我がままも、ほどほどに
勝利だギューちゃん
第1話
「暑い、暑い、暑い」
隣にいる女は、うるさい。
「ねえ、どうしてこの国は、こんなに暑いの?」
「夏だから」
「私、訊いてない」
「そのくらい、調べておいて下さい」
今、騒いでいるのはマイルと言う名の女の子。
職業は、(見習いで、落ちこぼれの)サンタクロース。
今年の元旦に、遅刻してきて、家に転がり込んでいる。
すっかり、馴染んでいたが、この暑さは予想外のようだ。
「ねえ、どこか涼しいところへ、引っ越そうよ」
「無理言わないで下さい」
「お願いだから・・・」
泣きたいのは、こっちだ・・・
「ところで、マイルさん」
「さんは、いらない。それと敬語は禁止でしょ?」
「ところで、マイル」
「何?」
「サンタさんなら、準備はしないでいいの?」
そう・・・
マイルは、僕の彼女になるという名目で、家にいる。
でも、今年のクリスマスまでか・・・
寂しくもあるな・・・
「私は、配達係だからね。準備は、別の人がやってるよ」
「そう・・・」
北国育ちのマイルには、答えるだろう・・・
「ねえ、悟くん」
「何?」
「本当に彼女になって、あげようか?」
「冷やかしは、やめてくれ」
笑みを浮かべるマイル・・・
「マイル、連絡はしなくていいの?」
「どこに?」
「家に、年頃の女の子なんだから、心配してるんじゃ」
今更ながら、訊いてみた。
「平気よ、私、子供じゃないもん」
いえ、子供以下です。
「もう、暑い。悟るくん、行くよ」
「どこへ?」
「北極」
連れて来られた。
ちなみに、服は用意してくれているみたいだが・・・
さすがに、夏服ではあの世生きだろう・・・
ここにいれば・・・
「寒い。来るんじゃなかった。悟くん、帰ろう・・・」
わがまま言わないで下さい。
・・・って、マイルの実家の近くでしょ?
「ここまで、寒くない」
我がままも、ほどほどに 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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