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第254話 栄養を含む薬草の扱いを考えました
第254話 栄養を含む薬草の扱いを考えました
「滋養強壮……興味深い考え方ですな」
「はい。魔力を活性化させる物……と考えると、色々と利用法がありそうです」
「本来魔力のためでは無いんですけどね……」
魔力に作用するなんて、一切考えて無かったからなぁ。
本来は、体に必要な栄養を行き渡らせる……という事を考えてた。
まぁ、健康になって体に害がないのであれば良いか。
「それでは、滋養強壮の薬草はあれでよろしいでしょう。……まだ別の薬草があるようですが?」
「はい。これらは、体に必要な栄養素となる薬草……という目的で栽培しました。滋養強壮を促しても、必要な栄養が足りていなければ、効果は出ませんからね」
「成る程……この薬草で栄養を摂取し、先程の薬草で体に行き渡らせる……という考えですな?」
「はい」
滋養強壮の薬草とは別に作っていた、栄養の事を考えて栽培した薬草を、セバスチャンさんとヘレーナさんに見せる。
二人はその薬草を興味深そうに見ている。
「しかし、複数の薬草ですか……これは、先程の薬草とは別のワインに?」
「いえ、できれば同じワインに入れたいと考えてます。一つのワインで栄養と滋養強壮、体を健康にするものができれば……と考えまして」
「一度に複数……それができれば、素晴らしいワインができそうですな。ですが……」
「先程の薬草に加えて、さらに複数の薬草ですか……」
「味や効果など、色々問題も出て来そうですな……」
俺が新たに見せた薬草は3種類。
『雑草栽培』の事を信じるなら、タンパク質の薬草と、ビタミンの薬草、あとは鉄分を含んだ薬草になってるはずだ。
栄養素を分析する物なんて、この世界にあるとは思えないから、実際にその成分があるのかどうかを調べる事はできない。
栄養を摂取した時の効果なんて、滋養強壮以上に実感しづらいからなぁ。
しかし、セバスチャンさんとヘレーナさんが言っているのは、栄養の事では無く薬草が複数ある事だろう。
滋養強壮薬草を混ぜて、さらに複数の薬草を混ぜても、ワインとして大丈夫か……と考えてるんだろうな。
ビタミンの薬草なんて、柑橘系の匂いや酸っぱそうな感じがするから、尚更ワインの味を別の物にしそうだ。
甘みの強いワインだから、酸っぱくなるのはちょっとなぁ……好みでそっちの方が良い、という人はいるかもしれないが。
「タクミ様、これらの薬草を調合し、一つの物にはできないでしょうか?」
「調合、ですか?」
「はい。いくつかの薬草を混ぜ、一つの薬とする事です」
そういえば、ミリナちゃんと勉強している時、セバスチャンさんから借りた本にも書いてあった。
調合をする事で、薬草一つよりも効果の大きい物を作ったり、複数の効果を持つ薬にする事だ。
変な混ぜ方をすると、人間に害を成す毒になってしまったり、全く効果の出ない物になったりする事もあるため、調合する際は注意する事……とも書いてあった。
調合して液体にした薬を、さらに複数混ぜた時、魔力を含む物もあるため失敗すると爆発……なんて危険な事もあるらしい。
まぁ、今回は薬草と薬草だから、多分大丈夫だろうけど……。
「ですが、調合と言われても……どうしたら良いのか……」
「お貸しした本に書かれているはずですが?」
「確かに書かれてましたね。でも、上手くできるかどうか……」
「初めてなのですから、すぐに上手くいかなくても良いのですよ。何事も、練習あっての事です」
「……そう、ですね」
「タクミ様、私が色んな料理を作り、皆様に提供していますが……それにも練習が必要なのですよ?」
「それは確かに……」
調合と聞いて不安になったが、セバスチャンさんの言う通り、練習をして上手くなって行けば良いんだと思い直す。
ヘレーナさんも、いつも美味しい料理を作ってくれてるが、それにも様々な努力があったんだろ事は想像に難くない。
幸い、今回用意した薬草は、栄養があるだけで特別な効果のある薬草では無いので、調合を失敗しても危険な事にはならないだろうしな。
まぁ……調合の成功や失敗をどう判断するか……というのが難しそうだけど。
「では、ミリナさんと一緒に進めてみてはどうでしょう?」
「ミリナちゃんとですか?」
「はい。ミリナさんは、タクミ様と一緒に知識を学んでいる最中です。きっと、タクミ様の助けになってくれると思いますよ?」
「そう、ですね。わかりました。ミリナちゃんに聞いて、承諾してもらえれば一緒に調合を試してみます」
「はい、お願いしますね」
「でも、調合をした物が、成功か失敗か……という判断はどうするんですか?」
「それには、イザベルの店で魔法具を買って参りましょう」
「イザベルさんの店で、ですか?」
イザベルさんの店は魔法具商店だから、魔法具を売っている。
けど、それが調合の成否を確認するために必要なのだろうか?
もしかして、薬の調合を判定するような魔法具でもあるのか?
「先程の、滋養強壮……でしたかな。あの薬草の効果を試した時、栄養という物は魔力に関係する可能性が高い事がわかりました。魔法具は様々な物があるので、中には魔力に作用する栄養という物を調べる物もあるのではないかと……」
「成る程……あってもおかしくはない、ですかね」
「イザベルに聞いて、あるようならその魔法具を購入。無ければまた他の方法を考えましょう。まずは、調合を、ですな」
「はい、わかりました」
魔力に作用するのなら、魔法具で確認する事ができるかもしれない、というセバスチャンさんの言葉は確かにそうだと思う。
栄養を分析する物がなくとも、魔力に関する事なら、こっちの世界には色々あるだろうしな。
とりあえず、セバスチャンさんの言う通り、まずは調合をしてみよう。
成否はともかく、それができなければ確認する事もできないのだから。
「タクミ様、調合の前にまずは味の方を……」
「あぁ、そうですね。それを確認しておかないと」
「ほっほっほ、確かにそうですな。味の確認をしておかないと、調合した時に味が変わっているかもわかりませんからな」
ヘレーナさんの言葉で、味も大事だという事を思い出す。
栄養素的に、このままでは使えなさそうだ……というのを知ってる俺はともかく、セバスチャンさんとヘレーナさんはその事を知らない。
それに、俺も実際どんな味になってるのか、興味はあるからな。
……まぁ、美味しいという事は無いだろうけども。
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