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第748話 面接というより説明会のようでした
第748話 面接というより説明会のようでした
会場を見渡し、集まった人達を見ながら、皆に聞こえるように声を大きくして話し始める。
「働く場所はランジ村という、ラクトスから少し離れた村でとなりますが、これは皆さん聞いていると思います……」
前置きとしてランジ村を出し、少しだけ間を開けると、皆先程までの様子は鳴りを潜めて、頷いてくれるのを確認。
「そこで新しく、薬草のための畑を作る事となりました。皆さんには、そこで畑で薬草を作ったり摘み取る作業。それから、薬草から薬を作る調合や管理などの仕事に就いてもらおう、と考えています」
「一つ、質問をしてもよろしいでしょうか?」
「はい、四番の方。なんでしょうか?」
薬草畑を作るという説明をして、仕事に関する話になった段階で、集まった人たちの中から女性が一人手を上げて発言。
セバスチャンさんが番号と共に聞き返した……なんだか、面接というより職場説明会とか質疑応答みたいな感じになっているけど、ここではそうなのだろう。
手を挙げた女性は、セバスチャンさんに許可されて椅子から立ち上がる。
少しふくよかな体型をしていて、少なくとも俺よりは年上に見えるのと、主婦かな? と思える貫禄を持つ短髪の女性だ。
「薬草というのは、畑で管理して根付く物なのでしょうか? 人が作れるかどうかというのもそうですが、気候や土が合わなければ育たないとも思うのですが……?」
「ふむ……もっともな質問ですな。タクミ様?」
セバスチャンさんに促されて、どう説明した物かと考える。
薬草を畑で作る事は今までにない事で、自然に群生していた物を見つけて採って来ると言うのが通常でだから、当然の疑問だな。
ただ、ここはギフトにも拘るから少し説明が難しいな……。
「そうですね……薬草に関しては問題なく、そして多種多様な薬草が栽培できると考えておいて下さい。方法に関しては、働き始めてから伝えます。あまり漏らしたくない事なので、ここにいる全員に伝える事はできません」
「……わかりました」
完全に誤魔化す事はできない代わりに、中途半端な答えにならないよう手段はあるとだけ伝えておく。
これで怪しんだり、信じられないようなら元々縁がなかったという事だろうし、とにかく秘密! と言うよりも、今は言えないと伝えた方が信用はされそうだから。
四番の女性は、少し俺の言葉を考えるようにしながら椅子に座った。
もう一度セバスチャンさんを見ると、頷いて促されたので、話を続ける。
「……ですので、ここに集まった人だけでありませんが、一つの仕事というわけではなく、別れて働いてもらう事になると考えています。大まかに別けると、畑の管理、薬の調合、作る薬草の種類や数の管理です」
薬草畑の説明や、それを広く公爵領内に販売する事などを説明した後、仕事内容について触れる。
細かく言うと、さらに畑を耕す担当や薬草を摘む担当、摘んだ薬草を分けたり調合する際に補助をしたり、調合した薬やそのまま使用できる薬草を、販売するために小分けにしたりがあるが、そこはお互いが協力したり複数担当する事もあるから割愛だ。
数や種類の管理は、俺やクレアとも打ち合わせをする必要があるだろうから、管理者みたいなもので俺に付く執事さんや屋敷から雇った人にも入ってもらおうと考えている。
信頼できる人というのも重要だが、俺やクレアと面識があってある程度話した事のある人がいた方がいいからな。
「はい。少々よろしいでしょうか?」
「十七番さん、どうぞ」
「ありがとうございます」
役割関係の話が終わった後、今度は男性が手を上げての質疑。
十七番の男性は細身で、畑仕事とかよりは事務仕事に向いていそうに見えるが、人は見かけによらないと言うから、それで判断するのはやめておこう。
「先程公爵領内に広く販売網を築く……といった内容の説明がありました。ですが、村一つでは行き届かないのではないでしょうか? 薬草を作れるとして、作る場所をもっと大きく、そしてそれぞれの場所で行わないと、とてもではありませんが行き渡らないように思えます」
ふむ、こういった質問が来るという事は、十七番さんはそれなりに領内の街や村、人口なんかを把握していそうだ。
細かい数字は公爵家の人なら把握していてもおかしくないだろうけど、街や村でただ暮らしているだけでは考えたり調べたりしない事のように思える、多分。
もしかしたら、中々有望な人なのかもしれないな。
「先程も説明しましたが、薬草の数や種類に関しては問題ありません。公爵家の執事として申しますが、旦那様……当主様と相談のうえ試算をし、供給に不足はないようにできるだろうと結論が出ています。公爵家、並びにタクミ様を信じられれば、となりますがな?」
「公爵家の当主様も……ですか……」
俺の代わりにセバスチャンさんが説明してくれたが、エッケンハルトさんの事を出したので、会場の皆がざわつき始めた。
まぁ、公爵家に拘って入ると最初から知っていても、当主様に直接相談していたとわかれば、驚いたりもするのかな?
部屋の隅では、ソルダンさんがさすが公爵閣下! とでも言うように深く頷いていた。
「貴方の心配はもっともです。通常の方法で考えるなら、貴方が仰る通り、大きく、そして多くの薬草畑を作って供給せねば、広い公爵家の領内に行き渡らせる事は不可能ですからな。ですが、タクミ様の薬草畑ならば、それが可能だと当主様も頷いておられます。先程もタクミ様が仰ったように、詳しい内容は正式に働く許可が出た方にのみお伝えしますので、今は公爵家を信用してもらうしかありません」
「……わかりました。今はそれで納得しておきます」
「はい。それでよろしいかと」
俺が説明するべきことだったと思うが、なんて言えばいいのかわからなかったので、代わりに話してくれてありがたい。
ありがたいんだけど……やっぱり説明をするとなると、セバスチャンさんは急に生き生きするなぁ。
代わりに説明するというより、むしろやりたかったからじゃ? なんて思ったけど、助かっているのは確かなので余計な事は考えないようにした。
ほんと、こういう時のセバスチャンさんは頼りになるなぁ――。
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