第24話 ラクトスの街に到着しました
「タクミさん、難しい顔をしてどうかしたんですか?」
「いえ……ギフトって何なんだろうなと考えてまして」
「ギフトが何なのか……ですか……」
「タクミ様、ギフトは様々な能力を発揮する物と言われておりますが、その能力を持った人の数は多くいるわけではありません。ギフトを持った方々は、国や街、色々な場所で重宝されるため丁重に扱われます。ギフトを持った人が何故ギフトを持っているのか、理由は未だわかっておりません」
「ギフトを持ってる人を調べなかったんですか?」
「調べた人もいるのかもしれませんが……ギフトに関わる文献によれば、何故ギフトが与えられるのか、どういった人物に与えられるのかという事の解明はされておりませんな」
「なら、調べてもわからなかったのかもしれませんね」
「そうですな。それに、ギフトを持った人物は産まれてすぐギフトを持っていると判明したり、何十年も普通に暮らしてた人が急にギフトと思われる能力が使えるようになったりと様々です。ギフトを得られる条件のようなものがあるのかどうかわかりませんが、一人や二人を調べてもすぐにわかるものではないでしょう」
「そうですか。ギフトを持ってる人の数は少ないんでしたよね?」
「はい。数百万人に一人と言われております」
それなら判明していないだけで結構いるのかもしれないな……。
あ、いや、この世界の人口から考えると少ないのか。
日本や以前の世界だと数十億の人口だったから、数百万人に一人なら千人くらいいる事になるけど、この世界の人口がそんなに多い気がしないからな。
「だったら、ギフトが何なのかを考えるのは無駄なのかもしれないですね」
「そうですね、タクミさん。それにギフトに限らず、能力とはどう使うか……というのが一番重要な事だと思います」
「成る程……どれだけ凄い能力を持っていても、使わなければ意味は無いし、取るに足らない能力と思っていたものでも、使い方次第で大きな事を成したり出来るかもしれないという事ですか」
「はい」
確かに能力というのは使い方次第なんだろう。
俺にギフトがあるのかまだわからないが、もしあったとしたら、何に使うか、どう使うかをしっかり考えてみようと思う。
まぁ、どうにも使えない能力かもしれないし、そもそも調べてみたらギフトなんて持っていないかもしれないけどな。
「タクミ様、お嬢様、もう少しで街に着きます」
ギフトの事を考えてるうちに街に着く頃になったようだ。
屋敷を出て大体1時間ってとこか……結構近いんだな。
「タクミ様、街に入ったらまず馬車を預けます。降りた後はその場でお待ちになっていて下さい」
「はい、わかりました」
「レオ様の事もちゃんと見てないといけないですね」
「そうですね」
クレアさんに言われたようにレオはしっかり俺が見ておこう。
まぁレオの方が俺から離れないとは思うけどな。
街に入って驚いた人がレオに何かするかもしれないから。
……レオから何かする事はないはずだ、多分。
馬車は高い石の壁に囲まれた街の門に到着し、衛兵と思われる人とセバスチャンさんが何やら話をした後、すぐに通してくれた。
俺達が門を通る時、横を並走していたレオに驚いた様子の衛兵さん達が印象的だった。
やっぱあの大きさの狼を見ると驚くよな。
門を通り過ぎ、少しだけ馬車で走ると広場のような場所に出た。
「それではお嬢様、タクミ様、こちらでお降りになって下さい」
「わかりました」
「ええ」
どうやらこの広場がさっきセバスチャンさんが言った馬車を預ける所のようだ。
俺とクレアさんはゆっくりと馬車を降り、セバスチャンさんは馬車とそれを曳いていた馬を、フィリップさんは自分達が乗っていた馬を連れてその場から離れた。
ヨハンナさんだけは護衛のため、俺とクレアさんについて残ってる。
レオは俺の横に来てお座りの体勢でおとなしくしてる。
俺は馬車と馬が離れて行くのを見送りながら、広場を見渡した。
広場には俺達と同じように馬車で来た人達がそこかしこにいる。
俺が最初想像してたような幌馬車があったり、屋根が無く木箱だけを積んだ二輪車を、馬が曳くだけの馬車もあったりと様々で、それを見るだけでも俺の目には珍しくて楽しめた。
馬車から荷物を降ろしてる人をぼんやり見ていると、クレアさんに声を掛けられた。
「どうですか、このラクトスの街は?」
「ラクトスって言う街なんですね。まだ入ったばかりで全部はわかりませんが、人の行き来が多いですね」
「そうですね。この街はさほど大きい街ではありませんが、この地域の人達が他の地域や王都に行く時に必ず通る街なので、往来が激しく活気のある街です」
「必ず通る街ですか」
旅の途中に通る街ならこれだけ人の往来が激しいのも頷ける。
けど、必ず通るのは何でだろう?
「この街は王都に近いというのもあるんですが、この街の周りにある森と山が一番の理由ですね」
「森は俺がいたあの森ですか?」
「そうです。あの森はこの街から南に行った場所にあるのですが……森はもちろん、森に近い場所も魔物が多く出るのです。逆側の北にある山も森と同じように魔物が多く出ます。なので安全な旅をするためにこの街を通る人が多いのです」
「成る程。そんな危険な場所をわざわざ通るんじゃなくて、安全なこの街を通って行くわけですね」
それは確かにこの街を通る事になるな。
わざわざ危険な森や山を通って旅をするもの好きもいないだろう……そういう仕事とかなら別だけど……あるかは知らないが。
北と南に危険な場所があって、それを避けるにはこの街を通ればいい、森や山をわざわざ迂回するなんて時間が勿体無いしな。
この街が活気づいてる理由に納得した。
「広場の向こうに見える建物は……木で出来てるんですか?」
「はい。この街だと木で建物を建てる事がほとんどですね。魔物は出ますが、山や森があるおかげで木材は豊富にありますから」
石造りの建物じゃなかった……でも確かに石で作るよりは木で作った方が簡単で費用も掛からず作れるんだろう。
木材が豊富なら尚更だ。
その分建物に使う材料も安くなるはずだしな。
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