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第586話 ライラさん達にも手伝ってもらいました
第586話 ライラさん達にも手伝ってもらいました
「とりあえず、こっちはこっちで薬草を作らないとな……」
楽しく遊んでいる子供達はそのままにしておいて、薬草作りに専念する。
まずはラクトスで販売する分の薬草だな。
余裕があれば、エッケンハルトさん達と話していた、兵士さん達用のロエを作っておきたかったが、今日はまず他の薬草を作る事にしよう。
「えーと……やっぱり、一番多いのはラモギか。あとは……」
裏庭に来る前、セバスチャンさんから渡されていた、注文書とも言える書類を見ながら、薬草を作り始める。
病が流行った事と関連しているのか、一番多く作る事になっているのはやっぱりラモギだった。
まぁ、ラモギで作る薬は保存できる物だから、一度病に罹って治ってもまた罹ってしまった時のため、念のために買い置きを……と考えている人もいるだろうしな。
注文書を渡される時に聞いたが、既にラモギによる薬の値段は通常に戻してあるらしい。
ラクトスでは、もうほぼ以前のような病に罹っている人がおらず、スラムのような貧民街に住む人で、病になった人も治っているためらしい。
後で調べてわかった事らしいが、スラムとかに棲んでいる人は、元々街の表にはあまり出て来る事が少ないため、病に罹った人自体が少なそうという調査結果だったとの事だ。
そのうえで、安い値段と豊富な量をもって売る事で、病に罹った人のほとんどが完治したと見られている。
ラモギを重点的に作って、行き渡るように安くした甲斐があったな。
さすがに、他の薬を売っている店とかで混乱があったらしいが、それもカレスさんが上手い事やってくれたらしい……具体的にどうしたのかは、セバスチャンさんが面白そうな表情をしていたため、逆に聞くのを憚られた。
……カレスさん、変な手段で混乱を収めたとかじゃない……ですよね?
ともあれ、俺は注文書に従いながら薬草を作るため、『雑草栽培』を使い始めた。
「こんなもんかな?」
一日で作る量としては、多いという程ではないが、注文書に書かれていた数の薬草を生やす。
それでも、通常ラクトスへ卸す薬草よりも多少多かったが、これは街付近の村からも買い求める人が増えた事が原因らしい。
多く売れるのは悪い事じゃないな。
あと、エッケンハルトさんが以前持ち帰った薬草は、既に販売済みらしいので、ラクトス以外の場所で売るための薬草も少し入っている。
少しなのは、今日一日で全部作るわけではなく、明日作る予定にしてるからだ。
まだ今日は、簡易薬草畑の方でも新しい薬草を栽培して様子を見ないといけない、という事もある。
早く薬草畑をランジ村で作って、困っている人に薬が行き渡るようにしたいなぁ。
「さて、それなりに多くの薬草を作ったから、摘み取るのも時間がかかりそうだな……」
「手伝います、タクミ様」
「師匠、昨日は挨拶できなくてすみません。無事のお戻り何よりです! 私も手伝います!」
「ん? ライラさんとミリナちゃん……と、ゲルダさん?」
「はい。お手伝いに参りました」
「師匠一人で全部やらなくても、私に言いつけていいんですよー?」
「……タクミ様、昨日は申し訳ありませんでした……私も手伝います」
薬草の量が多いため、これを一人で摘み取って状態変化をして……と考えると結構な手間だ
ちらりと見た方では、レオやラーレと一緒にティルラちゃん達は楽しそうにしていたから、邪魔するのも悪いと思って、一人で何とか頑張ろうと呟いていると、いつの間にか屋敷から出て来ていたライラさんに声を掛けられた。
その後ろには、ミリナちゃんがいて、さらに少し距離を離すようにしてゲルダさんもいる。
日本にいた時と違って、誰かに頼めば手伝ってくれるって環境だったな……一人で頑張らなくてもいいというのは、本当にありがたい事だ。
手伝ってくれるという、ライラさんとミリナちゃんをありがたく思っていると、ゲルダさんがおずおずと近付いて来て頭を下げられた。
きっと昨日の夕食に関しての事だろう……耳まで真っ赤なうえ、目が潤んでいたから、相当ライラさんにからかわれたんだと思う。
恥ずかしそうにしているだけで、落ち込んでいるようには見えないから、朝ライラさんと話したように叱ったりはしていないんだと思う。
まぁ、叱られるよりも、からかわれる方が人酔っては堪えるだろうし……これからもう少し気を付けてくれればいいかな。
というより、俺が許す許さないではなく、エッケンハルトさんやクレアさんの方にその権利はあると思っていたら、既に謝って来た後だったらしい。
俺がここで薬草を作っている間に、エッケンハルトさん達の所へ行って来たらしい。
……クレアさんはまだしも、エッケンハルトさんにもからかわれた可能性もあるな、これは。
「師匠、採って来ました!」
「タクミ様、どうぞ」
「うん、ありがとう。……よし、ライラさん?」
「はい、受け取りました」
恥ずかしそうなゲルダさんはともかく、作った薬草を摘み取って薬にしていく。
作業は分担されて、ミリナちゃんとゲルダさんが協力して摘んだ薬草を、俺が『雑草栽培』で使用可能な状態に変化させる。
それをライラさんに渡して、店で売れるよう種別ごとに分けて布や紙で包んでもらう。
ミリナちゃんとゲルダさんはともかく、俺とライラさんの作業は台があった方がいいので、ライラさんが屋敷の中から丸いテーブルと椅子を持って来てくれた。
というより、俺に声を掛ける前に屋敷との出入口付近まで運んでいたらしい。
そこまで先回りしてくれているとは……というか、言ってくれれば俺が運んだのに、とライラさんに行ったら、これもお世話の一つですからの一言で一蹴されてしまった。
変にこちらが手を出そうとすると、仕事を奪う事になるのかもしれないな……うーん、お世話されるのも難しい。
「キャゥ……キュゥ……」
「お? シェリーか。どうした……?」
「キュゥ……ハッハッハッハ!」
「あー、そうか。なんて言ってるのかはっきりわからないが、疲れたんだな?」
「キャゥゥ……」
次々と摘まれて運ばれる薬草を変化させていると、足元にシェリーが近付いて来る。
声を掛けてみると、俺を見上げるようにしてお座りしつつ、舌を出して荒い息を吐いていた。
シェリーの言葉はわからないが、マルチーズだった頃のレオを見ていたので何となく言いたい事はわかる。
目もトロンとしているというか、元気がなさそうだし、荒い息を吐いているのでよっぽど疲れているんだろう。
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