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第977話 ティルラちゃんの考えを聞きました
第977話 ティルラちゃんの考えを聞きました
「ヨハンナ、至急セバスチャンに伝えてちょうだい。ティルラとラーレを発見したと」
「はっ! 畏まりました」
「グルゥ?」
「あら、フェリーが連れて行ってくれるの?」
「グルゥ」
「フェリー殿、よろしくお願いします」
ティルラちゃんから事情を聴いている途中、ちょっとだけ中断してヨハンナさんに指示をするクレア。
フェリーが乗せて運ぼうか? と言うように伏せて鳴き、クレアが聞くと頷いた。
ヨハンナさんが再びフェリーに乗り、西門に向かって走り出すのを見送ってから、ティルラちゃんに続きを聞く。
「それで、ティルラはここまで来て何をしようとしていたの? ラーレの力を借りて、スラムの人達を蹴散らせばいい……とは考えていないわよね? それはさすがに、看過できないわよ?」
「そんな乱暴な事考えていません! その……私は……」
「……すでに乱暴な事をした後だと思うのだけど」
「まぁまぁ。――ティルラちゃん、それは言いづらい事なのかい?」
動機はクレアが落ち込んでいたからで、まぁ一応姉想いと言えなくもない……周りと相談くらいはして欲しかったけど。
ともかく、ティルラちゃんがここに来て一体何をしようとしていたのか、それを聞き出そうとするクレアに反論しつつも、言いづらそうに目を泳がせている。
数人……四人の男女が倒れている時点で、乱暴な状況ではあると言えなくもないが、理由を聞くために俺もクレアの隣にしゃがんでティルラちゃんを目を合わせ、聞いてみる。
「言いづらいです……笑われるかもしれません。タクミさんは大丈夫だと思いますけど、姉様やセバスチャンには笑われると思います……」
ティルラちゃんはクレア達に言うと、笑われたり馬鹿にされたりすると考えているらしい。
これまでも何度か、ティルラちゃんが言い出した事を真剣に考えてもらえなかった事とか、あるのかもしれない。
まだまだ十歳の子供だから、大人に自分の考えを言っても通じない……と思ってもおかしくないか。
「私って、そんなにティルラから信用がなかったのかしら……はぁ」
「近しいからこそ、そう思うのかもしれないね。でもティルラちゃん、俺もそうだけどクレアやセバスチャンさんも、きっとティルラちゃんが真剣に考えた事なら、笑ったりはしないと思うよ? レオやリーザも……な?」
「ワフ」
「ティルラお姉ちゃんを笑ったりなんて、リーザしないよ?」
「タクミさん……レオ様やリーザちゃんも……わかりました」
「……タクミさんの言葉は、素直に聞くのよね」
溜め息を吐くクレアをフォローしつつ、笑ったりしないと約束してレオやリーザを窺う。
レオもリーザも、頷いて笑わないと約束してくれた。
それを見て、決心がついたのかティルラちゃんが話す事を決める……クレアは隣で小さく呟いているけど、ここ最近ティルラちゃんと色々話せて信頼されているからだろう。
クレアの言う事を聞かないとか、そういう事ではないと思う。
「昨日、タクミさんや姉様が話しているのを聞いて、ここにいる人達が働けないのがいけないのだと思いました」
「そうだね。理由は様々だけど、働けないからお金を持っていなくて、スラムに住み着くしかない……ってところかな」
ゆっくりと、自分の考えを話してくれるティルラちゃん。
話を聞いていたとはいえ、全部じゃないにしても状況や問題を把握しているのは、これまでの勉強の成果だろうか。
やっぱり、子供は大人が言う事を理解できるかはともかく、ちゃんと聞いているもんだなぁ。
「はい。なので、私は自分達で住む家を作ればいいんじゃないかと考えたんです」
「……そう、なんだ。でも、自分達で住む家だって、作るのにお金がかかるんじゃない?」
「木材などもそうですけど、作る時に人を雇う必要があるのよ。だから結局、お金がかかってしまうのよ?」
家を作るにはお金がかかる。
ラクトスでは木材が安いとはいえ、それでもタダじゃない……こちらでは、機械化がされていないのもあって、多くの人件費がかかる。
材料費にも、人が運ぶ際の輸送費が入っているしな。
総じて人が動く事でかかる費用は、日本にしろこちらにしろ多くかかるものだが、建設のみに拘わる人に限っても人数が多いので、こちらの方が人件費がかかるだろうか。
……ランジ村で作っている家の費用を聞いた時に、知った事だけど。
「だから、自分達で作るんです。自分達で作れば、好きな家を作れますし……費用も少なくなるんじゃないかと思いました……」
「自分達というのはそういう事なのね。人を雇うのではないから、お金も必要ないと」
「必要ないとまでは考えていませんでした。でも、誰かにお願いして作るよりは、いいんじゃないかなって」
「まぁ、確かに人に払う費用を少なくできれば、その分安く作れるとは思うけど……」
スラムにいる人達は様々だから、もしかしたらある程度建築の知識を持っている人もいるかもしれない。
けど、基本的に素人が多いだろうし、知識があるなら働き口がもらえる事だってあるわけで……作るとしても素人集団で作る事になる。
小さい掘っ建て小屋程度ならともかく、複数人が住むような家は難しいだろう。
ましてや、ティルラちゃんが言うように、好きな家を作るなんて事はできそうにない。
「そうなのですか? 家を作るって、難しいのですか?」
「ティルラがここまで考えているとは、思っていなかったけど……そうね、人が住むからそこは家になるの。そうなると、木材をただ持ってきて積めばいいわけじゃないわ。穴を掘ったり、地面に立てたり……私も家作りの知識は少ないけど、それでも誰もができる事だとは思わないわ」
「……いい考えだと思ったんですけど」
家作りの知識がないためか、簡単に作れる物だと思っていたんだろう。
クレアが説明し、自分の考えが未熟だったと落ち込むティルラちゃん。
「悪い考えじゃないけど、どうやればできるのか、実現するために必要な事は……という考えが抜けていたかな? でも、ティルラちゃんくらいでそこまで考えられたら、凄い事だよ」
俺が十歳の時なんて、ティルラちゃんくらいの事を考えてはいなかった。
今日の晩御飯はなんだろうなぁとか、どうやって遊んだら楽しいかなぁとか、そんな感じだったと思う――。
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