第1249話 リーザからの贈り物をもらいました



 リーザからのプレゼントって、どう思うかわからないって言っているけど、どんな物でも喜ぶ自信があるぞ俺は。

 それこそ、そこらの土とかでも……さすがにそれは言い過ぎか?

 それはともかく、幾重にも包まれてる布をゆっくりと解き、中身を取り出す。

 布の中には箱が入っていて見覚えが……そういえば今、リーザは自分で似合っているって言われたと言っていたから、もしかして?


「ワフー!」

「これ、リーザと同じネックレス?」

「う、うん。ママみたいだったし、パパもママも喜んでくれるかなって。見つけた時、凄くいいと思ったから……」


 中身を取り出してみると、俺より早く隣のレオが反応……喜んでいるようだ。

 それは、リーザが自分にと買ったネックレスで、ティルラちゃんに俺が上げたのと同じ物。

 狼の飾りが付いた物だ。

 あまり高い物ではないけど、リーザに上げたお小遣いの残りからするとかなりギリギリだっただろうに……。


「う……うぅ……」


 年を取る程に涙もろくなる……という話を聞いた事がある。

 けど、可愛い娘のように思っている子から、なけなしのお小遣いでプレゼントなんてされたら、そんなの一切関係なく泣いてしまうのも無理はない。


「パ、パパ!? ど、どうしたの? 嫌だった?」

「い、いや、そうじゃないんだ。ありがとうリーザ、嬉しいよ」


 思わず開いている手で顔を抑える俺に、勘違いしたリーザが焦った様子。

 嫌なわけではなく喜んでいるんだと伝えて、リーザの頭に手を伸ばして優しく撫でた。

 目が潤んでいるのを見られるのは少し恥ずかしいが、そんな事よりも今はリーザに喜びを伝える方が先だ。

 微笑ましく、朗らかな笑顔で俺達を見ているライラさんやアルフレットさんが視界の隅に入っているけど、俺の恥ずかしさなんて空の彼方だ。


「ワフワフー」

「にゃふ! にゃ、ママくすぐったいー」

「ははは、レオもリーザのプレゼントに喜んでいるんだよ」

「ワフワフ」


 レオも嬉しいのか、鼻先をリーザに押し付けるようにしたり、頬を擦り付けたりしている。

 さすがにレオに押しのけられて、俺はリーザの頭を撫でられなくなったけど……レオだけズルいぞー。


「お似合いですよ、タクミ様」

「そ、そうですか?」


 部屋に戻ってすぐのリーザみたいに、ネックレスをライラさんに付けてもらう。

 似合っていると言われるけど、こういった装飾品を付ける事はこれまでほとんどなかったので、慣れない。

 けど、せっかくリーザからもらったプレゼントだからな。


「ワフワフー」

「うーん、ママにはちょっと小さいよね。ごめんねママ、大きいの見つからなかった」


 伏せをしたレオの方にはリーザが……だったんだけど、さすがにレオのサイズに合う物ではないので当然ながら、身に付けられない。

 どうするのかと思ったら、リーザはレオの鼻先にチェーンの部分をかけた。 

 でもさすがに無理があったと気付いたのか、リーザが少し落ち込む……さすがにレオに合うサイズのは見つからないだろうなぁ。


「ワフ!? ワフワフ!」

「ぶっ……ははは! レオ、鼻息でネックレスが大きく揺れているぞ!」

「ワウー……」


 焦ったレオが、リーザに対して鳴く。

 けど、その勢いと鼻息でレオの鼻先に移動したネックレスがブラブラと大きく揺れた。

 面白くて思わず吹き出し、笑う俺にレオからは抗議する視線と声。


「パパー、やっぱりママには無理かも……」

「まぁさすがに大きさがな。でも、ネックレスだからチェーンを通さないといけないって思ってしまうけど……」


 根を上げたリーザが、俺に抗議するレオからネックレスを取って、俺の所に持って来る。

 それを受け取って、片手でリーザの頭を撫でて慰めつつ、別の方法を示すためレオに近付いた。


「レオ、お座り」

「ワフゥ?……ワフ」


 いつもならすぐにお座りしてくれるんだけど、俺がさっき笑ったからか何やら疑わしそうな声を出すレオ。

 それでも、ちゃんと伏せからお座りになってくれる、レオは素直だ。


「ちょっと顎を上げててくれよ? ここをこうして……」


 お座りしたレオの顎下、というか首元辺りの長い毛を数本手に取り、チェーンの接続部であるヒキワになっている部分に通す。

 通した毛を結んで外れないようにしする、


「レオ、痛かったりはしないか?」

「ワフワフ」


 重さのある飾りがぶら下がるので、毛が引っ張られてレオが痛くないかも確認……痛くないようだったのでチェーンの長さを調節して装着完了だ。


「良かった。よし、どうだ?」

「わぁ、ママ似合ってる!」

「ワフー?」


 できあがりと立ち上がり、ネックレスを身に付けたレオをリーザに見せると、両手を挙げて喜んだ。

 レオは自分では見えない位置にあるので、よくわからず首を捻っている。


「レオ様、ご覧下さい。似合っておりますよ」

「ワフ……ワフワフー!」

「ははは、良かったなレオ」


 鏡を持ったライラさんが、レオに取り付けられたネックレスを写し、それを見るレオ。

 自分にちゃんと付けられているのを確認し、喜びの声を上げた……尻尾もブンブン振られているな。

 まぁ実際の所、銀色のネックレスなのでレオに取り付けると保護色的になって、目立たないんだけど……まぁ、リーザの気持ちが似合っているって事で。

 ちなみに、その後ライラさんがチェーンその物を外して飾りだけレオに取り付けてくれた……多少長さを調節したとしても、チェーンがぶらぶらしていたからな。


 装飾品の扱いに慣れていないから、長さ調節ができるのはわかっても取り外せると思ってなかった。

 ……最初からライラさんにお願いしておけば良かったなんて、思わないぞ!

 あと、お風呂に入る時は邪魔になるし、激しい運動をすると予想できる時はさすがに外すようにした。

 レオは付けたままにしたかったようだけど、危ないからな……レオではなく、人が飾りに当たった時に。


「本当にありがとうなリーザ、大事にするよ」

「ワフワフ!」

「うん! えへへ……パパとママと、お揃いだぁ……!」


 改めてプレゼントのお礼をリーザに伝え、優しく頭を耳と一緒に撫でてやる。

 リーザの一番好きな撫で方だな。

 レオも感謝を伝えるように鳴き、笑顔で頷いたリーザは照れたように自分のネックレスの飾りをいじる。

 うんうん、皆でお揃いだな――。



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