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第70話 助けた魔物は瀕死の状態でした
第70話 助けた魔物は瀕死の状態でした
俺はレオの様子が気になったが、クレアさんは襲われてたと思われるフェンリルの方が気になっているようだ。
まぁ、レオが座ったまま動かないのが変と思ってるのが俺だけなんだろうけどな。
レオは俺とクレアさんから声を掛けられると、元気の無さそうな声を出し、そのまま顔を下に向けて鼻先を赤くなってる地面へ擦り付けるように動いた。
……いや……地面じゃないな……何かいる。
「レオ……それがフェンリルか……?」
「ワフ」
「これがフェンリル……」
「この森に本当にフェンリルがいたのですな」
レオが鼻先を擦り付けてる相手は、土色と赤色の混じった生き物だった。
レオと似ていて、多分犬や狼と同じなんだろう。
しかし、その大きさは中型犬程で、レオが銀色の毛で包むように座っているのと比べると随分小さい。
そういえば、フェンリルはシルバーフェンリルより小さいって言ってたっけ。
レオは時々こちらを見ながら、鼻先をそのフェンリルに擦り付け続けている。
「どうした……レオ」
「ワフ……ワフゥ」
レオからは元気の無い声。
「少し、良いですかな?」
セバスチャンさんが目を凝らすようにしてレオの前に出た。
俺もセバスチャンさんが前に出るのと同じタイミングでレオの横に行く。
クレアさんも隣について来た。
「……これは……酷い怪我ですな……」
「毛が土と同じ色だと思ってましたが、これは……」
「酷い……」
セバスチャンさんが怪我の具合を見るようにフェンリルに触れる。
レオはそれを見て鼻先を擦り付けるのを止めた。
俺とクレアさんは、そのフェンリルを見て勘違いに気付く。
フェンリルの毛色が土と同じ色だと思っていたが、実は違った。
怪我をしてるせいか、そこから血が流れ、トロルド達に攻撃されたため、土で汚れていたからそう見えたんだ。
所々、汚れていない場所もあって、そこからは綺麗な白い毛が見えた事から、本来は白くて綺麗な毛並み何だと思う。
「ワウ……」
レオはフェンリルを心配するように声を上げ、様子を見ているセバスチャンさんを見る。
「うぅむ……これは……」
「どのような具合なの、セバスチャン?」
「……少し、駆けつけるのが遅れたようです……今はまだ何とか生きていますが……長くはもたないでしょう……」
「……そんな……せっかくフェンリルを見つけたと思ったのに……」
「……」
「ワゥ……」
どうやら、怪我の具合はかなり悪いようだ。
トロルドにこっぴどくやられたんだろう。
よく見ると、後ろ脚の片方が折れて変な方向に曲がっていた。
あの巨体から繰り出される棍棒に当たったのかもしれない。
足が折れてるから、逃げることも出来ず、俺達が気配で発見した時感じた様に囲まれていたぶられていたんだろう……。
「ワウ……ワゥワゥ……」
「レオ……」
レオから切望の眼差し。
そしてお願いをする時によくやる声で鳴く。
どうやらレオはこのフェンリルを助けたいようだ。
「……何とかならないの?」
「……多少の知識はありますが、私は医者ではありません。しかし……これ程となると医者でも手の施しようがないのではと……」
クレアさんも何とかならないかとセバスチャンさんを問い詰めてるが、どうにもならないようだ。
フェンリルの怪我から流れる血は、今も尚出続けており、地面を濡らしている。
体に力が入らないのか、辛うじてまだ息はしているが体を動かす事も、声を上げる事もしない。
……さすがにこの姿を見たらな……オークやトロルドと同じ人間を襲う魔物とは言え……見た目が犬……狼で、レオに似ているせいか何とかしたいと思う。
でもな……俺は医者でも無ければ獣医でも無い。
……どうする事も出来ないんだ。
俺はこのままだと死んでしまうであろうフェンリルを見ながら唇を噛み締めた。
「……レオ様……タクミさん……どうにもならないんでしょうか……」
「……クレアお嬢様。ここまでの致命傷となると……もう……」
クレアさんもフェンリルを助けたいようで、俺とレオに懇願するような声を上げるが、セバスチャンさんから言われて悔しそうに眼を閉じた。
「……ワフゥ……クゥーン」
レオからも懇願するような声……。
それを聞いてさらに唇を噛み締める力が強くなる。
「俺達にはどうする事も出来んな……」
「魔物で、自然の摂理とはいえ……黙って見ているしか出来ないとは……」
フィリップさんとニコラさんまでもが悔しそう呟いている。
皆、このフェンリルを助けたいが、どうにも出来ない状況に顔を俯けた。
……ふと、自分の唇を噛み締める力を緩めた。
口の中に残ってる味。
……これはさっき食べた薬草の味。
水を飲んでないからまだ少しだけ口の中に残っていたんだろう。
その味を感じて思い付いた。
「……セバスチャンさん」
「……何でしょう、タクミさん」
「以前、俺が栽培したロエは怪我を一瞬で治す薬草でしたよね?」
「……はい……ロエは確かにそのような効果ですが……これ程の怪我となるともうロエでは……」
「いえ……ロエじゃないですよ」
ロエを参考に、違う薬草を作り出す!
致命傷であろうともたちどころに治す薬草。
味なんて考える余裕は無い。
ロエは患部に葉の中にあるゼリー状の部分を触れさせれば効果を出す。
それなら、そのロエと同じ使い方でいいから、とにかく効果の高い薬草を求めれば良いかもしれない。
「タクミさん?」
「タクミ様?」
クレアさんとセバスチャンさんの呼ぶ声が聞こえるが、俺はそれに構わず頭に思い浮かべた物を根付かせるために集中しながら手を地面に付く。
「……」
無言でそのまましばらく待つ。
他の皆も、俺が『雑草栽培』を使うんだとわかって何も言わずに見守ってくれる。
数秒後、いつもは無い小さな光が手と地面の間で放たれたと思った瞬間、ロエに似た形の白い葉っぱが伸びて来た。
20秒程だろうか、成長しきった1枚の葉っぱを摘み取り、俺はセバスチャンさんから渡されていたショートソードを抜く。
そして葉の表面部分を、リンゴの皮を剥くように剥ぎ取る。
処理の終わった葉っぱを持って、レオの近くで倒れ伏してるフェンリルへと近付いた。
「タクミさん……」
「ワゥ……」
「……きっと、大丈夫ですよ」
固唾を飲んで見守る皆の中から、クレアさんとレオから声を掛けられたが、大丈夫とだけ言って俺はその薬草を、倒れてるフェンリルの怪我部分に触れさせた。
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