異世界に転移して15年、英雄は平和になった異世界で旅をする
HIRO
始点 異世界転移大激闘 英雄は幼女と旅に出る
異世界転移、異世界はかくも生き辛い
俺は時計を見る、時計は15時を少し過ぎた頃を指していた。今日もつつがなく学校での一日が終わると見た後10分もしないうちにホームルームが始まるだろう。
「なぁ魔央ちゃん夏休みだけど魔央ちゃんも一緒に海行くか?」
クラスメイトの男の一人が話しかけてくる、鈴木はこういった事があるごとに俺を誘ってくれる、気のいい友人の一人で彼の周りにはいつも人がいて楽しそう、そんな男だ。海か悪くないな、今年も一段と暑くなりそうだからな。首を縦に振る。
「おっけい、魔央ちゃん本当口数少ない奴だなぁ、ま、いいけどさ、魔央ちゃんも行くってよ、他に誰誘うよ」
鈴木は俺に声をかけ終わると他のクラスメイトの輪に戻っていった。
俺は
多くの友人は夏休みの宿題に慌てて取り掛かっていたりするので当日に祝ってくれるのは両親くらい……いや俺自身も大忙しなので祝った試しがないな。まぁ、始業式に友人からおめでとうと声をかけられるので、別段悲しい気持ちはない。
特技は剣道、実家が道場をやってる関係で子供の頃物心ついてからずっとやっていて今日まで続いている自慢じゃないが段位も持っている。
趣味は家庭菜園、小学校低学年の頃に自由研究ではまってからずっと今日まで続けてきた、そろそろトマトが出来るので収穫が楽しみだ。
勉強はまぁ普通、好きな科目をあげるなら、社会だろうか? 苦手は数学だ。
そんな自己分析もとい自分をちょっと振り返っていると担任の桃花先生が入ってきた
「えー、そろそろ夏休み、皆さん夏休みだからってハメを外し過ぎてはいけませんからねー」
「わかってまーす、モモちゃん先生は今年こそ彼氏ゲットできますかー」
「はいはい! 俺彼氏に立候補します!」
「お前じゃだめだ、ここは俺に任せてだな」
「っふ、桃花先生のハートを射抜くのは僕さ」
「はいはい、冗談でも先生と付き合いたいとかダメですよー」
桃花先生は生徒に慕われており、中にはあからさまなアピールをする男もいる。
中にはさっき俺を海に誘った鈴木もアピールする男の中にいた。
そんな冗談が混じる和やかなホームルームの終わりが近づく。
「それじゃ、今日の日直は……あ、魔央君だね、号令お願いします」
っと、そういえば、今日は日直だったか、面倒だが、仕事はこなさないとな。
今日は声を出していなかったので起立と言おうとしたらかすれてしまった。周りからしっかりしろーとか頑張れーという声が聞こえてくる、口下手で声をいざ出そうとするとかすれてしまうのは、どうにかした方がいいかもしれないな。
そんな事を考えたのち少し咳払いで声を整えて、号令をかけようとした。
その時だった、俺達は目の前を光で覆われてしまったのだった。
………………
…………
……
光が収まった気がする、目を開き瞬きをするそこは真っ白な空間であった。
一体どこだろうか? 教室ではないな。
「初めまして、突然のことで驚きでしょうが、お話を聞いていただけますか」
突如目の前に白い羽を生やした金髪碧眼の絵にかいたような美女が現れる……これはさしずめ昨今流行りの?
「まずは自己紹介を私は、所謂女神という存在です、貴方には私の作った世界を救っていただく女神の勇者になって欲しいのです」
女性は俺の想像した通りの答えを出してきた、異世界転移って奴だ。
女神は立ち話もなんですのでと椅子と机、更にはお茶とお茶菓子を出してくれる。
食べながらでいいので聞いて欲しいと言われたので静聴させていただく。
そんなわけでお話を伺った感じだとこう、こういうのは箇条書きで整理するに限る
・異世界は魔力を過剰に吸った獣、魔獣によって現在窮地に陥っている
・それを女神の力を利用して魔獣を倒して欲しいとの事
・女神の力は完全ランダム、ただ魔獣退治には絶対価値あるものであると保証する
・現在一番力があり身分に寛容で女神信仰の厚い国に転移する。
・既に女神の啓示にて俺達が来る可能性があるのは向こうに周知
・もちろん断ってもいい、その時は元の世界に戻る。
「細かい事は色々ありますが、大まかな所はこれで全てです、質疑応答は」
俺はまず、異世界の生活水準がどうかを、そのほかの技術レベルなどを、そして人間以外に人間とコミュニケーションを行える種族がいるかを問いただしてみた。そもそも言語はどうなるのか。そして、異世界の飛ばされる国の名前やその国の外交状況なども。答えはこんな感じ
・生活水準は毛色は少々異なるが現代日本と変わらないレベルである。
・技術に関しては平和が長く続いた関係で軍事技術は特定の国を除きすこぶる遅れている、それ以外は多少の齟齬はあるが、ほぼ現代日本と変わらないとの事。
・人間と同等の文化、技術、交渉能力を持つ種族は多数存在する。
・ただ友好的な者もいるが、そうじゃないのもいる、気を付けたし。
・言語は問題なく理解出来るしそれによる会話も滞りなく行える。
・国の名前はジークハルトと呼ばれる帝国、大陸の東の方に位置する1.2を争う大国
・現在、敵対国は無く周辺国家との関係も良好との事
「他には聞きたい事はないですか? そしたら最後に貴方に女神の力を授けますが」
俺は他には質問は無い意志を示す、そうすれば、女神はむむむ~と目を瞑り。
俺の方に手のひらを向けて力を込める、俺の中から何かが失われた気がした。
ふつう逆じゃねーの? いや、なんでさ、女神にそう尋ねると。
