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第1166話 皆ティルラちゃんの事を心配していました
第1166話 皆ティルラちゃんの事を心配していました
「「「……」」」
ティルラちゃんが倒れた後、俺達は一旦客間に移動したが……誰も喋らず押し黙っている。
それもそのはず、あれからティルラちゃんが目を覚ます事はなかったからだ。
ティルラちゃんは、セバスチャンさんとエルミーネさんが部屋に連れて行ってくれた。
客間には、俺以外にクレアとリーザ、レオとシェリー、ライラさんがいる。
「……ティルラお姉ちゃん、大丈夫かなぁ?」
「ワフゥ……」
沈んだ声で、天井を見ながらティルラちゃんを心配している、リーザとレオ。
天井を見ているのは、階上にティルラちゃんの部屋があるからだろう……客間の真上というわけではないが。
「きっと、すぐに目を覚ましてまたリーザと遊んでくれるさ」
「ほんと?」
「あぁ、きっと……」
気絶の仕方が不自然というか、唐突だったからどうしてそうなったのかはわからない。
けど、ティルラちゃんの事だから何事もなかったかのように目を覚まして、また元気な姿を見せてくれるはずだ。
リーザに言いながらも、自分に言い聞かせている。
クレアも、俺の言葉に頷いてくれていた。
「……失礼します」
そんな中、客間の扉がノックされて入って来たのはアルフレットさん。
皆ㇵッとなって扉の方を見たが、アルフレットさんだとわかって少し落胆している……アルフレットさんには申し訳ないけど、セバスチャンさんやティルラちゃん本人じゃないから、仕方ないか。
「申し訳ありません。招いた方達のご様子をお知らせしようと思いまして……」
「いえ、アルフレットさんが謝る事ではないので」
「そうよ。うん、そうね。ここで静まり返っていても何もならないわ。それで、薬草園の人達についてね?」
アルフレットさんは、ティルラちゃんが倒れた後の騒ぎの収拾や、従業員さん達の対応をしてくれていた。
騒ぎといっても、急にティルラちゃんが倒れた事による皆の戸惑いが大きかったけど。
俺達の反応のせいだけど、アルフレットさんが謝る事じゃない。
クレアの言葉で、少しだけ気を取り直してアルフレットさんからの報告を聞く事にする。
「皆様は、なんとか朝食を取り、今はフェンリル達と一緒に過ごされております。どの方も、ティルラお嬢様の事を心配しておられました」
裏庭の雰囲気はなんとなく想像できるけど、皆心配しながらも朝食は食べてくれたようだ。
倒れたティルラちゃんの心配をしていても、食べる物を食べないと、他に倒れる人が出ちゃいけないからな。
「そう。あちらはとりあえず心配なさそうね」
「そういえば、俺達もまだ食べていなかったね……リーザ、レオもお腹は空いていないか?」
「うん。でも……ティルラお姉ちゃんが……」
「ワゥ……」
朝食と言われて思い出したけど、ティルラちゃんが倒れたのは朝食の前だったから、俺達もまだ食べていない。
まぁ、心配で喉を通りそうにはないが……リーザとレオもお腹は空いているようだが、それどころではない様子だ。
「皆が何も食べずに倒れたら、ティルラちゃんが起きた時に気にするんじゃないかな?」
あの子は優しい子だから、自分のせいで他の人まで倒れたと知ったら、絶対気にすると思う。
……朝食を一度抜いただけで、倒れるとか大げさかもしれないけど……今のこの雰囲気を変えるには、お腹をいっぱいにした方がいいと思う。
食べる物を食べれば、少しは気分が変わるかもしれないし、今俺達にできる事はないんだから。
もし、なんらかの病気で、薬草とかが必要なのであれば全力で『雑草栽培』を使うつもりだけど……そういった事はセバスチャンさん達を待ってからだな。
何もわからないのに、適切な薬草を作る事はできないから。
「そう、ですね。えぇ、タクミさんの言う通りです。それに、お腹が膨れれば気分も違いますし……その間にセバスチャン達もティルラの様子を見てくれるでしょう」
クレアが頷き、俺の言葉に同意してくれる。
そうだな、食べている間にセバスチャンさんやエルミーネさんが、ティルラちゃんがどうして倒れたのかを探ってくれるだろうし……それこそティルラちゃんが起きてくれるかもしれないからな。
「そうそう。心配だけど、ティルラちゃんが起きた時のために、俺達も元気でいないとな?」
「うん……わかった」
「ワフ」
それでもやっぱり、ティルラちゃんを心配してしまうのは止められないが、リーザもレオも頷いてくれた。
ライラさんやアルフレットさんにお願いして、俺達用の朝食を客間に用意してもらう。
スープなどは冷めてしまっていたようなので、温め直すか聞かれたけど……ヘレーナさんには申し訳ないが、そのまま食べる事にした。
「お待たせしました、皆様。ティルラお嬢様はまだ目を覚まされておりませんが……、今はエルミーネが見ております」
中々喉を通らない朝食を終わらせた後、お腹が膨れたおかげか少しだけ雰囲気が明るくなったかな? といったくらいで、セバスチャンさんが客間に入ってきた。
ティルラちゃんの傍には、エルミーネさんがいてくれているようだ。
「セバスチャン、ティルラはどうなの!? 一体どうして倒れてしまったの!?」
入ってきたセバスチャンさんに、クレアが椅子から立ち上がり詰め寄る。
よっぽどティルラちゃんが心配だからだろう……俺もそうだけど、リーザやレオも立ち上がってセバスチャンさんの方を見ている。
ライラさんやアルフレットさんもだ。
「……落ち着いて下さい、クレアお嬢様。ティルラお嬢様は、少なくとも異変は見られません。熱があるわけでもなく……ただ静かに眠っておられます」
「そ、そう……」
セバスチャンさんに言われて、少しだけ落ち着いたクレアさん。
ゆっくりと椅子まで戻って、ストンと力が抜けたように座った。
「セバスチャンさん、何か病とかそういう事ではないんですか?」
「はっきりとは断言できませんが、おそらく。倒れられて、私が駆け付けた時は呼吸も微小でしたが、今は普段寝ている時の様子と、なんら変わりありません」
倒れた時、すぐに抱き上げたのは俺だけど……確かにセバスチャンさんの言う通り、呼吸はしていても小さかった。
セバスチャンさんが部屋に連れて行く時も、そのままだったけど、今は落ち着いているっていう事なんだろう。
とりあえずは、安心だな――。
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