寄り道出発、列車での出会い④
「清孝どん、いっちまうんでごわすか」
「ああ、またすぐに会えるから」
「おいどん、おいどんは寂しいでごわす」
「キドンおじちゃん、また変な顔ー」
「そんな泣くほどか、俺が今から行くのは列車ですぐのババ領だ、今生の別れになるわけでもないのに泣くんじゃない」
ヘルパッカに来て民宿で一休みして数日程した今日、俺達は少しでかけるべく列車のホームにいた、そしてそれを見送るが為、顔を顰めながらもキドンも立っていた。
今日は菊花賞までまだ数日余裕もあると言う事で少し遠出をする計画を建てた。
そしてその行先は列車で数時間程南下した先にある友人の一人である
南下した先には
「あ、おとさん列車来たよー」
「みたいだな、それじゃキドンまた菊花賞の会場で会う事だろう、それまでな」
「応、行って来るでごわす、怪我しないように気を付けるでごわすよ!」
エルが指さす方向から一台の列車が来ていた、アレに揺られた数時間後にはババ領かね、元気にしてるかねぇ、羽場と明山と山下は三人一緒で野球部に所属していたんだったかな、といっても甲子園出場を目指すとか本格的な感じではなかったようだがとりあえず、列車に乗り、座るべく席を探す、やはりババ領行きという事もあり布に包んだであろう刀剣類や魔法銃の類が散見される。おそらくは解散した傭兵団の中で傭兵以外に出来る仕事の無い男や女と言った所か。
「おとさん、こっちの席空いてるよ、おねーさん、座っていーい?」
「あら、大丈夫よ、お父さんですか……って、守護英雄!?」
「ああ、その魔法銃の類、女傭兵か、小人樹海の開拓傭兵志願かね」
「あ、はい、前までは西部の方にある傭兵団に所属してたんですけど団長が私の友達今こちらに座ってる彼女ですね、彼女に手を出そうとしたもので、脱退してババ領に向かってるんです」
「どうも……」
エルが見つけた席の向かいには既に二人の女性が座っていた、長身な体躯、胸は乏しいが下半身はしっかりとしている良く鍛えているのだろうことが伺える、黒髪を一つに結った切れ長の瞳の女性、勝ち気で男勝りに見えるそれは典型的な女傭兵と言った感じだ。
対照的にやや小柄であり胸の大きさも少女のそれ、ただ尻だけは安産型なのだろうと伺える安定性がある、猫背で俺に怯えてるのか顔をやや俯けて警戒するように睨んできている、その顔も幼さの残る童顔という物だ。
髪色は隣の女性と同じ黒髪黒目、それに胸は乏しいが両者とも安産型と呼べる下半身の発達具合からして、ふむ。
「失礼するよ、俺達は友人に会いに行く途中でね」
「友人と言うと羽場さんですか?」
「その通りだ、紹介してやろうか、君ら西邦の血を継ぐ者だろう、髪の毛の色なんかからして、後、その安産型体型な」
「あ、ご存じなんですね、でも最後のは余計ですよ」
「おとさん、せーほーの血を継ぐものって?」
「ここからずっと西にある国の更にその先の島から渡ってきた冒険家の子孫だな」
西邦の血を継ぐ者、詳しい事は知らないが、この大陸の西側からずっと行った海の先には島があり国もあったのだとか、だが現在はその島に人は住んでおらず国は滅んでおり、その地で住んでいたと言う人間で残っているのはその地からこの大陸へと船を漕ぎ出しまだ見ぬ新大陸を探しに来た冒険家の一団だけ。それらの祖先が今目の前にいる西邦の血を継ぐ者の起源。
島の方はなんでも希少な動植物類が多数生息してるようで各地の生物学者の研究対象として注目を集めつつある。帝国も西側の国と連携してその島の生物を調べる計画を立案中とか。
さてそんな西邦の血を継ぐ者がどれだけこの大陸に浸透してるとかと言うと、全土と言って過言でない。というのも西邦の血を継ぐ者は性に奔放だ、一夜限りの男との間に出来た子供を産んだり、仕事女との間に子供を作ってそのまま結婚したり。
そんな彼彼女らは大抵が黒髪黒目をしており、大人になっても老いが来るのが緩やかで歳相応より若く見えるという日本人にも似た特徴を持つ、そして女性を見分けるのはもっと簡単で。尻の形や体躯や体質こそ安産型だが胸部の膨らみだけはやや乏しいと言う所がある、これはどの種族に混じっても覆らないとか。
「体型について男性から指摘した非礼は詫びるよ、すまなかった」
「別に構いませんよ、安産型なのは事実ですもの、ババ領についたら試します?」
「そういうつもりで行った訳ではない、娘と旅をする身、行きずりの女は作らない」
「守護英雄様は厳格なお人柄と聞きましたがその通りですね」
「西邦の血を継ぐ者が奔放なのも聞いた通りだな」
「おねーさん達、名前は何て言うの? エルはエルだよ! おとさんはしゅごえーゆーじゃなくて、清孝魔央っていうの」
「これは自己紹介をお忘れしておりました私はリーと申します、こちらの先ほどから喋らない私の友人はワンと言います、しばらくの列車の旅、よろしくお願いします」
「……します」
リーとなのった女性の方が俺を誘惑してきたが、それを適当にあしらいつつ、短い間ではあるが、この女性二人としばらく一緒しなければいけないようだ。
まぁ、性に奔放とは言っても、無理強いをする輩ではあるまい、それに片方は傭兵団の団長に言い寄られたのだから、男性に強い警戒心を抱いてるだろうしな。
現に今もずっと睨まれている、大層、男が嫌いなようだ。
「マオーさん……食べ物、何が好き?」
「あ? カレーだな」
「カレー、知らない……ごめんなさい」
「いや、謝る必要は無い、だがいきなりどうした」
「男心、掴むにはご飯、守護英雄も虜にする」
「はぁ?」
「ワンは傭兵団でも戦闘員じゃなくて料理を作る係でしたの、とても美味しい料理をお作りになられますよ、それで何人の男性を虜にして来たか」
「はぁ? あれ、でも男に襲われて逃げて来たんじゃ?」
「あら? 傭兵団長がいつ男とお話したでしょうか」
「あ、そういう……」
どうやら、彼女らのいた傭兵団の団長は女性だったわけだ、西邦の血を継ぐ者は
同性同士でそういう関係になるのを極端に忌避するんだったか。
当事者であれば猶更だな。
「エル……西方の血を継ぐ者のようにはならんでくれよ」
「えー? なんでー?」
「なんでもだ、それともうそろババ領だ」
俺は一応、エルに釘を刺していく、俺の知らないうちに行きずりの男と子供出来たなんて報告は聞きたくないぞ。思いのほかお喋りには時間が掛けられていたようで。
窓の外を少し見やればそこにはそれなりの盛り上がりを見せる街が見えてきた。
さて、羽場は元気にしてるかねぇ。
異世界に転移して15年、英雄は平和になった異世界で旅をする HIRO @iaiaCthulhu1890
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