六曲目『くだらない戦争に音楽を』
決戦の火蓋が切って落とされ、味方陣営と敵陣営が入り乱れるように戦い始める。
先陣を切ったケンタウロス族が剣や槍で黒い騎士に襲いかかり、背中に乗ったエルフ族が魔法で吹き飛ばしていた。
さらに、猛スピードで戦場を駆け抜ける黒いヘドロで構成された四足歩行の人型モンスターと狼が、ヴァべナロスト王国軍とぶつかり合う。
ヴァべナロストの騎士たちは盾で獣のように襲う人型モンスターを取り押さえ、そこを別の騎士が槍で貫いた。
雄叫び、爆音、砂煙。苛烈な戦いを甲板から見ていた俺は、グッと拳を握りしめる。
「俺たちも行こう! ベリオさん!」
みんなが戦ってるのに、いつまでも眺めていられない。
そう思って伝声管を越しにベリオさんに声をかけると、機竜艇は下ではなくグンッと上昇した。
「え、ちょっと!? ベリオさん、どうして!?」
「申し訳ありませんが、今は無理です」
驚いていると、伝声管からミリアの声が響く。
どうしてなのか聞こうとして、ゾワリと寒気がした。
暗雲に紛れた、黒い影。
空を覆い尽くすほどの夥しい数の、黒いヘドロで構成されたワイバーンがこちらに向かってきているのが見えた。
「あの数のワイバーンが上から襲ってくれば、下の人たちが対処し切れません。ここは、機竜艇艦隊であのワイバーンたちを駆逐します」
「そういうこった。それで、だ……タケル、お前らの
ベリオさんが言ういつものって言えば、一つしかない。
俺たちはすぐに頷き合い、いつもの定位置に着いて魔装を構える。
やよいは斧型のギターを、真紅郎は銃型のベースを、サクヤは魔導書を開いて魔力で出来たキーボードを、ウォレスはドラムセットを模した魔法陣を展開させた。
そして、俺は柄に取り付けたマイクを口元に持ってくる。
「やろうぜ、みんな。俺たちの音楽で、みんなを助けるんだ」
俺たちがやるのは、ライブ魔法だ。
魔力を合わせ、演奏を始めようとした__その時。
「ちょっと待って、タケル!
そこで、真紅郎が目を見開きながら空を見上げていた。
続いて俺たちも空を見上げて、唖然とする。
「おいおい、なんだよあれ」
ドス黒い暗雲に、今俺たちがいる戦場が
ダークエルフ族たちが一糸乱れぬ動きで敵を殴り飛ばしている姿、濃紺のローブを纏った星屑の射手たちが戦場を駆け抜ける姿。
氷属性魔法で敵を凍らせるアスワド、狼に押し倒されていた騎士を助けるレイド、魔法を放って敵を吹き飛ばしているシリウスさんやユニオンマスターたちの姿。
その全ての映像が、暗雲に映し出されている。
すると、闇属性の含み笑いが戦場に響き渡った。
「哀れにも命を無駄にするお前たちの滑稽な姿を! 絶望と怨恨の叫ぶ声を! そして、全てを飲み込む闇の恐怖を! 全世界中に見せつけてやろう! この星に生きる愚かで脆弱な生物たちよ! 今日が、お前たちの終焉だ!」
