【大感謝!500万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第931話 夜空を見上げながら語り合いました
第931話 夜空を見上げながら語り合いました
「こういう時、星座とか語れば面白いのかもしれないけど……あんまり気の利いた事が言えないなぁ、俺」
「いえ、私はこうしてタクミさんと他愛もない話をしているだけでも、楽しいですよ」
「あ、うん……そ、そう。お、俺も楽しいよ」
「はい!」
手が空いていたら、頭をポリポリとかきながら言っていただろうけど、生憎今は荷物と明りの剣で両手が塞がっているため、照れ隠しにそっぽを向いて言うくらいしかできない。
それでもクレアは楽しんでくれているようで、微笑みながら言ってくれているのが言葉の雰囲気から感じられた。
何かが胸にぶつかったような、刺さったような……痛みとは違うんだけど、一瞬だけ鼓動が跳ね上がり、同意するのにどもってしまう。
チラッと横目で覗き見たクレアは、本当に眩しいと感じる笑みを浮かべて、楽しそうに頷く。
「タクミさんのいた場所でも、星座ってあったんですか?」
「あ、うん。あったよ。詳しくは知らないから、どの星と星を繋げて何になる……とかまではわからないけど」
少し照れ臭いまま歩いていたら、今度はクレアから問いかけられる。
星座に関しては、話を聞いた事くらいはあるけど、日本にいる時は空を見上げる習慣はなかったし、星もあまり見える場所に住んでいなかったから、詳しくない。
北極星くらいは知っているし、天の川とか夏の大三角くらいはなんとなくわかるけど……冬の大三角とかもあるんだっけ? とか、そのくらいの知識だ。
「こっちでも、星座ってあるの?」
「はい、ありますよ。見方とかは、国によって違うらしいと聞いていますけど。そうですね……あの月から少し離れた場所に、一際明るい星がありますよね?」
「うん、あるね」
クレアが指し示す方を見上げると、確かに一つだけ他の星々よりも明るい星があるのがわかる。
日本で見る北極星よりも、はっきり見えて大きく、わかりやすい。
「あの星から他の星を伝って……こうして繋げていくと……」
「えーっと……あぁ、あっちか。ふむふむ……」
クレアが説明しながら、指先を動かして星と星を繋げて虚空に線を描くようにする。
なんとかそれを目で追い、指も細くて綺麗だな……なんていう個人的な感想を封じ込めて、頭の中で星々を繋げていくと……。
「こうして、こうすると……シルバーフェンリルになります!」
「……星座でも、シルバーフェンリルなんだ」
「はい。私が公爵家の人間で、ここが公爵領だからでしょうけど……シルバーフェンリルの話と共に、星座で見上げて思いを馳せる、とかもされていますね」
虚空に描かれた線を、見上げた星に投影して繋げると……少しいびつだけど四肢と顔、尻尾までレオに近い形になった……シルバーフェンリルだそうだ。
公爵家はシルバーフェンリルとの拘わりがある事や、ユートさんの話を聞く限り、国としても拘わりがあるようなので、最強と畏怖される存在というだけでなく、身近な感覚なのかもしれない。
まぁ、実際に会う事は初代公爵様以来、なかった事らしいけど……むしろだからこそ、伝説の存在として考えられているのかもな。
「形だけだと、フェンリルにも見えるけど?」
「いえ、あれはシルバーフェンリルなんです。フェンリルはまた別で……」
「あ、そっちはまた別にあるんだ……」
四足歩行で、尻尾がある獣の形……というだけなので、シルバーフェンリルと思わなければフェンリルや他の獣に見えなくもないと思ったら、そちらはそちらで別にあるらしい。
他にもいくつかクレアに星座を教えてもらう……。
こちらの世界では魔物が身近な存在だからか、オークなどの魔物を模した星座が多かった。
蛇の形をした魔物の星座もあるみたいで、サーペントかな? と聞いてみたら別の魔物だったりと、ちょっと区別が付け辛かったりするけど。
日本でも、身近な動物……おおいぬ座とかうみへび座とかあるらしいから、それと似たようなものか。
どれを繋げてどの星座にするかは、全然わからないけど。
なんにせよ、この世界というか、少なくともこの国では月や星座は忌避したり不吉なものではなく、親しまれているもののようだ。
星座の事を話すクレアは楽しそうで、夜という特別な時間という感覚なのもあり、フィリップさんの言う通り確かに心の距離が近くなるのも間違いじゃなさそうだ。
「きゃっ!」
「おっと!」
そんな中、一応の明りがあるのに暗いのに空を見上げて歩いていたためか、クレアが何かに躓く。
転んではいけないと、両手が塞がっているため傾いたクレアの前に体を出して受け止めた。
「止まって空を見上げているならまだしも、歩きながらずっと上を向いているのは、ちょっと危なかったね」
「そ、そうですね……その、タクミさん……?」
「ん……? っ!」
クレアの体が俺に寄りかかるようになり、転ばなかったと安心しながらホッとする。
そんな中、クレアがこちらを見上げながら、何やら戸惑っている声……って、近い!
俺の身長がそこまで高くないせいもあるんだろうけど、クレアも女性ながらにそこそこ身長が高い。
そのため、俺を見上げるクレアの顔が、下を向く俺の顔のすぐ近くにあった。
距離で言うと十センチと少しくらいか……明りが少ないので、クレアの表情がはっきり見えないが、星や月の光を反射して、瞳がキラキラと輝いているように見える。
「……タクミ、さん……」
「クレア……」
頭の中で、すぐに身を離せ! と自分の声が響いているけど、クレアの瞳に魅入られて体が動かない。
向こうも体が動かないのか、そのままジッと俺の目を見つめたまま。
似たような事が、以前二人で話している時にあったような……。
今なら完全に二人きりで、邪魔は入らないと言う天使の囁きと、エッケンハルトさんに自分の気持ちを確かめると見栄を切ったのを忘れず、流されるなと言う悪魔の囁きが聞こえる気がする。
……ん? 天使と悪魔が逆かな?
いや、欲求という意味では天使が正しくて、悪魔がそれを邪魔しようとしているのだから、間違いじゃないのか……うん?
いやでも、冷静に考えたら正しいのが悪魔で、間違っているが天使で……というかそもそも、今冷静じゃないだろう。
なんて、頭の中で色々な事がグルグルしていた――。
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