それが俺の能力が発現した証拠であるとの事。どういう能力が訪ねれば。
【魔力ゼロ】ようは魔力が無いという能力だそうだ。
魔力は向こうの世界のどんな存在でも当たり前に持っているもの、そして俺も持っていた物だった。だから抜けたのか。それって本当に能力なのかと疑問を提示すれば、なんでも魔力が無い存在に魔法の影響は何も効かないらしく。魔獣の攻撃は基本的に魔法を用いた物なので攻撃を無効化してしまうだろうというのは女神の言葉。
更に魔獣の五感は退化しておりその代わりに魔力を感知する能力に優れている
なので俺の存在を感知するのは至難の技、不可能に近いとか。
とてもわかりやすく強い能力だ、もっと難しい能力だったら大変だったよ。
女神からの説明を全て受けて、転移するかしないかを最後に聞かれる。
俺はイエスと答える、父や母にもう会えないのは少々心苦しいが。
困っている人を見捨てるなとの祖父の言葉もある、許してくれるだろう。
女神にそういえば、父母にはお手紙をお書きになればお渡しすると。
そういってくれたので、異世界に転移する旨と自分は大丈夫だから安心してくれと書き、父には俺の部屋のパソコンは必ず初期化してくれ、SDカードも中身を見ず
データを削除するようにと書いておく、父も男だわかってくれるはず
母には数日したらトマトが収穫できるので美味しく食べて欲しいと。
その後は俺の部屋に小学生の頃からつけているノートがあるので、それを見てお暇でしたら、是非とも家庭菜園を続けていってほしいとも書いておいた。
そして女神が目を瞑って欲しいというので目を瞑る、そして数秒の後。
「おお! 貴方方が女神が遣わした勇者殿ですな、よく来てくださいました!」
俺たちの前には二人の男が立っていた。
なんでもこの国の王と俺達にこの国を案内する宰相様だそうだ。
周りを見てみれば、クラスメイト全員がそこには揃っていた、誰一人元の世界に戻るという選択はとらなかったようだ、桃花先生もいる、中には髪の色が赤や青、緑と変色している物もいる、女神の力の影響だろうか。
さて、宰相に連れられて来たのは俺達が自由に使ってもいいという建物。
全部で部屋の数は30以上、一人一部屋振り分けれそうな大きな建物だ。
部屋割りを決められると、次は中庭で訓練だそうだ、服も着替えさせられた。
それで中庭に出てみればそこには何人か屈強な戦士達が立っている。予定としてはしばらくは王国の騎士と戦闘訓練をして、慣れ始めてから魔獣との実践だそうだ。転移してすぐだが軽く実力を見る為早速訓練をしてもらうとの事。
「ほほう、筋がいいな! いい太刀筋だ」
俺も適当に両刃剣を使わせてもらい振ってみた、木刀や竹刀なんかよりも重たいが、振れない事は無い。早速騎士の人にも褒められる、少しだけ向こうの世界でも剣を振るっていたことを言えばそのまましばらく振ってみるといいといわれる。現状言う事無しって事か。早い内に慣れれるよう頑張らないとな。
「おお! こっちの男、あの大剣を軽々しく」
「なんでも、怪力の力だそうだ、これは強そうだ」
「おお、あちらの女は鋭い爪を振るうとは」
「女神の力とはすさまじいな、これは魔獣も震えあがっているぞ」
早速女神の力を見せ注目を浴びてるクラスメイトも多かった。
俺の女神の力は実践向きというか、それ以外の事は俺自身のスペックにかかっている
肉体改造もだがこの世界の知恵や知識なんかもつけるべきであろう。
こんな事なら女神にもっと聞いておくべきだったか? いや聞いたところで覚えきれない、ノートを借りて書き物をするべきだ。そしてこの後俺は大問題に相対する。
それは訓練終わりにトイレに行った時の事(ちなみにトイレは洋式だ、本当に生活水準は向こうの世界と変わらないようだ)用を足してすっきりしたところ。
紙はどこかと探すのだが……そこに紙は無かった、切らしているとかではない。
トイレットペーパーを設置する場所ごと無いのである。おいどうすんのよこれ。
代わりについていたのは謎の水晶、これを触ればいいのか? 反応なし。
よく見たら、水を流すレバーもついていない。
どうすればいいんだと、その場でケツ丸出しで便座に座っていると
「お掃除、お掃除……♪」
幸いなことにメイドさんの一人が掃除に入ってきた、これは助かったと声をかける。紙もなければ、水を流すレバーもないのだが、どうすればいいのかを聞く。
すると返ってきたのは俺を絶望の淵へと落とす言葉だった。
「異世界の人には珍しいかもですね、水晶があるでしょう、それに魔力を通せばお尻を浄化魔法で清潔にして、お水も水流魔法で流れていくんですよ」
魔力、彼女はそう言った、俺は恥を忍んで男の人を呼んで欲しいと頼む。女神の力で俺は魔力のない体なのだとも説明した。メイドさんは訝しみながらも、男の人を呼んでくれた。男の人が魔力を水晶に流せば。水が流れる音と、お尻に残る排せつ物が無くなった感触がした。
急いでズボンを履きなおし、御見苦しいものを見せて申し訳ないと謝罪をすれば、困ったときはお互い様ととても優しい返事をしてくれた、異世界でも向こうの世界でも、優しさって、心に響くな。
どうやら魔力で動くとは本当のようだ、そしてトイレだけではなかった。この世界の動力を必要とするものそれ全てが魔力で動く代物であった。
この世界は俺にとってはクソがつくほど生き辛いようです。
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