【大感謝!500万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第1250話 いよいよ伝える場面になりました
第1250話 いよいよ伝える場面になりました
「あ、でも、でもね……」
「どうしたリーザ?」
「ワフ?」
ふと思い出したように動きを止めるリーザ。
頭と耳を一緒に撫でているので、気持ちいいのか二本の大きな尻尾はバッサバッサと振られたままだけど。
「えっと……」
「どうされましたか、リーザ様?」
俺の手から離れ、テテテ……とライラさんの前に行くリーザ。
「ごめんなさい! ライラお姉さんのは買えなかったの……ゲルダお姉ちゃんとか、他の皆のも……」
「リーザ様……」
ガバっとライラさんに頭を下げるリーザは、ライラさん達の分まで用意できなかったと謝る。
まぁ、お小遣いが足りなかっただろうからなぁ……ネックレスも皆に上げる分までの数程、在庫がないだろうし。
「大丈夫ですよリーザ様。私にとっては、タクミ様やレオ様、リーザ様が楽しそうに過ごされている今この瞬間を見られた事が、一番のプレゼントですから」
「ライラお姉さん……」
しゃがみ込んでリーザと目線を合わすようにしながら、ライラさんが声を掛ける。
ライラさん、いい事言うなぁ……俺にとっても、多分レオにとっても、リーザと過ごせる時間は確かに一番のプレゼントだ。
「もしそれでもリーザ様がお気になされるのであれば、これからもタクミ様やレオ様達と、楽しく過ごして下さい。もちろん、私とも」
「……うん!」
そう言って優しく微笑むライラさん。
リーザの表情はこちらからは見えないけど、満面の笑みだろう事がわかる返事が聞こえた。
ほんと、俺は周囲の人達に恵まれているな。
って……ん?
「……アルフレットさん、どうしたんですか?」
感動的なライラさんとリーザのやり取りとは別に、いつの間にか部屋の隅に移動したアルフレットさんが、壁に片手を付けて俯いていたのを発見した。
「リーザ様、私の名前は出しませんでした……そりゃ、私達は後からこの屋敷に来て、タクミ様に仕えるのが遅かったのは確かですが。やはり女の子には女性の方が懐きやすいのでしょうか……」
「いやいやいや、アルフレットさん。リーザは他の皆って言っていましたから。アルフレットさんの事もちゃんとわかっていますし、懐いていますよ!」
リーザに名前を呼ばれなかった事で、落ち込んでしまっていたらしい。
一番懐いているのはライラさんだと思うし、俺がリーザを連れてきた時からずっと色々なお世話をして来たのもライラさんだ。
ゲルダさんもそうだけど、今はこの部屋にいないし。
とにかく、アルフレットさんには懐いていないって事はないはずだから、落ち込まないで欲しい。
そうして、なんでアルフレットさんが落ち込んでいるのかわからず、リーザが首を傾げている中、ライラさんと協力してアルフレットさんを慰めた。
最終的には、ジェーンさんが来てアルフレットさんの襟首を掴んで回収して行ったけど……。
ジェーンさん強い――。
フェンリルが大量に増えたため、料理の消費量がかなり増えたのでチタさんとシャロルさん、それから時折失敗はするものの、大きな失敗はしなくなったゲルダさんがフル回転して食事が用意され、慌ただしい夕食が終わる。
満腹になったフェンリル達は野生を全く感じない程に、おとなしくなるけど、食事時は結構大変だな。
体が大きいから、かなり食べるし……ランジ村に行ったら、フェンリルの食事を用意する専属の人を雇った方がいいかもしれない。
なんて、クレアやセバスチャンさんと真面目に検討したティータイムも終わった。
「さて……と」
寝る前の素振りを終え、風呂にも入った後、ライラさんに頼んで用意してもらっていた一張羅。
ハルトンさんの仕立て屋で作ってもらった服を着て、必要な物を持って屋敷の外に出る。
夕食までに全ての準備を整えておいた……フェンリル達の食事の用意が手伝えなくて、申し訳なかったけど。
今いる場所は、以前ティルラちゃんとも話した庭園。
裏庭はフェンリル達がいるし、『雑草栽培』のおかげで綺麗な花が整えられていて、雰囲気もあるからここが一番いいと考えた。
まぁ、座って落ち着いて話せるうえに、二人で話せる場所だから。
持ってきた物は、敷物を敷いてテーブルの下に隠しておく。
そこに隠しておけば、明りがあるとはいえ夜の暗さのおかげで見つからないはずだ。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸を繰り返し、緊張を緩める。
夕食時は昨日みたいに、クレアから変に思われたりしないよう注意するので大変だった。
俺、ポーカーフェイスとか苦手みたいだし。
フェンリルの食事に関する話題になったのは助かったけど……セバスチャンさんから話題を振られたから、わかっててだったんだろうけど。
「……タクミさん?」
「っ! ク、クレア……」
心を落ち着かせているうちに、屋敷から出てきたクレアに声を掛けられ、心臓が跳ねる。
口から出そうになった驚きの声を抑え、声のした方へ振り返りながらこちらからも声を掛ける。
落ち着こうと深呼吸していたのは、あまり意味がなかったかもしれない。
「はい、タクミさん」
俺に呼ばれて微笑むクレアは、月明かりに照らされてこの世の物とは思えないくらい、綺麗だった。
金色の髪は輝きを増しているようにすら見え、気品のある佇まいは本当に同じ人間なのかと、疑いたくなる程だ。
俺の気持ちが昂っているからだろうか、いつもよりもとても魅力的に見える。
「……」
「タクミさん? どうされましたか?」
「あ、いや……ごめん。ちょっと驚い……いや、なんでもないよ」
「そうですか?」
見惚れてしまった俺の顔を、下から上目遣いで覗き込むクレア。
初めて会った時も同じよう事があったような気がするが、今この場にはジト目をするレオはいない。
でも、よく考えるとあの時から既に、同じ気持ちだったのかもしれない。
とにかく不審がられないように、ひたすらクレアを褒めたくなる気持ちを無理矢理抑え、首を振って誤魔化した。
不思議そうにしながらも、俺の正面に立つクレア。
「それでタクミさん、えっと……」
「ごめん、呼び出して。忙しいのはわかっていたんだけど、ちょっとクレアと話したいと思って」
窺うクレアの表情に思わず謝罪の言葉が出る。
だめだ、今この場にはこの言葉は相応しくない……。
ライラさん達やレオ、俺を応援して送り出してくれた人達のためにも、情けない事は言わない方がいい。
……リーザだけは、やっぱりよくわかっていないようだったけど――。
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