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第1395話 連れてきた理由を聞きました
第1395話 連れてきた理由を聞きました
近衛兵らしい護衛さん達はともかくとして、テオドールト君達の事だ。
基本はガチガチに保護しながらで身分を明かしてだと、周囲も気を遣って庶民の暮らしを体験できない。
そのためただのテオドールト、オフィーリエとして、街や村の民と変わらない身分として生活をしてみるのが目的みたいだ。
だったら護衛が……とは思うが、国の最重要人物とも言えるのでそこはまぁ仕方ない事なんだろう。
とりあえず、実際に見る事、体験する事が大事だとユートさんは言っていた。
なのでテオドールト君とオフィーリエちゃんは、ちょっといいところのお坊ちゃんお嬢ちゃん扱いで、俺やクレアの客人として欲しいとか。
どこから漏れるかわからないので、クレアが言いかけた「王太子」などの単語はできれば口に出さないように注意して欲しいとも言われたな。
それなら、ユートさん自身もだけどもう少し念入りに、色々準備しておいた方がいいと思ったが、結構急に決めた事らしく準備ができていない部分があるから、とユートさんが謝っていた、主にレオに対して。
ちなみに、本来はテオドールト君だけが別の場所に行く予定だったのが、急遽なくなったため。
オフィーリエちゃんはまだ幼いけどここは特に安全だろうから、という事で突然追加になったとか。
あと、オフィーリエちゃんがお兄ちゃん子で、しばらくの間だけとはいえテオドールト君と離れたがらなかったのも理由の一つらしい。
まぁそれは、ユートさん達が連れてきた時テオドールト君の足に捕まって、隠れていたのを見ればわからなくもないけど。
あれは、人見知りというよりは兄を放さないようにしていた、という印象だ。
「というわけで、テオドールト君が成人する少し前くらいまで、お世話になる事になったから」
「なったからって……決定事項なんだ。まぁ、ユートさんにはお米とかもらったし、色々話を聞けているから断らないけど」
この世界の事だけでなく、ギフトに関する話ができるだけでも、俺としては随分とありがたい。
頼まれたら嫌と言えない性格だけど、それとは関係なく断れないし断らない方がいいだろう。
それに、立場的な事を考えたら俺はともかく、クレア達公爵家の人達は断れないだろうし……エッケンハルトさんやエルケリッヒさんは受け入れてもいるみたいだからな。
「うんうん、タクミ君ならそう言ってくれると思っていたよ。あ、ちなみに引っ越し祝いでもあるけど、今回のお礼として定期的にお米や醤油、味噌は持って来させるからね。ぜひ美味しい物を作って食べて欲しい」
「……それ、ユートさんも食べたいだけだよね?」
「まぁね。やっぱり、こちらの人が作るよりはタクミ君が考えた方が、美味しくなりそうだから。実際に手を加えて作るのが別の人でも、ね。ハンバーグ美味しかったよ」
料理の腕というよりも、日本人としての味覚を信頼しているって事だろう。
ともあれ、お米、醤油、味噌といった日本食には欠かせない物が、定期的にもらえるのはものすごくありがたい。
あれやこれやと、想像が膨らんで色んな美味しい物が作れそうだ……作り方はヘレーナさんと研究する必要があるだろうけど、レシピとか詳しくないし。
「お父様やお爺様が受けているのなら、私は断れません。タクミさんも受けるとあらば尚更です……美味しい物も食べられそうですから。安全という意味では、レオ様やフェンリル達がいますので国内随一でしょう」
「そうだね。まさかあれだけ大量のフェンリルがいるとは思わなかったけど……レオちゃんが近くにいるだけでも、この国どころかこの世界で一番安全だよ。数万の護衛を付けるよりよっぽどね」
「数万の護衛はともかく、確かに安全なのは間違いないか……」
レオがいない時はともかく、すぐ近くにレオがいる時危険な目に遭った事はないからな……自分から飛び込んだり、魔物と戦ったりはしたけど。
でもそうなると、レオの負担になったりはしないかと言うのが少し気になる。
「レオ、大丈夫そうか?」
「ワフゥワフ、ワフワウー!」
「俺が受けたなら問題ないし、子供は好きだから一緒に遊ぶ、か。まぁ、それでいいかな」
「仲良くなって一緒に遊んでいたら、危険から逃げ出していくよね。助かるよレオちゃん」
レオに尋ねると、さっきまで唸っていたのはどこへやら、楽しそうに鳴いて答えてくれた。
子供好きだから、オフィーリエちゃんとも一緒に遊ぼうってところだろうな。
危険が逃げ出すはよくわからないけど、遊んでいればレオが守ってくれるのは間違いない。
村の人達も俺達も、危害を加えようとする人はいないし大丈夫そうだ。
「あ、でもレオが遊ぶなら村の子供達も一緒だろうし、その時にちょっとした事くらいはあるかも……?」
「そうですね、気を付けて見ていても村の子供だけでなく、今は孤児院からの子供もいますから。対立する事もあり得ますね」
俺が思い浮かべた心配は、クレアも考えたらしく心配顔になっている。
大人が相手ならある程度察するし、手を挙げるような事はしないけど……子供同士だとな。
一緒に遊んでいたら、少しくらいは喧嘩するだろう。
さすがに殴り合いとかは周囲の大人が止めるだろうし、レオも止めてくれるとは思うけど。
「まぁ、子供同士での喧嘩くらいなら、僕達……というか親からは気にしないという言質は取っているから、思い切り遊んじゃっていいよ」
なんて、俺の心配を察してユートさんが言った。
親からってそれ、王様って事じゃ……あまり、気にしない方がいいかもしれない。
一応、できる限り怪我はさせないよう気を付けよう。
擦り傷くらいはできるかもしれないが、もしもの時は緊急措置としてロエだな、うん。
特に、オフィーリエちゃんに必要かもしれないのは覚悟しておこう、女の子だし傷跡は残らない方がいいと思う。
「とりあえず、レオもいいと言ってくれたけど……そういえばテオドール君って今いくつになるんだ? 成人する少し前までと言っていたけど、見た限り十五、六歳に見えたような?」
この国での成人は十五歳から。
だから、テオドールト君はまだ十五歳になっていないという事になるけど、さっき見た感じ高校生ぐらいだという印象だったからな。
日本の高校生なら、最低でも十五歳以上のはずだ――。
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