どうやら闇属性がやったことらしい。
全世界中にこの戦いを見せつけ、恐怖と絶望を味合わせようとしているみたいだ。
__だけど、それは悪手だぜ闇属性?
「つまり……俺たちRealizeのライブが、全世界中継されるってことだよな?」
俺の言葉に、全員がニヤリと笑みを浮かべる。
闇属性は映像と、
ちょうどいい機会だ。感謝するよ、闇属性。最高のステージを整えてくれて。
これで__俺たちの音楽を、全世界中に届けることが出来る。
ゆっくり息を吸い込んだ俺は、この戦場__いや、全世界に届かせるように、マイクに向かって声をぶつけた。
「ハロー! この星に生きる素晴らしい生物たちよ! これからお見せするのは、世界を守ろうとする戦士たちの格好いい姿! そして__俺たちRealizeの、音楽だ!」
闇属性に意趣返しするように、ビリビリと戦場と世界中に俺の声が轟いていく。
「絶望? 恐怖? 全ての飲み込む闇? くだらねぇな! だったら俺たちは__全てを包み込む楽しい音だ!」
俺の想いに呼応するように、ウォレスがビートを刻む。
これから俺たちがしようとしていることに、下にいる全員が鼓舞されていくのを肌で感じた。
テンションが上がっていき、ニヤリと口角を上げた俺は闇属性がいる城に人差し指を向ける。
「闇属性が始めた、くだらない戦争に__俺たちの音楽をかましてやる!」
激しくビートを刻んでいたウォレスが手を止め、空気が張り詰めていく。
静かにマイクを握りしめた俺は、全世界に向けて告げた。
「Realizeがお送りする、全世界中継のライブメドレー。記念すべき一曲目__<壁の中の世界>」
曲名を言ったのと同時に、やよいがギターを掻き鳴らす。
ディストーションを強くかけたイントロに続いて、ウォレスのドラム、真紅郎のベースが混じり、サクヤのキーボードが演奏に彩りを加えた。
初っ端からガンガンと激しい、<壁の中の世界>。全世界中継のライブメドレーの一曲目に相応しい、ロックな楽曲だ。
やよいたちの演奏が戦場に響き渡ると、機竜艇が一気に速度を上げる。
「このままワイバーンの群れの上を取り、制空権を得ます! 機竜艇艦隊、全速前進!」
「おうよ! 行くぞ、野郎ども! 気合い入れろぉぉッ!」
ミリアの指示にベリオさんは声を張り上げながら、機竜艇艦隊の全員を鼓舞する。
そして、イントロが終わったタイミングで俺は息を吸い、マイクに向かって歌声をぶつけた。
「君に届いているだろうか あの日の地の温もりは 君に聞こえているだろうか あの日君に伝えたかった言葉は」
Aメロの歌詞を歌い上げると、機竜艇の周りに紫色の魔法陣が展開される。
演奏を通じて一体化した俺たちの魔力が魔法陣に集まっていき、激しく発光し始めた。
「遠く離れた見知らぬ土地で 君は同じ空を見て何を思う?」
機竜艇は襲いかかってくるワイバーンの群れを縫うように飛び、船体を斜めにしながら上へ上へと向かっていく。
演奏は激しさを増し、ウォレスが獣のような雄叫びを上げてドラムを激しく打ち鳴らし、真紅郎の地を這うような低いベースの重低音が重なり合う。
そこに、やよいが歪んだ音を響かせ、サクヤの跳ねるように鍵盤を叩いて鳴らすシンセサイザーの音が追従していった。
「金魚鉢を買った 部屋の小窓に置いた 水も砂も 魚も入れずに」
Cメロが終わり、サビに入る前に一瞬だけ演奏が止まる。
そして、俺はワイバーンの群れに指を銃のように構え、ライブ魔法の引き金を引いた。
「夜になると 君が見ているだろう星を入れるために 僕の声は小さな部屋でしか響かない」
