【大感謝!510万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第184話 違和感の正体がわかりました
第184話 違和感の正体がわかりました
「では、こちらが今回のお金になります」
「ありがとうございます。おい」
「へい」
ハンネスさんが、商談を終えて商人にお金を渡している。
それを受け取った商人は、もう一人いた男に中身を確かめさせた。
「……確かに、確認しましたぜ」
「そうですか……村長、ブドウの代金、確かに頂きました」
「はい。それでは、今回のブドウの方を……」
「ええ、すぐに運ばせましょう」
近くで見ると、商人の姿がよく見える。
商人はでっぷり太った体形でをしている。
カレスさんや、ラクトスの街で会った事のある商人と比べると、良い服を着ているような気がするな……遠い場所から来るのに、商人が上等な服を着るのだろうかという疑問はあるが……俺にはわからない理由があるのかもしれない。
商人の顔は、商談がまとまったからか、笑みを浮かべているが……俺にはその顔がすごく胡散臭く見えた。
一見すると、商談がまとまった事で笑っているようにも見えるが……何かを企んでいるような笑みに見えるな……。
もしかすると、感覚が鋭くなる薬草のおかげで、本来見えない物も見えてるのかもしれない……表情の細かい機微とかな。
「おい、例の物を。全部だ。何故かはわからんが、あれは効果が無かったらしい……持って来た奴全てを開放しろ」
「良いんですかい? あれは後で野良にするつもりじゃ……?」
「仕方があるまい。それとも、お前が自ら手を下すか?」
「いえ……わかりました……」
商人は、もう一人の男に指示を出す。
ハンネスさんに聞こえないよう、小声で話してる部分もあるが、俺には全て聞こえてる。
しかし……例の物って何だろう……?
馬車にはほとんどがオークと思われる気配で埋め尽くされている。
そこまで考えたところで、俺の勘のようなものが急に危険だと感じ始めた。
「ガラス球を仕掛けた商人……オーク……まさか!」
勘から来る推測だが、外れてくれる事を祈りながら俺は柵から離れる。
商人から言われた男が馬車へと駆けよるのと同時だ。
「何者だ!?」
「ハンネスさん、逃げて下さい!」
「タクミ様!?」
俺に気付いた商人が声を上げるが、それを無視して俺は馬車へと駆け寄る。
俺の行動に驚いたハンネスさん……だが今はそれに構っていられる余裕は無い。
「ここは危険です! とにかくすぐに逃げて下さい!」
そう叫んで、俺が飛び出した事に驚く馬車に近い男へと向かっていく。
途中で持って来ていた剣を鞘から抜き、男へと向ける。
「そこで止まれ!」
「くそっ!」
男に向かって剣を突き付けるが、人間相手に剣を使う事に慣れていない俺は、躊躇してしまう。
剣を脅しとして静止を呼び掛けるが、男はナイフを取り出し、俺の剣を弾いてしまう。
「くっ!」
「素人が……死にたいのか?」
俺の向けた剣が軽々とナイフで弾けた事に、男は俺が素人だと感じたようだ。
「おやおや、何をするのかと思えば……賊が村に紛れ込んでいたようですね。村長、これは問題ですよ?」
「……いや、しかし……」
商人は、俺の事を賊と呼び、ハンネスさんを問い詰めながらも俺に近づいて来る。
「何をしている。そんな賊に構っていないで、言われた事をこなせ」
「へい!」
商人は、俺と男の間に入りみながら、男に声を掛ける。
男はその言葉を聞いてすぐにまた馬車へと向かう。
「待て!」
「おやおや、人に剣を向ける物じゃないですよ。危ないですからね……しかし、賊にしては素人のように見えますね……」
剣を持って男を追いかけようとする俺の前に体を持って来て、商人は薄笑いを浮かべながら言って来る。
素人と言うか、今まで魔物を見た事はあるし、鍛錬で剣を振った事は幾度となくある。
だけど、人間に向けて本気で傷付けるために振るった事が無いからか、どうしても躊躇してしまう。
……日本に生まれて争い事に慣れて無いから……なのかもしれない。
「まぁ、素人でも、賊でもなんでも良いでしょう。もうすぐここには誰もいなくなるんですからね……」
「やめろ!」
「へへ、お前達……出番だぜ」
「「「ギュオォォォォ!」」」
商人の言葉に、俺は叫ぶが、何も出来ない俺の声なんて聞くはずがない。
男は馬車に近付き、次々と外側にある鎖のような物を外して行った。
それと共に、中でオークの叫び声が聞こえ、金属が落ちる音がする。
……恐らく、中でオークを繋いでいた鎖かなんかを、一斉に外したんだろう。
「さて、私達はここにいては危ないですからね……離れさせて頂きますよ」
薄ら笑いを浮かべた商人は、馬車を曳いていた馬に乗り、村から離れる。
馬車にいた男も別の馬に乗り、走り去って行く。
「くそ!」
「タクミ様!」
ハンネスさんが叫ぶが、俺はそれに答える余裕は無い。
本当なら、商人を追いかけたかったんだが……馬車から出て来た数十のオークに睨まれて、それも出来なかった。
「くっ! 仕方ない……ライトエレメンタル・シャイン!」
「ギュオォォォ!?」
すぐにセバスチャンさんに教えてもらっていた光の魔法を使う。
俺はレオと違って、こんな数のオークを相手に出来ない。
すぐさま逃げる事を考え、目を眩ませる事を思いついた。
幸い、辺りはほぼ完全に日が暮れており、光の魔法はまばゆい光を放ってオーク達の目を眩ませてくれた……セバスチャンさんの教えのおかげだ……ありがとうございます。
「ハンネスさん、逃げて下さい!」
「タクミ様! オークが!」
目がくらんで動きを止めているオーク達をそのままに、村の入り口で呆然としていたハンネスさん走り寄る。
「どうやらあの商人は、ブドウの代わりにオークを馬車に積んでいたようです。逃げないと襲われますよ!」
「……わかりました。すぐに村の皆に呼び掛けます! おい!」
「はい、村長!」
俺の声に頷いたハンネスさんは、ライ君の両親にすぐ声を掛け、それを聞いた二人は弾かれたように村の中へと駆け出した。
すぐに行動してくれて助かる。
「タクミ様はどうするんですか!?」
「俺は……なんとか皆が逃げるまでの時間を稼いでみます……ハンネスさんは皆を連れて逃げて下さい!」
オークの数は数十……正確な数はわからないが……俺一人でどこまで時間が稼げるかはわからない。
だけど、囮になって別の方向に逃げる事で、少しくらいは時間が稼げる……と思う。
こういう時、レオがいてくれたら……すぐにオークを倒してくれるんだろうけどな……。
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