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第331話 簡易薬草畑に異変が起こっていました
第331話 簡易薬草畑に異変が起こっていました
「ワフ?」
「お、レオ」
「ママ!」
「レオ様?」
魔法の組み合わせに関する説明を、クレアさんから受けていると、離れた場所でお座りして待っていたレオが、終わった? とでも言うように、シェリーを頭に乗せたまま、近付いて来て鳴いた。
退屈だったのかな?
「よしよし……クレアさん、今日の所は終わりですかね?」
「そうですね、終わりにしましょう。レオ様にも随分、退屈な思いをさせてしまったようです。それに、タクミさんは魔法の組み合わせも、すぐに成功させてしまったので……私にはもう何も教える事がありませんから」
「ワフワフ」
レオを撫でながらクレアさんに聞くと、もう全部教えたと、苦笑しながら答えるクレアさん。
魔法の講義はここまでのようだ。
ちなみにリーザは、頭の上に乗ってるシェリーを羨ましそう見ながら、レオを撫でてる。
頭の上に乗りたかったのか、リーザ……お願いしたら、乗せてくれるとは思うが、頭の上はサイズ的にどうだろう?
シェリーがあまり大きくないから、乗れてるしなぁ。
「ワフワフ、ワフ?」
「ん、どうしたレオ?」
「何か、気になる事でもありましたか?」
リーザの事を考えつつ、レオの体を撫でていたら、俺の服を前足の爪に軽くひっかけて、俺の気を引く。
何か俺に伝えたい事があるようだが、どうしたんだろう。
そんなレオの様子に、クレアさんも首を傾げてる。
「ワフ、ワフ!」
「あぁ……あれかぁ……」
「目には入っていたんですけどね……」
「ん?」
レオが、俺達の気を引けた後に、鼻先を向けて示したのは、今朝俺が作った薬草。
摘み取らずに、通常の栽培ができるかを試すため、そのままにして残してた物だな。
悩むようにしながら、薬草の方へと視線を向ける俺とクレアさん。
リーザは、何の事かわかってないみたいだ。
摘み取る時の薬草を見てなければ、不思議に思うのも無理はないだろうな。
俺は当然ながら、レオやクレアさんは、俺が『雑草栽培』をする所を見ていて、どの程度の成長で止めてるかを見てるから、おかしい事に気付いたんだろうし。
「ワフ?」
「ん~、どういう事なんだろうな?」
「とにかく、私はセバスチャンを呼んで来ますね」
「あ、すみません。お願いします」
どういう事? と言うように首を傾げながら俺を見るレオ。
そうやって見られても、俺には何とも説明のしようがない。
クレアさんは、気にしないようにして魔法の講義をしてくれてたんだろうが、一度気にしてしまったらもう好奇心は止められない……とばかりに、セバスチャンさんがいる方へ駆けて行った。
あっちは、何故かエッケンハルトさんが持つ剣に、ティルラちゃんが両手を当てたりしてるな……何してるんだろう……?
あそこから、静止役のセバスチャンさんを、連れて来てもいいのかどうか悩むところだ。
ともかく、俺が『雑草栽培』を使って薬草を栽培した場所。
朝の時点で日に当たっている場所と、日陰になっている場所それぞれに、同じ種類の薬草を生やして、必要な物を摘み取って、残りはそのままにしていた。
今も、日に当たる場所、日陰の場所は変わっていない。
朝から昼食を食べたり、魔法の講義だとかで、5、6時間以上経っているはずだが、それだけの時間であんな事になるなんて……。
「タクミさん、戻りました」
「クレアお嬢様に呼ばれましたが……どうされましたか?」
「セバスチャンさん……エッケンハルトさん達も来たんですか?」
「うむ。タクミ殿の薬草が大変な事に、と聞いたら遊んでられんからな」
「父様と遊ぶのは楽しかったです!」
クレアさんはセバスチャンさんを連れて来てくれたが、一緒にエッケンハルトさんやティルラちゃんも来たようだ。
それはともかく、二人共、遊びって……魔法の講義じゃなかったのか?
まぁ、楽しかったのなら言う事はないけど……。
ともかく、薬草の事だ。
エッケンハルトさんやセバスチャンさん達は、俺やクレアさんとは違い、薬草の異変には気付いていなかったようだ。
俺達がいる方に薬草があり、そこから離れてたし、俺達がいるから薬草が見えなかったんだろうな。
「えぇと……エッケンハルトさん、セバスチャンさん……あれを」
「これは……一体何があったのですか?」
「なんという……」
エッケンハルトさんとセバスチャンさんに、薬草を生やしておいた場所を示して見てもらう。
二人は一瞬絶句して、驚きの表情になった。
ちなみに、ティルラちゃんはこちらに来てすぐ、レオに乗せてもらい、リーザと一緒に背中に乗ってる。
ティルラちゃんとリーザは、薬草の方にはあまり興味がないようだ。
レオは、俺の能力がした事だから気になってるのか、顔はずっと薬草の方へと向いている。
一部を除いて、皆が注目している薬草……今は簡易薬草畑とでも言うかな?
簡易薬草畑では、今朝俺が『雑草栽培』で作った薬草が、その時よりも大きくなり、その周囲には、薬草と思われる植物の芽が大量に出て来ていた。
大きくなった薬草が種をばら撒いて、増えた? いや、種だとこんなに早く増えるのもおかしい。
株分けのようにして増えた? でもあれは、人間の手を入れてできる事だったと思う。
自然に成長して、自然に株分けができるとは思えない……そもそも、芽はまだ十分に育っておらず、地面から顔を出した程度だ。
クレアさんも俺も、この様子は見てわかっていたのだが、魔法の講義に集中するため……というより、何か触れてはいけない物を見たような気分で、レオが主張するまで気にしないようにしていた。
「えぇっと、セバスチャンさん……どういう事でしょう?」
困った時のセバスチャンさん頼み!
いや、セバスチャンさんが、全てを知っているとは思わないが、知識が豊富だから、何かしらの予測を立ててくれるだろう……きっと。
「うぅむ……そうですね……もしかしたら、『雑草栽培』で作られた薬草だから、でしょうか?」
「『雑草栽培』で……」
「そもそもに、あのように薬草が急激に数を増やすと言うのは、聞いた事がありません。そこで考えられるのは、『雑草栽培』しかありません。『雑草栽培』で作られた薬草は、何かしら特別な物を持っているのかもしれません」
「という事はだ、セバスチャン。あの増えた薬草は、普通の物ではないと?」
「そこまではさすがに……まだ成長途中のようですので、他の薬草との違いはまだわかりません」
さすがにセバスチャンさんでも、増えた方の薬草が普通と違うのかはわからないようだ。
まだ成長途中だし、あの薬草を採取して詳しく調べたわけでもないのだから、当然か。
ともかく、あの急激な増殖は、『雑草栽培』が原因と見て間違いないようだ。
植物の成長って、数時間で芽が出るような物ではないはずだし、そう考えるのが自然だろうなぁ。
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