同時に、無数の魔法陣から紫色の光線が放たれる。
<壁の中の世界>のライブ魔法での効果は、対軍殲滅砲撃魔法。
他の機竜艇に当たらないように調整しながら、紫色の光線はワイバーンの群れを襲った。
逃れようとするワイバーンを追いかけるように魔法陣を動かし、光線がワイバーンを飲み込んでいく。
「音は広がる 世界を超えて 音は 繋がる 君にどうか」
一番のサビが終わると、機竜艇は旋回しながらワイバーンの群れの後ろを取った。
他の四隻は群れの左右を挟み込むように二手に分かれ、船側を向ける。
「__今です! 全艦隊、一斉砲撃!」
そこで、ミリアの指示が響き渡った。
各機竜艇の船側にあった砲台から、轟音と共に砲弾が放たれる。
機竜艇に囲まれた状態で逃げられなくなったワイバーンたちは砲撃の雨に悲鳴を上げ、爆音がかき消していた。
俺たちのライブ魔法、そして機竜艇の連携でワイバーンの群れのほとんどを一掃することが出来た。
このままワイバーンを全部駆逐しようと、二番の歌詞に入ろうとした__その時。
「__緊急旋回! 面舵いっぱい!」
「うおぉぉぉぉぉぉッ!?」
声を裏返らせながら叫んで指示を出したミリアに、ベリオさんが慌てて舵輪を激しく回す音が伝声管から聞こえる。
機竜艇が勢いよく右へと旋回すると、下から黒ヘドロの砲弾が襲いかかってきた。
ミリアの指示が間に合い、どうにか避けることが出来たけど……砲弾はどんどん下から打ち上がってくる。
そして、避けきれずに砲弾が機竜艇の船底に直撃し、グラグラと激しく揺れ動いた。
「くッ! 敵陣営左翼からの砲撃! 全艦、回避! 旗艦の被害は!?」
「まだ大丈夫! だけど、このまま直撃が続けたら保たないよ!」
激しく揺れる機竜艇の中でも、ミリアは負けることなく指示を出し続ける。
ボルクが被害状況を報告する声を聞きながら、俺は甲板から地上を見下ろした。
敵陣営の左側、そこには黒いヘドロで作られた巨大な砲弾がいくつも並んでいる。機竜艇のピンチに地上にいる人たちが砲撃を止めようとしているけど、敵の多さにそこまで行けないみたいだ。
「__<リグレット>」
だったら、味方を強化する。
すぐにそう判断した俺は曲名を告げ、みんなに目を向けた。
すると、ロックな演奏がピタリと止まり、ウォレスの陣太鼓のようなバスドラムが響き渡る。
そこに、やよいのギターが静かに混ざり、真紅郎の重低音のベースラインが演奏に深みをを持たせ、サクヤがシンセサイザーとピアノの音を合わせた。
戦場にいる戦士たちを鼓舞するように、静かに情熱的なイントロが奏でられる。
俺は息を吸い込み、静かに歌声を紡いだ。
「君の懺悔が聞こえた気がした 遠く離れたこの地で 君の懺悔はチャペルに響く 戦場の僕の背を押した」
上空を飛ぶ機竜艇から、歌声と演奏が波紋のように広がっていく。
すると、地上にいた味方たちの体が、紫色に光り始めた。
「リグレットだ! 征くぞ、戦士たちよ! 我に続けぇぇぇぇぇッ!」
演奏を聞いたケンさんの叫びと共に、ケンタウロス族たちが一気に吶喊する。
<リグレット>のライブ魔法での効果は、全体能力強化。
膂力が強化されたケンタウロス族たちは一気に敵を薙ぎ倒し、放たれる魔法が全て威力が上がり、今までよりも激しい爆音が戦場に轟いていく。
「大切なものを守りたい 祈りを武器に 僕は抗う 未来が明るいと信じて 世界を相手に 僕は戦う」
ケンタウロス族だけじゃない。ヴァべナロスト王国軍が、ユニオン連合が、ダークエルフ族たちがどんどん前へ前へと進軍していった。
