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第873話 なんとか話を逸らす事に成功しました
第873話 なんとか話を逸らす事に成功しました
「成る程のう……しかし、そのようにニャックを見た事はなかったの。じゃが……さすがにニャックの作り方全てを、見せるわけにはいかんと思うのじゃが?」
カロリーなどの説明は長くなるのでしていないが、ニャックを食べていると痩せる効果が期待できるなどなどの、利点を熱く語ってニャックがどれだけ素晴らしい物かを村長さんに伝えた。
特産品……とまではなっていないが、それだけ売れる見込みがあるとわかり、村長さんはにわかに嬉しそうにしながらも、商売っ気を出したのか、こちらを窺うようになった。
よしよし、狙い通り俺の事よりもニャックの事に興味が移ったようだ……これを狙って考えたのは、セバスチャンさんだけど。
元々、ニャックは売り物として作っているわけではなく、村の人達が余った作物の芋を使って作っているだけの物で、多く作り過ぎたので保存しておくよりも村のために売ってみよう……という試みでカナートさんがラクトスに持って来ていた、というのを聞いている。
だから、本来は何も言わなければニャックの作り方を見る事くらいはできただろうけど……そもそもニャックを作って自分達が儲けようという考えではなく、作られたニャックを買おうと考えているだけだから、見れなくても問題ない。
セバスチャンさんの考えでは、これでニャックを多く作るようになって売り出せばそれで良し、興味を持たずにそれなりの量を作るだけに留めるのなら、公爵家は村に無理をさせないよう、屋敷で少量を買い取る程度に留めるという事らしい。
なんというか、セバスチャンさんの考えが二段構え三段構えのようになっていて、少し怖い……本当に、商売敵とかでなくて良かったと思う。
……俺が直接商売をしているわけじゃないけど。
「こちらは、ニャックの作り方を見たいわけではなく、買いたいと考えているだけなので、構いません」
「そうか……そうじゃのう、しばらく滞在すると聞いておるから、明日か明後日にでも村の者と交渉するようこちらで話しておこう」
「ありがとうございます」
村にとって、特産品と言わないまでもそれなりに売れそうな物があれば、そちらに関心がいく……というのもセバスチャンさんの言葉だけど、ブレイユ村は貧しい村というわけではなくとも、豊かになるために商売に繋がりそうな物は歓迎という事だろう。
お金があれば確実に豊かになるわけではなくとも、ないよりはマシだし、売れる物が多ければそれだけ村の発展が望める。
村長さんが村の事を考えていればいる程、自分の村でニャックが思わぬ利益を生み出すかも、と考えればそれに関心は移るものだ……なんとか、俺の事は誤魔化せたと思う。
デリアさんは最初村長さんにも事情を説明しようか、と考えていたようだけど、一対一で話してこの方がいいと判断。
まぁ、これから先薬草畑を運営するようになったら、色んな人と話すようになるかもしれないし、多少は相手のペースを崩したり自分の望む方へ誘導するようにしたり、という練習みたいなものだ。
もちろん、相手を騙して損をさせたり自分が利益を独占とは考えていないし、ほとんどセバスチャンさんの考えた案を話しているだけなので、自慢できる事じゃないけど……。
「ふぅむ……」
「……」
少しの間、部屋に沈黙が訪れ、俺の話を信じてくれたのか、やっぱり疑っているのか……という緊張に包まれてやはりもう少し他に言い方があったのかもしれないし、正直に話した方が良かったかも、と頭の中で色々な考えがグルグルしていた。
……やっぱり、俺は直接交渉しての腹の探り合いとか、駆け引きとかは向いていないなぁ。
「戻りました、タクミさん、村長。お茶はここに置いておき……あ! 村長駄目ですよ、寝てないと!」
「あぁ、デリアさん」
「おぉ、デリアや……いや、すまんのう。ずっと寝たままだと、失礼かと思ってのう……」
「それはさっき、タクミさんも気にしないって言ってくれたでしょ? ほら、横になって下さい……」
「つぅ……うむ、すまんのうデリア。デリアは優しい子じゃ……」
俺の話を信じているのか、ただ乗ってみて様子を見ているのか、村長さんは無言のまま俺を見極めるように鋭い目で真っ直ぐ見つめていたが、デリアさんがお茶を持って戻ってくるとすぐに、最初の頃のように柔らかい声色になり、目尻を下げて柔和な表情になった。
デリアさんに支えられて再び横になる時、腰の痛みに顔をしかめている姿に、嘘は見えないから本当に腰を痛めているんだろうけど……この人、意外と一筋縄ではいかない人っぽいな。
まぁ、敵対しに来たとか、俺が何か企んでいるわけじゃないから、問題なさそうだけど。
「もう、村長ったら。私を甘やかしても、いい事はないですよー!」
「おぐぅ! ちょ、デリア……や、やめ……ぎゃー!」
「あぁ、デリアさん。そんなに動かしたら……!」
村長がどういう人かを考えていたら、デリアさんが照れたのか、改めて寝転がった村長を揺さぶり始める。
急な動きで腰へ負担がかかって強烈な痛みが走ったんだろう、悲鳴を上げる村長さんを助けるため、デリアさんを止めに入った。
デリアさんの耳や尻尾が忙しなく動いているから、喜んでいるのは間違いないんだろうけど、あまり喜ばせないように気を付けた方がいいのかもしれない。
「……はぁ、ようやく落ち着いたわい」
「……ごめんなさい」
「まぁ、これからは気を付けてくれると助かるのう……」
少しして落ち着いたデリアさんが、背中を支えて体を起こさせながら、お茶を飲んで息を吐く村長に謝る。
横になったままだとお茶が飲めないから、体を起こしているけど……この状態でデリアさんがさっきのようになったら村長の腰が危ないので、迂闊な事を言わないように気を付ける。
それにしても、さっきのような事があってもデリアさんに対して、柔和な声色を崩さないあたり、村長さんは本当に可愛がっている様子だ。
年齢的に孫と言うにはデリアさんが育っているけど、似たようなものなのかもしれない。
そういえば、息子夫婦や奥さんがデリアさんが会いに行けば喜んで、すぐに元気になると言っていたっけ……元気とは違うが、叫び声をあげる羽目にはなったけど――。
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