあえず借金は返せますし、そ、そもそも、もうこれ、重いですしぃ~ま、また次でいいのでわないデスか?」


 狩るのはヒカルとディアーナで、狩った得物はエレナとフィオリアが運んでいた。


「ばぁ~か、冒険者の野郎どもに根こそぎ持ってかれたらどーするつもりだよ。一事が万事なの! 捕れるときに捕る! それが重要だろーが」

「だ、だけど……く、暗いデスし~」

「はーあ? そんな暗黒面からやってきたみたいな服してるくせに、暗いの怖いのかよ」

「わ、わたくしも、す、少し暗いのが……怖いのですぅ」

「ディアーナ! フィオリナたんが怖いらしいからなんとかしろ」

「は~あ? 意味わかんないんですけどー。でも、まあいいわ、私の能力なめないでよ」


 ――パチンッ


 ディアーナが指を鳴らすと手のひらサイズの火の球が生まれ、穴の奥を照らした。


「お、使えるじゃん。使える魔法持ってんじゃんディアーナ!」

「でしょう~褒めて! もっと褒めてよ」

「うむうむ。マッチの女神サマ! 懐中電灯要らずの女神サマ!」

「ちょちょちょちょちょちょ! ヒカル氏!」

「ん? どったの? エレナ氏」

「ま、ま、ま、前を!」

「ん? 前がどーした?」


 ヒカルとディアーナは足元ばかり見ていた視線を上にあげた。そこには、ハナモグラの10倍、いいや100倍はあろうかという化け物が立ち上がり、目が赤く光っていた。


「え、えと……はいこれ~」


 ヒカルはボーマンからもらってきた通行許可パスを見せた。


 ――ギョギャギュギョギョギョギョォォオオオオオ


 しかし、化け物は止まるどころか、逆に走り出した。ヒカル達に向かって。


「んー……な、なんだコイツ!」

「ボスね」

「え?」

「なんか聞いたことあるわ。ハナモグラのボス。しかも……レッドモード!」

「えええ? あれハナモグラなの? ぜ、ぜんぜん違うんですけどー」

「いいから逃げるのよ! レッドモード、通称ぶち切れモードのハナモグラボスに出会った者は生きて帰れない……という噂よ」

「よ、よし撤収! ボーマンのフロアまで引き上げるぞ! って、え? みんなすでに逃げてるし! ま、まってくれよー」


 女神達は捕獲したハナモグラ袋を放り出して逃げ出していた。


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