黒い騎士を押し倒し、踏み潰し、襲いかかる狼や四足歩行の人型のモンスターを薙ぎ倒し、機竜艇を襲っている砲台へと向かっていく。
左右に蛇行し、下から打ち上がってくる砲弾を機竜艇は避けていく中、また数を増やしたワイバーンが飛来してきた。
「後悔は望んでいない 僕も 君も この世界も 辛辣な言葉も受け入れる 僕は 一人で 君の分まで」
それを見た俺は、ニヤリと不敵に笑ってみせる。
そして、サビを歌いながら全員の魔力を均一化させ、機竜艇の周囲に
そこから放たれるのは紫色の光線。<
「そんな思いで 誰かを守れる そんな気がした どうか君だけでも 上を向いて欲しい」
今までは、ライブ魔法は一曲ずつしか使えなかった。
だけど、今は違う。
今の俺たちは
砲撃を避けながら紫色の光線でワイバーンを薙ぎ払い、地上にいる味方たちの能力を強化させながら演奏を続けた。
すると、とうとう敵陣を突破したケンタウロス族たちが、砲台を攻撃してへし折っている姿が見える。
「地上の砲台が減りました! このまま制空権を__ッ!?」
伝声管から聞こえるミリアの声が、息を呑んだ。
同時に、地上から黒い魔力が勢いよく噴き出す。
黒い魔力は蠢きながら徐々に形になっていき__。
「ウ、ゴ、オォォォォォォォォォォォォォォォッ!」
大気を震わせる雄叫びを上げた、三十メートルはある巨人へと姿を変えた。
ドロドロと黒いヘドロを撒き散らせる体、意思のない血のように真っ赤な双眼。手に持っているのは、巨大で無骨な斧。
巨人が一歩前に踏み出すと、地響きを立てながら地上がグラグラと強く揺れ動いていた。
「新たに一体の巨人を視認! 体長約三十メートル! 機竜艇艦隊に向かって進軍中!」
「こいつはヤベェぜ! あんなデカイ斧を振り回されれば、機竜艇でもひとたまりがねぇぞ!?」
鈍重な動きで歩き出した巨人を前に、機竜艇艦隊は旋回しながら距離を取る。
巨人が踏み出した一歩は敵味方関係なく襲いかかり、進軍していた味方たちが慌てて退き始めていた。
あんなのに踏まれれば、無事では済まない。例えライブ魔法で強化されてても、ひとたまりもない。
だったら、俺たちがどうにかするしかない。
すぐに演奏していたみんなに目配せしてから、マイクを握りしめる。
「センセーション? そんなもん殴り飛ばせ イマジネーション? それがなきゃ人間じゃねぇ」
俺が目で合図したのと同時に、演奏が止まる。
そして、マイクを通した俺の声をラジオボイスに加工しながら、三曲目の<宿した魂と背中に生えた翼>が始まった。
Aメロを歌い終えたタイミングで、演奏が再開する。
小刻みに速いドラムストロークと、スリーフィンガーによるベースの速弾き、そこにギターの長く掠れて潰れたギターの音色が重なり合った。
そこに、キーボードの音が曲を華やかにさせ、縦ノリのアップテンポの演奏が戦場に響き渡る。
「ロックは 俺の魂に 刻んでる 旅の道具は それだけで 充分だ」
殴りつけるように歌い上げると、巨人の足元に巨大な紫色の魔法陣が展開された。
激しい演奏の勢いのまま、サビを歌う。
「綺麗事で塗り飾られた この物騒な世の中を ぶん殴るために俺は」
最後のフレーズをシャウトで歌い上げると、魔法陣に魔力の風が螺旋を描きながら集まっていく。
そして、巨人の足元から巨大な竜巻がせり上がった。
「ルオ、オォォォォォッ!?」
驚いたように声を上げる巨人が、下から突き上げてくる竜巻に飲まれてバランスを崩す。
だけど、巨人はどうにか地面を踏み砕きながら堪えていた。
<宿した魂と背中に生えた翼>の効果は、広域型殲滅魔法。
一つで終わると思っているのか?
