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第292話 少女を孤児院へ連れて行きました
第292話 少女を孤児院へ連れて行きました
「び、びっくりしたの……」
「ワ、ワフ! キューン、キューン……」
「あー、これはさらに洗う必要が出たな」
「そうですね……レオ、鼻を撫でられ続けてムズムズしたんだな……」
べとべとになって呆然としている少女に気付いたレオが、済まなさそうに顔を舐める。
……自分の鼻水や唾で汚れた女の子を舐めるって……とは思ったが、レオなりの謝罪なのだろう。
エッケンハルトさんと顔を見合わせ、苦笑しながら近づいて行った。
「そう言えば、名前は?」
「えっと……リーザです!」
「リーザね。いくつなのかな?」
「んー、7歳……だと思います」
「思います? 自分の年齢がはっきりわからないの?」
リーザと名乗る少女を連れて、湯浴みをするため孤児院へ向かう途中、レオの背中に乗って首に抱き着いてるリーザと話す。
最初はレオに怯えてたリーザだが、接しているうちにレオに慣れてくれたようで、今では信頼しきってるように抱き着いている。
一番の原因は、レオがクシャミをぶっかけた後、済まなそうにしている顔を見たかららしい。
……あの後、笑い始めたリーザはべとべとのままレオに抱き着いてた。
獣人だから、人間とは信頼する基準が違うのかもしれない……と思ったが、それは差別っぽかったので考えるのは止めておいた。
「どこでいつ生まれたのか、わからないんです……気付いたら、お爺ちゃんと一緒で……お爺ちゃんが言うには、私を拾った時は、生まれてそんなに経ってなかったらしいです……」
「……捨て子……か。拾われて7年って事なんだろうな。……スラムではよくある事と聞いた事はあるし、そのための孤児院でもあるのだが……むぅ……」
俺と話すリーザの言葉を聞いて、俺の横でエッケンハルトさんが難しい顔をして呟く。
統治する側としては、難しい問題だし、頭を悩ませる事なんだろう。
「……そのお爺ちゃんっていうのは、どうしたの?」
「……ちょっと前に死んじゃいました……」
「ごめん、辛い事を思い出させちゃったかな?」
「ううん。いいんです。優しいお爺ちゃんだったから……忘れないようにしないといけません」
「……そう、強いね」
思い出して目に涙が溢れてしまうリーザを見る。
本当にその育ててくれたお爺ちゃんが好きだったんだろう。
辛い事を忘れず、前を向こうとするリーザは、素直に強い子だと思った。
「でも、どうしてイジメられてたの?」
「お爺ちゃんが死んでから、周りの皆からイジメられるようになったんです……理由は……多分、私が獣人だから……」
「その爺さんが、スラムに住む者達からの防波堤のようになっていたんだろうな……早く気づいていれば、こんな不遇な目に遭わせる事は無かったのだが……」
「……獣人だからってだけでイジメられるんですか?」
リーザのお爺ちゃんがいたから、今までイジメられなかったのか……でも、何故こんな小さな子供がイジメられないといけないんだろう……。
獣人というだけで、そういう対象になる事に、俺は理解ができない。
むしろ、日本だと一部の人に可愛いとちやほやされそうだけどなぁ……。
幼さが目立つ顔に、尻尾や耳が付いてるとか……。
いや、俺はそんな趣味じゃないけどな?
「まぁ、そのあたりは後で説明しよう。今は、この子を綺麗にするのが先決だ」
「……わかりました」
難しい顔をしているエッケンハルトさんにそう言われ、俺は孤児院への道のりを急ぐ事にした。
リーザは、汚れてる事をあまり気にして無さそうだったが、子供を傷や土で汚れてる姿のままにはしておけない。
……今汚れてべとべとになっているのは、レオのせいなんだけどな。
大量の唾や鼻水で、土汚れが多少流れたのは……良い事なのか、悪い事なのか……微妙だな。
「……でも、イジメられててもよく泣かなかったね?」
「……痛くて泣きたかったですけど……でも、お爺ちゃんが死んでから、いっぱい泣きましたから。お爺ちゃんのためにも、泣かずに耐えて生きて行こうって思ったんです」
「……そう……偉いね……」
今も、お爺ちゃんの事を思い出して、目がウルウルしてはいるけど、涙を流すまでにはなっていない。
必死に涙を流さないように耐えてるんだろう。
子供にここまで考えさせるなんて……と、イジメていた人達に怒りが沸いたが、それを表には出さないように気を付けた。
後でいっぱい、よく頑張ったと撫でてあげよう……今は、レオに乗ってるから手が届かないしな。
「お久しぶりです。アンナさんは今、いますか?」
「はい? タクミ様!? それにレオ様も! お久しぶりでございます! 今、院長を呼んで参ります!」
「ワフ」
「お願いします」
孤児院に到着し、掃除をしていた女性に話し掛ける。
以前来た時も、掃除していた人だったな……いつもしているのかな?
罰ではないだろうが、多分、それがあの人のここでの仕事なんだろう。
「お待たせしました。タクミ様、本日はどのようなご用件で?」
「アンナさん、お久しぶりです。今日はその……ちょっとお風呂を借りたくてですね……」
「お風呂ですか? まぁ、その子が!?」
「はい。すみませんが、借りられますか?」
掃除をしていた女性に連れられ、孤児院の中からアンナさんが出て来た。
久しぶりの挨拶をし、お風呂を借りたいと伝え、レオに抱き着いてるリーザを見せる。
リーザを見たアンナさんは、汚れているその姿を見て理解したようだ。
レオに乗って首に抱き着いてるリーザの方は、知らない場所に連れて来られて、キョトンとしている。
怯えたりしないのは、アンナさん達に敵意がないとわかっているからかもしれない。
「その子供は一体……それに獣人ですか……。いえ、わかりました。すぐに湯浴みの用意を致します」
「すみません、お願いします」
「畏まりました。貴女、お願いしますね」
「はい、すぐに!」
「ワフワフ?」
「ん? あぁ、そうだな。すみません、院長。子供達は元気ですか?」
「え、はい。今も元気に中庭で遊んでいますが……?」
「レオがここにいる子供達と遊びたいようなので……大丈夫ですか?」
「はい、それはもう! 子供達もきっと喜びます!」
リーザを見て、すぐに獣人とわかったアンナさんは、少し難しい顔をしたが、すぐにお風呂の準備をしてくれるみたいだ。
掃除をしていた女性に指示を出し、孤児院の中へ向かわせてくれた。
それを見送った後、レオが子供達を気にするように言っていたので、アンナさんい聞いて遊ばせても良いかを聞いた。
以前来た時も、子供達と一緒に遊んでたから、喜んでもらえそうだ。
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