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第217話 レオが風呂嫌いな理由を聞きました
第217話 レオが風呂嫌いな理由を聞きました
「どうして風呂が嫌いなんだ? 川では泳いでたりしただろう? 暖かいお湯か? それとも目にお湯や洗剤が入るのが嫌なのか?」
「ワフゥ……ワフワフ、ワフゥワウ、ワーウ」
風呂嫌いな理由を聞いてみると、レオは饒舌と言える程連続して鳴き始め、俺に理由を教えてくれた。
えーと……暖かいお湯が不自然で嫌い、勝手にお湯を掛けられるから目に入るのも嫌い、自分の匂いが取れて行くのも嫌い……か……成る程。
「目に入ってしまうのは仕方ないけど、俺のせいだな、すまん。でも温かいお湯は駄目なのか?」
「ワフ! ワフ!」
あんなの自然の水じゃない? そりゃまぁ温めてるから、自然に溢れる水とは違うけど……温泉とかどうなんだろう。
一応あれは人間が手を加える事なく、温かいお湯なんだが……。
まぁ、それよりも、これなら少しは改善できるか。
「それじゃあ、そうだな……レオに掛けるのはお湯を止めて水にする。目に入らないようにするために……大きな桶を用意してもらうか……それで自分の顔を付けて洗うってのはどうだ?」
「ワフゥ……ワフワフ」
それなら何とか我慢できそう……か。
これですぐにレオの風呂嫌いが治るわけじゃないと思うが、嫌がって風呂に入らないという事は避けられそうだ。
「ワフ……ワフ……ワフゥ」
「匂いが変わる? ……それはさすがに我慢してもらうしかないな」
「ワフゥ……」
石鹸なんかの洗剤を付けてしっかり洗わないと、こびりついた汚れは取れないからな……。
この世界にあるそれが、レオの毛に良いのかはわからないが、水で流すだけで取れない汚れをそのままにしておくよりはいいだろうと思う。
……犬って確か、石鹸の匂いとかあまり好きじゃないんだったか……嗅覚が鋭いレオが、自分の匂いが変わったり無くなるのを嫌がるのは、人間の俺にはわからないが、ここはさすがに我慢してもらうしかない。
一応、納得してくれたが、溜め息を吐いているレオを連れて部屋を出て風呂場へ向かった。
「よーし、レオ。水を流すぞー」
「ワフ」
要望通り、お湯では無く水でレオの体を流す。
レオの毛を通って流れて行く水は、表面に付いた軽い汚れを洗い流してくれる。
「……やっぱりかなり汚れてるな……」
流れて行く水を見ると、レオが汚れていたのがよくわかる。
水に砂埃が混じっていたり、一部黒くなっていたからな。
……もしかすると、倒した魔物の返り血とかもあるかもしれないな。
「さて、早いとこ終わらせないと……」
いつもならお湯だから良いのだが、今使っているのは水だ。
当然冷たいので、裸の俺が凍えてしまう。
風呂場だから他の部屋より暖かいとは言え、レオに水を掛けていると俺にもかかってしまう。
救いなのは、屋敷のある地域が、凍えるような寒い気候では無い事かな。
これで雪が降るくらいの気温だったら、寒くてとてもじゃないが水で洗う事はできなかっただろう。
「そういえば、この世界にも季節ってあるんだろうか?」
この世界に来てそれなりに経つ。
今の所寒くなったり暑くなったりせず、過ごしやすい気候だが、季節があるとしたら次に来るのは夏か冬か……。
日本で言う所の春のような清々しい気候だから、次は夏かな? と考えるが、ここは異世界。
春の次が冬であってもおかしくないかもしれない。
「まぁ、そんな事を今は気にしないで良いか。そのうちクレアさんかセバスチャンさんに聞いてみれば良いかな。よし、レオ、顔を洗い流して良いぞー」
「……」
考えている間に、レオの全身にしっかり石鹸を付けてやる。
顔まで泡まみれになったレオは、目や口を閉じたままなので声を出さない……目や口に入らないためだろうが、息も止めて無いか?
俺の声を聞いて顔を持ち上げ、ライラさんに用意してもらったレオ専用の大きな桶に顔を突っ込んだ。
この桶は、本来自分で風呂に入れない小さな子供を洗う時に使う桶らしい。
桶にお湯を溜めて、使用人の誰かがお世話をするための物との事だが、今はレオの顔を洗うのに役に立ってもらおう。
……自分で入れないような小さな子供は今、この屋敷にはいないしな。
「水を変えてっと。レオ、もう一回だ」
「ワフ」
ある程度石鹸を洗い流し、桶の水を変えてもう一度レオに顔を洗い流させる。
レオにとっては自分のペースで、目に水やお湯が入らないように調節できるので、いつもお風呂に入れる時よりも元気だ。
いつもは、何か死地に赴くような覚悟が垣間見える時があるからな……それと比べたら随分と気軽に見える。
……やっぱりレオに意見を聞いて良かったな。
日本にいた時は、こんな事は出来なかっただろうが。
「さて、あとは体を洗い流して……終わり、と」
「ワフー」
丹念にレオの体を洗い、ブラシも使ってしっかり汚れを落として終了。
心なしか、いつもより元気なレオは、思いっきり体を震わせて水気を飛ばす。
「おい、レオ……俺が近くにいる時は止めてくれと言っただろう……しかも水……クシュン!」
「ワフゥ……」
大きなレオの体が、勢いよく水気を飛ばせば当然近くにいる俺に降りかかる。
それまでも水がかかってしまう事はあったが、今は頭から大量の水を浴びたような状態だ。
体が冷えて思わずクシャミをした俺に、済まなさそうな表情をしたレオが体を寄せる。
……俺を温めようとしてくれてるのかもしれないが、今レオは水を浴びたばかりだから、冷たいんだからな?
「さっさと温まろう……レオ、もう終わったからあがっていいぞ」
「ワフゥ……ワフ」
早くお湯を掛けて体を温めないと、風邪を引いてしまうかもしれない。
薬草を扱って病を治す側の俺が、風邪を引いたなんて格好付かないからな。
明日はエッケンハルトさんも来るんだし、体調は万全にしておきたい。
レオに声を掛け、お湯をすくうために桶を持って湯船に近付く。
レオはとぼとぼと風呂場を出て行く。
ちなみに出入口は風呂場からだと押戸になっているから、器用に前足を使って開けていた。
「ワフー」
「……あら、レオ様だけなのですね。タクミ様はまだ中に?」
「ワフワフ」
脱衣場の方から、レオとライラさんの声が聞こえる。
レオが上がった後、ライラさんに濡れた毛を拭いてもらうために、外で待機してもらっていたからだろう。
自分で声を掛けたレオの声を聞きながら、お湯で体を流し、隅々まで洗ってから湯船に浸かった。
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