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第1128話 全員の自己紹介が終わりました
第1128話 全員の自己紹介が終わりました
「フォイゲと申します。あまり体を使う事は得意ではありませんが、薬草を広める方法など、お力になれるよう頑張ります」
肉体労働というよりも、考える側が得意そうなフォイゲさんは、面談の時に三番さんだったか……二十八歳の中肉中背で少し高めの身長の男性。
他にも、四番のウラさんという中年女性は、ややふくよかな体型な事もあって、皆の母親役というか肝っ玉母ちゃんみたいな豪快なところがありそう。
九番のコリントさんは、二十三歳で面談の時にいい男がいるかという予想外の質問をした人。
結婚や家庭を築く事に関しては、特に俺からできる事はないかしれないけど、積極的にランジ村の人達と馴染んでくれそうだし、畑仕事などもできるようだ。
十七番のアノールさんは二十五歳でキースさんと同年代、細身で畑仕事というより事務職をしている人っぽい見た目、計算が得意らしいのでキースさんと一緒に収支などのお金に関する仕事を任せたい。
あらかじめ考えていた人の他にも、ミリナちゃんの方で調合関係をする人が数人、さらに、畑仕事に従事してもらう人が十人程度といったところだ。
顔と名前は……さすがに一度で全て覚えきれないので、メモして後で復習しようと思う。
「タクミ様」
「はい。えー、何をやるか、どういう事をやるかは事前に報せています。以前、面談に来た人には直接伝えていますが……」
全員の紹介が終わり、アルフレットさんに促されて俺から皆へ話しかける。
仕事内容なんかは、雇う事を決めた時点でこちらからある程度報せているので、今集まっているという事は拒否する意思はないはずだけど、もう一度ここで最終確認。
給金も、キースさんと相談して大まかにどれくらいかも伝えてある……あくまで大まかにであって、詳細は決まっていないんだけど。
ともあれ、全員が頷いて辞退する人はいないようで一安心。
まぁ、クレアさんもいて、公爵家との拘わりを見せられたら断る考えは出ないのかもしれないけど。
「すみません、一つよろしいでしょうか?」
「はい、どうしましたか、アノールさん」
「名前を覚えて頂き、光栄です」
意思も確認した事だし、話さなきゃいけない事の話を……と思ったら、アノールさんが手を上げた。
名前を憶えていたのは、以前の面談からリストを見て何度も考えていたからなんだけど……間違えなくて良かった。
「以前、薬草を畑で作る事に関して、数や種類に問題はないと仰られていました。これだけの人数、しかも他の仕事よりも高い給金を出し、村にわざわざ畑を作る。本当に大丈夫なのでしょうか?」
アノールさんの質問は、薬草畑がちゃんと収支に見合った量と種類を出荷できるか、という心配なんだろう。
ちょうどその事を説明しようとしていたところだな。
人件費やら何やらを考えて、ちゃんと利益が得られるものなのかという考えでもあるんだろう、面談の時も確か、アノールさんが心配していたっけな。
「前も言いましたが、問題ありません。数に関しては、皆さんと俺次第になるでしょうけど……種類や品質については」
「私が、公爵家として保証いたしますよ、タクミさん」
「クレア様……公爵家の方が保証というのでしたら、確かなのでしょうが……今の時点で品質についても、保証できる物なのですか?」
俺の言葉を継いで、クレアが宣言。
『雑草栽培』で作られる物は、一定以上の確かな品質の物しか今までできた事がないからな。
でも、ギフトの事を知らない人からすれば、これから自分達で畑を使って作ると考えているだろうし、管理の仕方や生育状況によって品質は変わってしまうだろう。
だから、品質の保証についてアノールさんは懐疑的なのもわかるし、他の人達もそこに関しては訝し気だ。
いくら公爵家として保証されると言われても、完全に信用するのは難しいだろうな。
……俺のギフトを知っているデリアさんは、何故かアノールさんに得意気な視線を向けていたけど。
「そうですね……その事を話す前に、アルフレットさん。いいですか?」
詳しくギフトの事を話す前に、もう一つ伝えておかないといけない事がある。
これに関しては、俺からよりもアルフレットさんからの方がいいだろう。
「はい。では私から。――皆様は先程、雇用される事に関して同意されました。ですので、アノールさんを始めとした幾人かが気にされている内容の話になるのですが……この先は、機密事項になりますので他言無用でお願いいたします」
「誰にも、言ってはいけないという事ですね?」
「その通りです。現状、特に罰則などは考えておりませんが……あまり口外し過ぎるようなら、何かしらの方策を考える事になります。給金には、機密を守る守秘義務が課せられているとお考え下さい」
人の口には戸は立てられないとは言うけど、外に漏らさないために給金を上げるのは、キースさん達と話していた事。
口止め料と言うと、聞こえが悪いかもしれないけど……公爵家が関わる事で話さぬようにと言われているのに、話す人はそうそうそうないだろうとの信頼もあって、今のところ罰則とかは考えていない。
まぁ、アルフレットさんが言うように、酷い場合には解雇も含めて色々考える必要があるんだろうけど。
とりあえず、機密事項や守秘義務と聞いて、少しざわざわしたりもしたけど、皆公爵家を裏切ったり秘密を漏らしたりはできないといった事を口々に言っていた。
領民から慕われている公爵家ならではで、そんな人たちが後ろ盾みたいになっているのは、やっぱり心強いな。
「よろしいようです、タクミ様」
「はい、ありがとうございます。えーと、回りくどく言うのもあれなので、ズバリ言うと……俺にはギフトがあります。『雑草栽培』という名前で、簡単に言うと一部を除いた植物を一瞬で作り出せます」
「ギ、ギフト……ですか」
「アニキ、やっぱり凄いんですね。でも、ギフトってなんですか?」
アルフレットさんに代わり、『雑草栽培』というギフトを持っている事を明かす。
反応は大体二通りかな……ギフトを知っていて、ただただ驚いている人。
ギフトを知らず首を傾げる人達、ニックもこっちだな。
ただ、ギフトを知らないのに凄いと無理に褒めなくていいんだぞ、ニック? 雰囲気でなんとなく言っただけっぽいけど――。
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