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第230話 責任者の男と話を始めました
第230話 責任者の男と話を始めました
「失礼します」
「……失礼します」
セバスチャンさんに習って、俺も一緒に椅子へ座る。
「それで……どのような物をお探しでしょうか?」
「そうですな……最近、街では疫病が流行っているようです。それに効く薬を、まず見せてもらえますか? 我々が住んでいる場所は別なのですが、そこまで疫病が広まった場合に備えておきたいのです。商売の基本は、先物買いですからな」
「成る程成る程……お客様はお目が高い! 私共は、疫病の広がりをいち早く察知し、それを治すための薬を用意しております!」
男は重そうなお腹でえっちらおっちら動いて、右側の棚へ。
そこから薄紫の液体が入った瓶を持って、俺達のいるテーブルへと置いた。
……感覚強化のおかげで、男が疫病……と聞いた時に頬がピクリとしたのを見逃さない。
「こちらはとある薬草を漬け込んだ薬でしてな。これを一口飲むと、たちどころに病が治る……という素晴らしい薬でございます!」
「ほぉ……成る程……いかがですか?」
「ふむ……中々良い物のようですね」
男の説明を聞きながら、セバスチャンさんは怪しげな液体が入った瓶を俺に勧める。
俺はその瓶を手に取り、中の液体を観察する振りをしながら、良い物だと鑑定する……ように見せる。
「そうでしょう、そうでしょう! 私共の店では、このように良質な薬を売っております!」
俺が良い物、と言った時に一瞬だけ目を細めてニヤリとしたのも、勿論見逃さない。
「それでは他の物を……」
セバスチャンさんが促し、いくつかの薬や薬草を見せてもらう。
それのどれもが、怪しげな色をしていたり、薄めてあるのがはっきりわかる物だったりだ。
悪い物に至っては、薬草がほとんど枯れている状態の物もあった。
……男の説明では、この状態が一番薬効がある状態との事だが、決してそんな事はない。
何故俺がわかるのかというと、カレスさんの店に卸す薬草の中で、作った事があるからだ。
『雑草栽培』で栽培し、最もいい状態にした時は、決して枯れそうな状態ではなく、瑞々しい状態だったからな。
「ふむ……どうですかな?」
「そうですね、全て素晴らしい物だったと思います」
セバスチャンさんに問いかけられ、俺は見せられた薬草や薬を褒めるように言う。
あまり嘘とか得意じゃないんだけどなぁ……ちょっと胃が重いように感じるのは、無理に嘘を言っているからか。
……表情とか、笑顔のつもりだが……引きつってなければ良いんだが。
「わかりました……それでは、ウードさん。これらの薬草や薬を、全て公爵家に卸すよう、契約できますかな?」
「こ、こ、公爵家ですか!?」
セバスチャンさんが出した公爵家、という単語に驚く男。
まぁ、突然言われたら誰だって驚くか。
「はい。実は、私共は公爵家の使いの者でしてな? 聞くところによると、伯爵様との繋がりもあるとか……そこで公爵様は、評判が良い事と、伯爵様への繋がりを求めて……というわけなのです」
「そ、そうですか。畏まりました。公爵家との繋がり、伯爵様も大層お喜びになる事でしょう! ……どこかで聞いた事があると思ったら、公爵の息がかかった執事だったか……しかし、これはチャンスだ」
後半ぼそりと、小さく呟いた言葉は、やはり聞き逃さない。
少しだけ警戒されてしまったようだが、伯爵との繋がりだとか、大量に薬草を売りつけるチャンスという事を考えて、その警戒はすぐに消えたようだ。
「それでは、すぐに契約を交わしましょう! どの薬になさいますか?」
「ウードさん、落ち着いて下さい。まずはゆっくりと薬を選びませんとな」
「そ、そうでしたね。ははは、私とした事が、大口の契約で気が逸ってしまったようです。申し訳ありません」
「ほほほ、商人としては、そういう事に積極的なのは悪い事ではありませんよ」
公爵、という事への警戒か、それとも大量に薬を売りつける事のできるチャンスだと思ったのか……おそらく後者だろうが、男は焦ったように契約の話を持ち出して、まとめようとした。
それをセバスチャンさんが落ち着かせるが、商人として……落ち着いて契約に対応しなければいけないだろう……と思うのは俺だけなのだろうか?
まぁ、そんな事はどうでも良いか。
セバスチャンさんの視線が鋭くなっているので、そろそろかな……?
「ウードさん、契約の話の前に、公爵様から承った物がございましてな?」
「はぁ……公爵様から。それはどのような?」
「こちらになります」
「そ、それは!?」
セバスチャンさんが取り出した物を、テーブルの上に二つ置く。
それは、屋敷で用意されたワインの入った瓶だった。
「公爵様は、領内で評判の良い薬草や薬を売り、領民へ貢献している事に、大層お喜びでしてな。同じ領内で作られた美味しいワインを……との事です」
公爵家が、ただの店にワインを……というのは少し苦しい理由のようにも聞こえたが、ワインに目が釘付けになっている男は、セバスチャンさんの言う事を、半分も理解していないんじゃないだろうか?
……これなら、打ち合わせ通りに進みそうだな。
「すみませんが、グラスを人数分用意してもらえますかな? 契約締結の前祝として、乾杯しましょう。公爵様も、できればすぐに飲んで味を確かめて欲しいと言われておりましたから」
「し、し、しかし……そのワインは……」
「ワインがどうなされましたか? このワインは公爵様が直々に選別なさった物。味も品質も、最上級の物ですが……?」
「そ、そうですね……わかりました。おい、人数分のグラスを!」
「へい!」
セバスチャンさんが、ここぞとばかりに畳みかけ、公爵様というのを強調して伝える。
さすがに公爵……エッケンハルトさんからと言われると、断れないのか、男は躊躇いながらも、奥にいる先程店番をしていた男に声を掛け、グラスを用意させた。
「セバスチャンさん、上手くいきそうですね」
「そうですな。旦那様から、という事のおかしさに気付かない……やはりワインの事は知っているのっでしょうね」
グラスを用意されるまで少しの間、小声でセバスチャンさんと話す。
感覚強化の薬草のおかげで、ほとんど声に出してないような声でも、お互い話す事ができる。
どうやら、セバスチャンさんは、苦しい理由にしたのはわざとだったようだ。
それにすら気付かない男は、ワインの事を知っているから、それを飲まされるという流れの不自然さに気付かない様子だ。
貴族がほとんど面識がなく、贔屓にしているわけでもない店にわざわざワインを用意して、しかもすぐに飲ませようなんて、する事はないだろうになぁ。
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