「音楽は世界を救う いや救うのは俺だ 誰にも譲らねえ 祈りより大事だろ? 刻め、ロックは ここにあるんだ」
ガンガンと激しい曲調に合わせ、竜巻が二本、三本、四本と増えていく。
渦を巻く風の勢いも増していき、巨人を倒すどころかそのまま持ち上げ始めた。
「グォォォォォォォォッ!?」
「__今しかありません! 全艦隊、破竜砲用意!」
竜巻のよって体が浮かび上がっていく巨人を見て、ミリアの指示が飛ぶ。
すると、俺たちが乗っている機竜艇に、四隻の機竜艇が並んだ。
各機竜艇の竜を模した船首から、巨大な砲台が伸びていく。
徐々に砲口に魔力が集まっていき、竜のような唸り声が響き始めた。
砲身からバチバチと紫電を迸らせ、魔力の充填が終わったのを確認してから__ミリアの号令が全艦隊に轟く。
「__打ち方用意! 破竜砲、放てッ!」
天地を震わせる轟音。
放たれた五本の魔力の奔流が、竜巻によって宙に浮かんでいた巨人の体を撃ち抜いた。
巨人は声にならない悲鳴を上げながら、体の中央に風穴を開けて吹き飛ぶ。
そのまま巨大な体を地面に叩きつけさせ、地面を砕きながら大きな地響きと共に仰向けで倒れ込んだ。
「砲身冷却開始! 冷却時間、三分!」
「タケル様、トドメを!」
破竜砲を撃ち終えて、砲身が赤熱している。ボルクの報告だと、次に破竜砲が撃てるのは三分後のようだ。
体の中央に大きな風穴を開けられた巨人は、まだ動けるのかゆっくりと体を起こそうとしている。
機竜艇ではトドメをさせないと判断したミリアが、俺に指示を出した。
口角を上げてペロッと舌を舐めてから、俺は左腕を空に向かって上げる。
「__<Laugh&Laugh>」
曲名を告げると、縦ノリのリズムから横ノリのリズム……ダンスポップの演奏に切り替わった。
ハイテンポなドラムに合わせてベースラインが走り抜け、歪んだギターサウンドとピアノサウンドが、踊るように跳ねるように奏でられる。
「
俺が歌い始めると、空を覆い尽くしていた暗雲に紫色の魔法陣が浮かび上がった。
俺たちの魔力を充填し、バチバチと紫電を迸らせる魔法陣。
横ノリのリズムに乗りながら、Bメロに入る。
「笑顔あふれる この世界 どんな人でも関係ない 手を取り 笑おう みんなの輪が 広がる 男女も格差も関係ない 肩を組み 騒ごう」
<Laugh&Laugh>は、広範囲殲滅型雷撃魔法。 魔法陣から雷号と共に紫色の雷が降り注ぎ、起き上がろうとした巨人を襲った。
「グオォォォォォォォッ!?」
「だって今夜はParty with my friends! この騒ぎに入れば 誰もが共さ」
サビに入り、俺は頭上でパンパンッと手を鳴らす。
やよいはギターをかき鳴らしながら楽しそうに回り、真紅郎は低い体勢で踊るようにベースを弾き鳴らす。
ウォレスは豪快な笑い声を上げながらドラムスティックを振り上げ、サクヤは跳ねるように鍵盤を指で叩いていた。
轟く雷鳴と巨人の悲鳴が混じり、雷はその周りにいた敵をも襲う。
「もちろん今夜はLaugh together! 騒げ! 踊れ! 笑え! 今しかないぞ」
もう一度頭の上で手を叩き、今度は竜巻を作り出しながら雷を落とした。
巨大な渦を巻く風と雷が合わさり、敵を巻き上げながら雷で痺れさせる。
最後に、俺はビリビリと痙攣している巨人に、人差し指を向けた。
「
サビを歌い上げるのと同時に、俺とやよい、真紅郎がジャンプする。
トドメの一撃に、稲光を放つ一際大きい雷撃が巨人の体を貫いた。
巨人は声にならない悲鳴と共に、体を構成していた黒いヘドロが霧散していく。
そして、巨人は消滅した。
「ありがとうございます、タケル様! これで制空権はこちらのものです!」
空を飛び回っていたワイバーンは、四隻の機竜艇が全て片付けた。
脅威だった巨人も倒し、味方陣営がどんどん進軍していく。
このまま俺たちも城に向かおう__そう思っていると。
「タケル! あそこ!」
そこで、やよいが声を上げた。
やよいの視線の先は、闇属性がいる城。
城の前方に巨大な黒い魔法陣が展開され、悍ましい魔力を溜め込み始めていた。
「__全艦、急いで散開して下さい!?」
魔力感知でその危険を察知したのか、ミリアが慌てて声を張り上げる。
すぐに機竜艇艦隊はその場から動こうとしたけど、間に合わなかった。
黒い魔法陣から、轟音と共にドス黒い光線が放たれる。
光線は一直線に機竜艇艦隊を襲い__隣を飛んでいた機竜艇は避け切れず、左翼が一瞬で飲み込まれた。
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