第204話 牡羊のバトラー
「さて、どうやらシュット国が手に入れた事前情報だと、教会12幹部。彼らは自分たちをは十二聖師と名乗っていたみたいだ。他にも教会十二使徒やら異名が多いのは、彼らの知名度に比例する……おっと話しが脱線したみたいだ。事前情報だと、彼らは12星座の力を体に降ろす事で常人ではありえない力を得ると考えられているそうだ」
先行していたインザンギが独り言のように長々と語り始めて、数十分が経過した。
最初の内は「そうだったのですか」と相づちを返していたのだが、別に彼は僕と会話を楽しむつもりはないらしい。
「すまないな。彼の性分なんだ。これでも抑えている方なんだが…・・・」
アンドリューがフォローを入れる。
しかし、これで抑えている方とは、普段の様子は一体……
僕の疑問に察したのだろうアンドリューは
「ダンジョンでも無音が耐えられないと歌い出す事も日常茶飯事だ」
「日常茶飯事なのですか……」
「……しかし、それにしても」と僕は話を続けた。
「インザンギさんが言う通り、12……えっと十二使徒で統一しましょうか? その十二使徒が星座をモチーフにしてるなら、さっきのオズは牛ですよね? 順番的に2番目。1番目は確か羊じゃなかったですか?」
「その通りだ。どうやら、1つダンジョンを飛ばしたらしい。だから、反時計回りに向かっている」
「反時計回り。十二使徒のダンジョンは12個。もしかして、時計のように?」
「そうだ。ここへ突入する瞬間、ダンジョンの位置を空から確認している」
驚いた。 あの一瞬で、そこまで把握していたとは……
最強の探索者の二つ名は伊達ではないみたいだ。
「兎に角、次の相手は羊をイメージにした戦士……いや、使徒になるのですね」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「で、なんで2人が怪しいって思ってるの?」
僕は、ドラゴンに聞いた。もちろん、ヒソヒソと声を小さくしてだ。
「そうですね。詳しくは言えませんが……女のカンで納得してください」
「いや、お前、女じゃなくてドラゴンじゃん」
「ちょ!? ドラゴンは種族名です! 体は巨大でも心は乙女なのです!?」
最初のヒソヒソ話はどこへ? ドラゴンは大声になっていた。
しかし、インザンギとアンドリューは僕らの会話を痴話喧嘩とでも勘違いしたのだろう。
ニコニコと笑みを見せている。 余程、気分が良いのかインザンギは歌まで歌っていた。
あぁ、別に無音じゃなくても歌うんだ。 そんな感想をもったが……よくよく聞いてみると美声で驚いた。
さて、そんなこんなで次のダンジョンだ。
羊のダンジョン。いや、正確には牡羊のダンジョンか……
牡牛のダンジョンでは品種改良されたミノタウロスが大量に放たれていたが、ここではどんな……
「ここには魔物なんていませんよ」
男の声がした。
見れば、ダンジョンの入り口に男が立っていた。
「あくまでダンジョンは私たち十二聖師が自身を鍛えるための建物。私は直接的な戦闘タイプではありませんのでね」
初老の男性だ。
白髪交じりのオールバック。服装は燕尾服。片眼鏡を装備している。
男の格好は……まるで……
ドラゴンも僕と同様の感想だったらしい。
「もしかして、羊と執事のダジャレですか?」
ドラゴンは僕が思い浮かんだ疑問を代弁してくれた。
「はっはっはっ、私の服装を見て皆さん、同じことを言われます。そういうわけではないのですが……」
言葉を中断した執事が飛び上がる。
反射的に攻撃と察しして警戒を強める。
しかし、違った。 執事は、そのまま空中で制止した。
「私は十二聖師が1人牡羊のバトラー。いざ尋常に勝負です」
そういう、彼の背後に巨大な剣が浮かんでいた。
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