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第471話 フェンリルの森へ向かって出発しました
第471話 フェンリルの森へ向かって出発しました
「「「「「行ってらっしゃいませ、皆様!! ご無事のお帰りをお待ちしております!!」」」」」
屋敷に残っている使用人さん達、全員ではないかと思えるくらいに勢ぞろいした人達に見送られ、エッケンハルトさん達と一緒に屋敷を出た。
声を揃えて見送られるのにはもう慣れたが、今回は特に人数が多く、声も大きかったので、アンネさんがビクッとしていた。
……そういえば、この屋敷に来てから外に出る機会はあまりなかったから、この見送りに慣れていなかったんだなぁ。
リーザは、森へ行く事への期待感からか、見送りの声の大きさはあまり気にしていない様子だった。
アンネさんより、リーザの方がある意味肝が据わっているのかもな……。
屋敷の外では、以前ヘルサルへ向かう時に乗った豪奢な馬車と簡素な馬車、さらに複数の馬が準備されていた。
俺とリーザはレオの背中に乗り、エッケンハルトさんとティルラちゃん、クレアさんアンネさんが馬車へ乗り込む。
使用人さん達はそれぞれ、執事さんは御者台に、メイドさんは簡素な方の馬車に乗り込み、護衛さん達は二人一組で馬に乗った。
「では、出発致します!」
護衛さんの馬を先頭に、エッケンハルトさんを乗せた馬車の御者をしているセバスチャンさんが声を上げ、それぞれ一斉に走り始めた。
俺とリーザを乗せたレオは、それを見送った後出発。
どうせレオの方が早いし、すぐに追いつくから、後からついて行くという風にしてもらった。
追いつくように速度を出す方が、レオも楽しいだろうしな。
ちなみに、シェリーはレオが外を走る姿をしかと見せるため、リーザが抱いている。
フェンリルらしく外を駆ける事も覚えた方がいい……というのはレオの発案だ。
というより、最初は馬車や馬についてシェリーも森まで走るとレオが提案したんだが、さすがに距離があり過ぎるという事で、せめてレオが走る姿を見せる事で妥協した。
レオにとっては、とにかくシェリーを鍛える事と痩せさせる事が主目的のなのだが、移動で疲れ切ってしまったら、オークと戦う事もできなくなるからな。
「皆、いつもと違う格好なんだねー!」
「そうだなぁ。まぁ、森へ行くのは楽な事じゃないからな。リーザも、その帽子は置いて来て良かったんだぞ? 汚れるかもしれないし」
「んー……汚れるのは嫌だけど、外に行く時は被ってたいな。パパが買ってくれた帽子だから!」
馬車と馬を見送って、レオが走り出した頃、リーザがクレアさん達の恰好を思い出したように感想を漏らした。
俺もそうだが、皆動きやすい服を着て、森の中での移動に備えてる。
リーザだけは、そういった服を用意していない事もあったが、戦う事が目的じゃないため、いつもとあまり変わらない。
お気に入りの耳隠し帽子も被ってる。
買ってきてすぐは、屋敷内でも帽子を被っていたリーザだが、さすがに耳をずっと隠しているのは違和感があるためか、裏庭に出る時などの、外へ出る時だけ被るようになっていた。
……一部の使用人さん達が、リーザの忙しなく動く耳を見たがったとか、帽子があったら触れないとか……そういう要望があったというのも、一つの理由なんだがな。
リーザ、屋敷の人達に可愛がられてるなぁ。
ともあれ、汚れてしまわないか心配だが、リーザにとって外に出る時に、大事な帽子を脱ぐという選択肢はないらしく、このまま被って行くつもりのようだ。
まぁ、汚れたら洗えばいいし、破れたりしたら補修したり、新しい帽子を買えばいいか。
大事な帽子だから、新しい帽子があっても離しそうにないが、その場合は部屋に飾っておくのもいいしな。
そんな事を考えながら、少しだけクレアさん達の恰好を思い出す。
クレアさんを始め、エッケンハルトさんやティルラちゃん、それだけでなくセバスチャンさんを含めた非戦闘員の人達も、念のための装備なのか、革で作られた物を部分的に身に付けている。
動きやすさと、一応の防御を考えたんだろう……アンネさんですら身に付けていた。
長い髪の人は、邪魔にならないよう後ろでまとめている。
護衛さん達は槍も持っているようだが、基本的には剣を使うつもりのようだ。
森の中は木々が邪魔をするため、小回りの利く剣の方が扱いやすいためだろう。
こちらも、動きやすいように、屋敷の護衛をしている時は金属の鎧なのに、今は皮の鎧だ。
さすがに、使用人さん達よりもしっかりとした物で、体を覆っている面積も広い。
結局のところ、クレアさんは以前森へ行った時と同じくだし、他の人達も似たようなものだ。
エッケンハルトさんも帯剣しているだけでなく、革の装備を身に付けてるのは珍しかったが、何よりもティルラちゃん。
さすがに体の小さいティルラちゃんに合う装備というのは、中々ないらしく、特注で作られてたらしい。
子供用となるから、それも仕方ないか。
最後にアンネさんの事……。
あれだけ縦ロールを自慢そうにしていたうえ、リーザに気に入られるため、蝶々結びにまでしたのに、今はストレートにしている。
森へ行くのだから当然とも言えるが……あのアンネさんが素直に縦ロールを止めたのが、ちょっとした衝撃だった。
いや、完全に縦ロールをなくしているわけじゃないんだけどな。
縦ロールにしている状態でも長すぎるくらいの髪だったアンネさんは、ストレートにしたら足元までの長さらしく、後頭部で何重かにとぐろを巻くようにまとめて、さらにポニーテールをして、ようやく肩口までの長さに落ち着いてる。
そこから、ポニーにしている部分の一部をロールさせていて、意地でもロールを止めないという強い意志を感じる……というのは、どうでもいい事か。
さすがにそろそろリーザも慣れて来たのか、ロールの先っぽを見てももう、刺さりそうなんて、怖がる事はなかった。
「パパ―、ママ速いね!」
「あぁ、そうだな」
「キャゥ!」
「ワフッワフッ!」
皆の恰好やらを考えて、物思いにふけっていた俺を、リーザの楽しそうな声が引き戻してくれる。
シェリーも風受けて楽しそうに鳴き、レオは誇らしそうに声を出しながら走っている。
いつの間にか、先に行ったはずの馬車に追いつくどころか、追い抜いてしまったみたいで、方向転換をして、移動する集団の周囲を回るように走っていた。
……これで、森へ付くまでに疲れたりしないんだから、レオはすごいなぁ。
ランジ村へ行く時はもっと長い距離を移動したし、速度も出してたから、レオにとっては準備運動程度なのかもしれないなぁ……。
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