第164話  現シュット国王の決闘代理人 ゴドー

 現シュット国王の決闘代理人 ゴドー


 彼と僕は因縁があった。


 僕がまだ、シュット学園の生徒だった頃―――僕は彼を戦う寸前だった。


 個人的な因縁ではない。


 彼の雇主だった現国王(当時はシュット学園の生徒だった)が婚約者を奪われると勘違いしたのだ。


 まぁ、僕は、その婚約者から命を奪われかけたわけだが……


 結局、その戦いは実現することなく、僕の代理人として立候補したオム・オントがゴドーと戦う事になった。


 勝敗は―――

 あれ? どうなったんだろ?


 戦いの最中にモンスターの乱入……それも主ボスクラスが現れて戦いはうやむやになった。


 兎に角、現状はヤバい状態。 


 僕は、前シュット国王暗殺事件の容疑者だったりする。


 そして、ゴドーの雇主は前国王の息子であり、現国王である。


 ……非常にヤバい状態なのだ。


 「イスカル王、ここでは貴方が法律だ。しかし、私にも私が従う法があるのです」


 ゴドーはイスカル王に向けていった。


 「うむ、それは面白い解釈だ。法律は国ではなく個人が決め、個人が選んで従うもの……お前はそう言っているのだが?」


 「……失礼。他ならぬ貴方に法律を語った私の落ち度でした。正確には我儘わがままです」


 「我儘とは?」


 「私は私を縛るものは法でなく、私が殉するに値すると認めた君主のみ」


 「だから、それが法律は個人が……ややこしい。力で決めろ。力で」


 イスカル王がそう言った。だからだろうか?


 その言葉に反応して動いた人間がいた。


 それは僕の動きを封じているゴドーの腕を――――


 蹴り飛ばした。


 「え?」と僕。


 「むっ」とゴドー。


 「ほう……」とイスカル王。


 「ん?」とドラゴン。


 「あれ?」とクリム。


 「それっ、つまり……王さまが力で決めていいって認めてくれたって事で良いんだよね?」


 ゴドーの腕を蹴とばした張本人は―――


 キララはそう言った。


 彼女の体は震えている。


 今の今まで僕たちが彼女の存在を失念していたのは、この騒動から彼女は一歩下がって見ていたからだ。


 自分が入れるレベルの話ではない。もしかしたらそう思ったのかもしれない。

 それと同時にチャンスと思ったのだろう。


 だから、彼女はこう言った。


 「ねぇ、サクラ。3対3マッチの話だけど、3人目に立候補できるかな?」


 僕が反射的に頷くと……


 「ははは、貴様に一撃を受けさせる女性だ。貴様が戦ってみるがいい」


 イスカル王が笑っていた。


 それに対してゴドーは、隙をつかれた事を恥じだと思っているらしい。


 凄い顔でキララを睨みつけている。


 体は震えていても、ゴドーの睨みから一歩も下がらなかった。


 「お前、名前は?」


 「キララ……アッシュ・ザ・キララだ。……いえキララです」


 「キララとやら、お前は有資格者だ。私が信念を曲げてもいい」


 そう言ってゴドーは彼女から背を向けた。 


 「……えっと? あれ?」とキララは困惑していると―――


 「キララとやら、あれはお主との対戦を承諾したと言っているのだ」


 イスカル王が説明する。そして―———


 「これで、障害はなくなったな。3対3マッチの戦いは明日にするぞ!」


 そう宣言したのだった。

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