第1248話 屋敷に戻って報告を聞きました



「そうですか……なんで俺なんだろうな? レオと一緒がって思うのならわかるけど」


 レオならシルバーフェンリルという、上位の存在だから強い者と一緒にとかそういうのでなんとなくわかる。

 フェンやフェリーの時もそうだったけど、フェンリル達はレオを前にして恭順の意思を見せているようでもあったからな。


「ワフゥ。ワフ、ワフワフ!」


 そんな風に考えて、首を傾げる俺にわかっているらしいレオが教えてくれた。

 なんでも、レオと一緒にいる事で俺が主人とか、皆の頂点みたいになっているらしい。

 そのため、フェンリル達にとっては俺を乗せるのがご褒美的な位置付けなんだとか……いつの間にそんな事に。

 だからラクトスに行ったフェンリル達も、俺と一緒にいる事や、何か頼まれるのに嬉しそうにしていたのか?


「うーん……まぁ、今のところ何かそれで悪い事があるわけじゃないから、とりあえずいいか」


 いずれ、フェリーを含めて話し合って、従わせているとか配下みたいな感じになっているのを、正さないといけないかもしれない……。

 俺にとってフェンリルは、レオと同じように友人とかに近い見方をしているから。

 ……レオは特別で、相棒だけども。


「ふぅ……あとは、準備を少しするくらいだな……」

「ワフ」


 アルフレットさんと話しつつ、部屋に入って持っていた荷物を置き一息。

 その荷物……雑貨屋で買った花瓶を見て呟く俺の言葉に、レオも頷く。

 なんだか、レオの方も意気込んでいるみたいだけど……。


「ふふふー見てみてパパー」

「おー、リーザによく似合っているぞー」

「お似合いですね、リーザ様」


 リーザの方は、さっそくネックレスを取り出してライラさんに頼んで身に付けていた。

 嬉しそうに自慢するリーザを見て、顔を綻ばせる……うんうん、可愛いな。


「アルフレットさん、今クレアはどうしていますか?」


 アルフレットさんにクレアの事を聞く。

 これからプレゼントを完成させるために、ちょっとやらなきゃいけない事がある。

 ちょっとした見栄だが、準備している様子をクレアに見られるわけにはいかないので、どこにいるかの把握が必要だ。


「部屋でエルミーネさんと、持って行く物の相談をしているようです。先程、セバスチャンさんもそちらに向かったようですから。……ハッ! 今すぐお呼びいたしま……」

「いえ! 大丈夫です、まだ呼ばなくていいですから。居場所を確認しただけです」

「そ、そうですか……失礼しました」


 何を勘違いしたのか……というか、今すぐ俺が話すつもりなのだと思ったんだろう、表情を輝かせたアルフレットさんが、焦って部屋の外に出ようとするのを止めた。

 まだなのだとわかると、気落ちしたように肩を落とすアルフレットさん。

 俺もそれなりに緊張感が増してきているけど、俺以外の人達の方が気持ちが逸っているような気がするのは、気のせいだろうか?


「あ、それと……街に行った時にハルトンさんに会ったので……」


 ハルトンさんに会って、スリッパの完成品を受け取った事をアルフレットさんに伝える。


「畏まりました。ランジ村に持って行く荷物の中に入れておきます」

「よろしくお願いします」


 持って行く荷物に関しては、本来なら全て一度にではなく順次……のはずだったんだけど、ある程度の物はフェンリル達が運べるので、そちらに頼む事でほぼ制限がなくなった。

 さすがに大型の家具とかは荷馬車になるけど、そんなに大きな物を一度に運ぶって程の事はないからな。

 必要な家具はハインさんの所で注文して、すでに運ばれているようだし。


「……うー」

「ん、どうしたんだリーザ?」

「ワフ?」


 アルフレットさんやライラさんと話し、今後の予定などを話していたら、俺の傍でもじもじしているリーザに気付いた。

 手を後ろにやって、何やら俯いている……何かを言いたいけど言い出せない、といった雰囲気だ。

 レオもわからないのか、首を傾げている。


「えっと、えっとね……?」

「うん……」

「ワフ……」


 何かを頑張って話そうとしている雰囲気を感じたので、アルフレットさん達との会話を中断して、リーザと向き合う。

 しゃがみ込んで、リーザと視線の高さを合わせながら覗き込む。

 レオもリーザの様子が気になったのか、俺の隣から覗き込んでいるけど……大きいので鼻先が俺の顔の横にある感じになっている。


「リーザ、リーザね? 昨日パパの話していた事を聞いて考えたの」

「俺の話していた事?」

「うんとね、クレアお姉ちゃんに感謝の気持ちとかって話」

「あぁうん、確かにしたね」


 クレアに気持ちを伝える、という話の一つにこれまでお世話になった事などもあって、感謝の気持ちもプレゼントと一緒に伝える……みたいな事を話した。

 男女間の事はよくわからなかったようだけど、感謝の気持ちという部分は覚えていたようだ。


「だからね、リーザ……えっと。パパとママにね? うーんと、えっと……」

「うん、ちゃんと聞いているから、落ち着いて話すんだよ?」


 俯き加減で、俺を上目遣いで見ながら時折レオの方にも視線を向ける。

 もじもじしながらさらに左右に体を揺らし始めたけど、なんとなく言い出しにくいのは恥ずかしいからとか、そうなんだろうなと察する。

 リーザが何を言いたいのかまではわからないけど、伝えたい事はちゃんと聞きたいから、真っ直ぐにて最後まで聞く事を伝えた。


「うん、ありがとうパパ。えっと……だからね? こ、これ!」

「ワフ?」

「これ……?」


 後ろにやっていた手を前に突き出し、俺へと突き出すリーザ。

 その手の中には、布に包まった物がある……見た事があるような……?


「パパとママにプレゼント! い、いつもありがとう……リーザ、パパとママといられて寂しくないよって、言いたかったから……」

「そ、そうなのか……あ、ありがとう……」

「ワフワフ……」


 リーザの手にある物を見ていると、思い切ったように言い切るリーザ。

 つまりこれは、リーザの感謝の気持ちってわけで……俺とレオへのプレゼント!?


「えっと、開けてみるよ?」

「う、うん。さっきリーザには似合っているって言っていたけど、パパとママはどう思うかわからないから……」

「ワフ、ワフ!」


 布に包まれたプレゼント、二つあるそれを受け取ってリーザに聞いてみる。

 頷くリーザを見て、横でレオが急かすように鳴いた。



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