巨魚名鑑⑤
〈クラップ・ナップ〉
最大全長:約50~60センチメートル
パルス器官:無
アンボイナガイの巨魚。
強靭かつ柔軟な触腕を持ち、これをムチのように使い外敵や獲物を仕留める。
本種に限らず、貝の巨魚は通常あまり移動能力を持たず、よほど繁殖力が強くない限り分布図は広くない。しかしごくまれに、共生関係にある別の巨魚や、天敵でない巨魚に張り付くなどして移動してくる場合があり、作中においては本種もこういった形でドイツへと移動したと思われる。本来の生息地は南海である。
巨魚としては真っ当に美味であるが、本種を特に好んでいるのは人類種ではなく、貝を好む巨魚である。
〈ドラッヒェ〉
最大全長:約60~100センチメートル
パルス器官:無
マゴチの巨魚。馴染みがない方は、平たいカサゴを想像して頂ければよい。
水面から最大で10メートル以上も跳躍できる筋力と瞬発力があり、また、左右の横ヒレで空気を拾ってうことで泳ぐように水面まで滑空することができる。
本種は巨魚としてはあまり強い方ではなく、水中では食糧をめぐる争いに敗北することが多い。そのため、海面近くを飛ぶカモメなどの海鳥を狙うようになった結果、このような生態を獲得したと言われている。また、海鳥以外の食糧が、先に紹介した〈クラップ・ナップ〉をはじめとする貝の巨魚である。本種と〈クラップ・ナップ〉は互いに互いを捕食する関係にあり、作中に登場した本種の群れは近海に流れ着いた〈クラップ・ナップ〉を狙って出現したものである。
味はそれなりだが、貝を捕食している関係でフグに似た毒がある。調理には専門の免許が必要。
〈ヤクトグラープ〉
最大全長:約400~700センチメートル
パルス器官:有
ヤドカリの巨魚で、パルス器官を持つ上位種。
上位種の巨魚としてはさほど大型ではないものの、非常に獰猛かつ機敏で、ときに自分より何倍も大きな巨魚でも倒し、捕食してしまう。
中でも、とある巻き貝の巨魚は上位種でありながら本種を天敵としており、本種が背負っている貝殻は大抵の場合、同じ種のものである。上位種である巻き貝の殻は、それ自体がかなり高純度のパルス伝達物質であり、背負う殻が大きければ大きいほど危険度は激増する。
パルスを空気を発生させることに用いる。噴射による移動や遠距離への空気砲など多彩な応用性を持ち、特に殻にこもっての移動は単独で300キロメートルもの距離を移動したという記録もある。
味は不明。解剖を担当した者は『身は少ない』と語っている。
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