第1409話 朝の散歩に出かけました
部屋の前でばったり会ったクレアと、話しながら中庭へと向かう途中、使用人待機室からアルフレットさんが合流、俺達が部屋を出たのを音とかで気付いたらしい。
夜中に申し訳ないが、レオ達のトイレを手伝ってもらうため連れ立って中庭へ……主に後処理だけど。
その中庭では……。
「グルゥ?」
「フェリー? あ、もしかして……?」
フェンリル達の群れのリーダー、フェリーが中庭に植えてある木々の根元の臭いを嗅いでいる所に遭遇。
こちらもレオと同じく、縄張りの主張をしようとしていたらしい……フェリーが寝泊まりするのは屋敷の外ではあるけど、壁の内側で敷地内だからでもあるんだろう。
ともあれ一応、フェリーにも野生が残っていたか。
まぁフェリーに関しては屋内ではないので、慌てる必要はないけどとりあえず木にかけるのではなく、穴を掘って用を足し、その後に埋めるようにと伝えておいた。
トイレとは関係なく喜んで穴を掘り掘りしていたから、問題なさそうだ。
レオもシェリーも、同じく穴を掘っていたけど……シェリーがまだ抱き上げられるくらいの体の大きさで、人間一人がすっぽり入るくらいの穴を勢いよく掘っていたのは、少し驚いた。
さすがに大きすぎるしシェリー自身がはまってしまいそうだったので、すぐに埋めさせてもらったが。
その後、屋敷内に戻って部屋の前でクレアやシェリーと別れ、自室に入った俺とレオを待っていたのは、困り顔のライラさんとゲルダさん。
そしてその二人にしがみついてむくれているリーザだった。
風呂から上がって戻って来たら俺達がいなかったので、拗ねてしまったらしい……一日に二度もリーザを拗ねさせてしまった、反省だな。
慌ててライラさん達に謝ってリーザをあやす俺やレオは、遅くまで寝られないのを覚悟した。
けど、俺と同じく疲れていたリーザも限界だったのか、スイッチが切れたようにあっさりと熟睡したのは助かったな――。
――翌朝、よく寝られてスッキリしたリーザは、昨夜拗ねていたのはどこ吹く風のご機嫌で、俺やレオを起こしてくれる。
昨日の子供達とレオと一緒に遊べると期待しているようだ。
とりあえず起きたのなら朝の支度……起きた直後はいつもと違う部屋で戸惑ってしまったり、支度も勝手が違って手間取ったりもしたけど。
「あ、タクミさん! おはようございます!」
「おはよう、テオ君」
「おはよござます!」
「はい、おはようオーリエちゃん」
食堂に行って、クレアやセバスチャンさんなど馴染みの人達に挨拶をしていると、続いて入ってきたテオ君とオーリエちゃん。
俺に駆け寄って挨拶をするテオ君の元気の良さや、真似するように舌っ足らずながらちゃんと挨拶をするオーリエちゃんに俺からも朝の挨拶を返す。
ティルラちゃんも待って、朝食の開始……今日はラーレもコッカー達も、宴会から戻って来ていないらしく、食堂でだ。
フェンリル達も来たばかりなので、周囲の確認という名目の朝の散歩をしているらしい。
ちなみに宴会はまだ続いているのか? と思ったら、終わっているんだけど一部の人が残っているので、片付けとその人達が広場でそのまま朝食を食べるとからしい。
さすがに、夜を徹して朝を迎えても続いているなんて事はなかったか……。
あと、残っている一部の人の中には、エッケンハルトさんやエルケリッヒさんが含まれるらしく、クレアが溜め息を吐いていた。
ユートさんは多分、宿にルグレッタさんが引き摺って行ったんだろうなぁ――。
「んーっ! 森が近いからか、別邸の方よりもちょっとだけ新鮮な空気のような気がするなぁ……っと!」
「んふーっ!」
「ワフ、ワフ! ハッハッハッハ!」
「気持ちのいい朝ですね、タクミさん!」
朝食後、屋敷の外に出て両手を上げて体を伸ばしつつ、朝の空気を体に思いっ切り取り込む。
リーザも俺の真似をして体を伸ばし、レオは尻尾を振りながら期待するような目で舌を出して、パンティング。
俺についてきたテオ君もリーザみたいに俺の真似をし、お尻辺りにブンブンと振られる尻尾を幻視しそうな盛り上がり具合。
……なんというか、話して仲良くなろうという意図はあったけど、昨夜の風呂から懐かれた感じだなぁ。
子犬系美少年に懐かれたと……一部界隈の人が騒がないかが心配だが、この世界にそういう界隈の人はいない、と希望的観測を抱いているので大丈夫だろうと思いたい。
「さて、様子見がてら朝の散歩だレオ。お、フェリー達も来るか?」
「ワッフワフ!」
「グルゥ」
「ガウ」
「ガウゥ」
期待して尻尾を振っているレオに声をかけつつ、俺達の様子を見に来たらしいフェリーやフェン、リルルの姿が見えたので、そちらも誘う。
早朝とは言い難いが、新鮮な空気を感じながらの散歩だな。
とりあえず朝食後はすぐにやる事がなかった……エッケンハルトさんとか、広場から戻って来ていないし。
なので、腹ごなしも兼ねてレオの散歩をする事にした。
屋敷の中では、使用人さん達が荷物の整理などもあって忙しくしており、邪魔になりそうだったからなぁ。
手伝おうとしたけど私達のお仕事ですから、と断られたし。
クレアはクレアでやる事があるらしく、残念そうにしながらも留守番だな、服とかいろいろと整理する物や、監督する物があるらしい。
一応、屋敷を出る前にハグしておいた、別邸にいる頃からの日課になっていたからな……忘れかけてむくれかけられたのはここだけの話だ。
「スンスン、ワフ!」
「美味しそうな匂いがするか? まぁ残っていた人達は、ここで朝食だったみたいだからなぁ」
レオ達を引き連れて屋敷を離れ、村の広場に差し掛かるとレオが顔を空に向けて、鼻を鳴らした。
どうやら、朝食の残り香を嗅いだらしい。
さすがに昨日の物だったりはしないはずだ……ハンバーグなど肉を焼いたから、残っていてもおかしくないかもしれないけど。
「ジュル……ワウ~」
涎を垂らしそうにしながら、レオが切なそうに鳴いた。
美味しそうな匂いに釣られて、食べたくなったんだろう。
「ちゃんと朝食は食べただろう? これ以上は食べ過ぎだからな、昼食まで我慢だ」
「キューン……」
とはいえさすがに朝食後だし、広場の方は撤収が始まっているからこれから用意してもらうのも悪いだろう。
まだ出てきたばかりだから、屋敷に戻るのもまだ早いし昼食まで我慢だレオ。
フェリー達も、物欲しそうな表情になっているように見えたけど……そちらも撫でて落ち着かせる。
食べ過ぎは良くないからな――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます