友人を訪ねて 古馴染との再会②

「お馬さんの本売ってるのってここ?」

「そのはずだ本に載っている情報が正しければだが」

「まぁ、入ってみればいいでごわすよ」


 俺達は一つの建物の前にいた、3階まであるそれなりに高い建物である、石造りで重厚な感じでそれなりに威圧感もある、そしてその建物の横には本の雑誌と同じ名前が書かれた看板が立っている、ここにいると思いたいが。

 俺が先に入ろうと思った矢先にキドンが扉に手をかけ入っていく、こういう新しい所に臆することなく入れるのは山人だからかキドンだからか、きっと後者だな。


「失礼するでごわす!」

「おじゃましまーす」

「ようこそ、スピタル社にご用事でしょうか?」

「急に訪ねて申し訳ございません、少々お話したい人がいまして」


 威勢のいい返事でドアを潜った俺達、1階はロビーになっており、観葉植物等の緑が置かれていたり、一時的に人を待たせる時の為のテーブルとソファー等がある。

とりあえず、カウンターにいる女性に声をかけ、誰か話をつけれそうな人を呼んで貰う事にすると。


「おう、どーしたステファニー、客か……って、清孝ァ!?」

「うん? ……ハリー兵長、何故こちらに!?」

「それはこっちの台詞だ! どの面下げて帰ってきやがった! 俺はな……俺は……嬉しいぜ! 話は聞いてたが、本当生きてたんだな! 本当……よかったぜぇ」

「不肖清孝、恥ずかしながら帰ってまいりました、そしてハリー兵長にお尋ねしたい事がございます、お時間よろしいでしょうか、聞かれて不味い事でもないのであちらの椅子と机をお借し頂ければ、そちらにて」

「応! 不味い事じゃないならいくらでも聞いてやる、連れの男と嬢ちゃんもな

ステファニー人数分の茶を用意してくれ、ささ、とっとと座りな」

「またおとさんのお知り合い?」

「ああ、この地で一緒に戦った、元上司だよ」

「ふむ、確かに立ち居振る舞いから戦士の風格が漂うでごわす」


 早速、千堂の取材者に話を取り付けようとしていたら、横から酒焼けした声がする振り向いてみればそこにはかつて魔獣騒動の際にこの地でお世話になったハリー兵長がそこに立っていた、魔獣に引き裂かれ頭から顔にかけて大きな爪痕を持つ強面。

だが、強面とは裏腹に人情家で俺の事もロレンスさん同様よく気を使ってくれた。

彼が一緒なら大丈夫と俺と同じ年くらいの兵士からの信頼もとても厚かった。


 そんなハリー兵長はその目を細め涙を溜めて、五体満足で立っている俺の姿を見て喜んでいた。守護英雄の噂は聞いていたが本当に帰って来れたのかこうして目の当たりにして初めて安心したようだ。


 そして俺が尋ねたい事があると言えば二つ返事で答えてくれてステファニーさんにお茶の準備をさせ、俺達は椅子に薦められそこに座り話を始める事に。

勿論、話すのは千堂を取材した雑誌記者の所在である。


「と、このように手掛かりがこの雑誌だけでしたので、よろしければ記者の方を紹介して頂けないでしょうか」

「帝都まで怪我した友人を見舞いにとは実に友達思いだな、その記者は確かにうちの記者だ、それと千堂騎手の記事は全部そいつに任せてて家も知ってる」

「ハリーさん、どうぞお茶です、皆様」

「ご苦労さん、それと丁度いいクレナを呼んできてくれ」

「かしこまりました」


 雑誌をテーブルの上に置き全ての説明を終えれば、ハリー兵長はそう言ってくれた

思ったよりすぐに会えそうでよかったな、お茶も話が終わるころに丁度置かれる。

話した後は喉が渇くから丁度よかったな。俺の話が終わるとハリー兵長はエルと話をしていた、エルは旅の話を誰彼構わず話を始める、というかよくハリー兵長の強面に怖気つかないな。エルはハリー兵長に魔獣についてをハリー兵長はエルから他種族の事を聞いていた、日記を出してそれを駆使して頑張って話をするエルは良い物だ。


