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第394話 リーザに疑いがかかっているようでした
第394話 リーザに疑いがかかっているようでした
「先程、ここ数日と言いましたが……少々言いにくい事ではあるのですが……」
そこまで言って、一旦口をつぐむセバスチャンさん。
説明好きのセバスチャンさんですら、言い淀む事って、どんな事なんだ……?
「その……厨房での盗み食いが行われていたのは、リーザ様が屋敷へ来てからなのです。タクミ様と旦那様が連れ帰った日より、連日続けられております」
「リーザが……疑われてるのですか?」
「そうなります。使用人達は、そのような事をしておらず、クレアお嬢様達はそうする理由がありません。お腹が空いたなら、誰かに頼めば良いのですから」
「……確かに」
使用人さん達は、昼夜問わず交代で屋敷内にいるから、誰かに頼めば食べる物くらいはちゃんと用意してくれるはずだ。
わざわざ厨房に無断で入り込んで、盗み食いをする理由がない。
使用人さん達の方は、セバスチャンさんがしっかり管理して、盗み食いを行っていない事を確認しているようだしな。
そうなると、一番疑いやすいのがリーザになるって事か……。
セバスチャンさんの言う通りなら、盗み食いが始まったのはリーザが来てから。
それに、リーザは屋敷の人とまだ完全に馴染んでないから、お腹が空いた時、誰かに頼んで用意してもらうとは考えないだろう。
状況的には、確かに一番疑いやすい。
多分、ヘレーナさんが俺に言いにくそうにしてい理由は、リーザが疑われそうになっているからなんだろうな。
「でも、リーザがそんな事をしていたら、俺やレオが気付くはずです。同じ部屋で寝ているんですから」
「そうです。状況的に疑わしいと言うだけで、リーザ様がやったとは、誰も考えてはいません。タクミ様もそうですが、あのレオ様が気付かないはずがないですからな」
リーザが盗み食いをしたのであれば、一緒に寝ている俺やレオが一番に気付くだろう。
まぁ、俺はリーザがベッドから降りて、レオに包まれるようにして寝たりするのに気付かなかったから、説得力はないだろうが、レオは別だ。
森でもそうだったが、いくら寝てても周囲の動きには敏感で、オークが近づいて来るのには誰よりも早く気づいていた。
そんなレオが、屋敷内で安全だと気を緩めて寝ていたとしても、同じ部屋からリーザが出て行く事に気付かないとは思わない。
それはセバスチャンさん達もわかっているらしく、リーザが犯人だとまでは考えていないようだ。
「……その、一つだけ不可解な事があるのです」
「不可解な事?」
セバスチャンさんと話している横で、難しい顔をしていたヘレーナさんが話し始める。
不可解な事とは何だろう……それがリーザに繋がる何かがあるのか?
「連日盗み食いが行われてる事で、私達は料理人や他の使用人達も含めて、警戒をしていました。誰かが侵入して来るかを確認するため、厨房を見張っていたのです。もちろん、何者が相手かわからないため、フィリップさん達護衛の方々にも協力をしてもらいました」
「それだけ厳重に見張っていても、盗み食いはされたんですか?」
「はい。どれだけ見張っていても、犯人は姿を見せず、気付いた時には食料が減っているのです……」
ヘレーナさんや、メイドさん、執事さん達だけであれば、そういった事が専門ではないため、見張りを掻い潜る事はできるのかもしれない。
そこへさらに、フィリップさん達護衛さんを加えた事で、侵入する事はさらに難しくなったはずだ。
なのに、見張っている人達の誰にも気付かれず、厨房に入って盗み食いを成し遂げているというのは、どういう事なのか……。
「その……姿が見えない魔物とか?」
「通常では人の目には見えない魔物、という者もいるようですが……この辺りにいるとの確認はされておりません」
見えない魔物って、いるんだ……。
まぁ、この辺りにはいないって事だし、そんな魔物がわざわざ盗み食いをするだけってのもおかしな話だから、違うんだろうが。
誰も襲われたりしてないみたいだしな。
まさか、わざわざ本来いないはずの魔物が来て、人を襲う事もせず、食料だけを食べるなんて事は……あり得ないだろう。
「他に何か、手掛かりのようなものはないんですか?」
「それが……盗み食いをされた後に、何者かの毛が落ちていたのです」
「何者かの……?」
「はい。人の毛ではありません。恐らく、動物の毛だと思うのですが……」
「もしかして、それでリーザへの疑いが強まったとか?」
「そうなりますな。その毛を発見した時には、見張っていた者達に踏まれ、黒く汚れてしまっていたのですが……髪の毛ではない以上、獣か魔物の毛となります」
獣か魔物の毛……魔物が入り込んだという事が否定されるのなら、残るは獣。
そうなると、可能性があるのはレオとシェリー、それからリーザだ。
レオは体が大きいから、誰にも気付かれずに侵入する事は不可能だろう。
シェリーは、夜はクレアさんと一緒にいるし、意思疎通ができるのだから、お腹が減ったら食べ物を用意してもらえるだろうしな。
残るはリーザだ。
リーザは、人間と同じような髪の毛はあるが、耳や尻尾は獣人らしく別の毛が生えている。
色は髪と同じ何だが、質感が違うんだよな。
そこで、発見した毛というのが、人間とは別の毛で、もしかしたらリーザの毛ではないか……と考えられるわけか。
うぅむ……状況的には本当に、リーザを疑うためのようにできてるな……。
でも、さっき言ったように、レオが気付かないわけないし、レオが盗み食いを許すような事をするとは思えない。
昔散々叱ったからなぁ……勝手に物を食べるような事はしない。
「状況だけを考えると、リーザしか考えられませんね……誰にも見つからずに、という事ができるかどうかはさておいて」
「はい。リーザ様にそのような技術があるかはわかりませんが、候補として挙がってしまいます。ですが、レオ様がいますし、リーザ様もそのような事をするようには見えません。タクミ様達の傍を離れたがらないくらいですからな。なので、こうして相談をしている次第でございます」
「そうですか……」
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