「どもども~、お待たせしました、ハリーさん」

「おう来たかクレナ、千堂騎手の友人で清孝とその娘さんとご友人だ、挨拶しろ」

「えっ!? 清孝って、あの守護英雄の!? ど、どうも! この出版社で雑誌記者をしております、クレナといいます!」

「清孝魔央だ、よろしく」

「エルです! 初めまして」

「キドンでごわす、よろしくでごわす」


 しばらくそんな風に待っていれば、俺達の前に現れたのは髪を短く揃えている栗毛の女性であった。シャツにジーンズ走る事に特化したブーツと彼女は外を回って情報を集める活動的な記者である事が伺えるそんな彼女は俺を見ると驚き顔を赤くしながら挨拶をしてくれる。その挨拶に三者三様の挨拶を返しながら、代表で俺が握手の為に手を出せば、握り返してくれる。


「まさか今話題の守護英雄と会えるだなんて、うわ手の平超硬い、腕も血管浮いてて力強そう、ワイルドな顔つきも超タイプ、あ、あの彼女とかっていますか!」

「あ、ああ……彼女はいないが」

「盛ってんじゃねぇよ阿保、猿でももうちょい節度あるぜ」

「そう言う事言ってばかりだから、嫁どころか彼女もいないんですよ」

「うっせぇ、とっとと千堂騎手の所まで案内してやりな、今日はその後直帰でいい」

「了解です、ささ、清孝さん、ついてきてください、菊花の所までご案内しますね」

「との事だ、いくぞキドン、エル」

「はーい、失礼します! ハリー兵長!」

「了解でごわす、お茶ご馳走様でごわす」


 俺の言葉にエルはハリー兵長に敬礼をして挨拶をする、ハリー兵長に教わったか?

キドンもまた山人軍人式の挨拶でハリー兵長にお茶のお礼をする。

軍隊式が流行りか? 俺は軍人じゃないからな、しないからな。


「こちらがの家です、部屋は一番奥なのでもう少し歩きますけど」


 雑誌社を出てからクレナに連れられたのは大通りに面するアパートであった。

クレナは私達と言ってたが、なんでもクレナと千堂それともう一人同居人がおりその三名でルームシェアをしているそうで、中々楽しくやっているようで何よりだ。

アパートの中は小綺麗な物で、おそらく新しく建てられた物だろうと言う事が伺えるここらは公国戦争の被害こそ少ない物の魔獣騒動、他種族紛争では大分痛い目を見ているからな。アパートの階段を登り一番右奥の部屋に辿りつく。


「ただいまー! 菊花いるー、お客さん連れて来たよー」

「ああ、そっちに行くよ、どちら様かな……魔央君、久しぶり」

「久しぶりだな、見舞いに来たんだ、ケガをしたと聞いてな」


 クレナが扉を開け、千堂を呼べば変わらない顔でそいつは俺に挨拶をしてくれる。

腕には痛々しい白い包帯を巻いていた、怪我をしたのはよりにもよって利き手である右手の様だ、だがそれ以外は意外と元気な様子である、カジュアルな服装に。染めたであろう茶髪の短髪、凹凸のない細い体、こいつは周防と良くつるんでいたと言う事もあり女子の中でも俺の事を下の名前で呼ぶ数少ない女友達である。


「この前も棗君が来てくれてね、歓迎するよ、それとそっちのでかいのと小さいのは

魔央君の友人と娘さんかな?」

「おいどんは山人族のキドンと申すでごわす、一騎当千の千堂どんのお話はおいどんの耳にも入っております、こうしてお目通り叶って光栄でごわす」

「初めまして、エルです! おとさんと一緒に旅をしております」

「なんだ、どっちも敬礼なんてしてかしこまって、まぁいい、私は千堂菊花、魔央君の友人の一人だよ、今は軍を抜けて騎手をしているんだけど、怪我で休業中」


 千堂は俺の後ろにいる二人にも自己紹介をするように促す、そしてキドンは山人式エルは帝国式の敬礼をする、キドンはともかくエルは気に入ったのかそれ?

千堂も元々は軍に所属していたと言う事もあり、片腕ながら同じ様に敬礼で返す。

ちなみに俺は出来るかって? 一応出来るがした覚えは無いな、基本単独行動だったからな。


「とりあえず、玄関前でわちゃわちゃしてないでリビング入りましょ」

「クレナ君、仕事はいいのかい?」

「ハリーさんが今日は清孝さんの案内したら直帰でいいってー」

「それならいい、っさ、入った入った、クレナ君紅茶を頼むよ」


 こうして、魔獣騒動以来の再開する千堂と再会する事になるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る