第4話 団塊の世代はインターネットの夢を見るか
「バカッター」という言葉が流行ったのはひと昔前ではあるが、今日も何処かで誰かが炎上する。そしてニュースになる。
「まったく! くだらねぇな!」
ワイドショーの“またまた不適切動画が!”というニュースを眺めながら父が怒鳴る。
「こんなひでぇことしやがってよ! なんだ、YouTubeっつーのは金儲けのためにあんのか!?」
「あ~、私もあんまり知らないけど、閲覧数によっては企業と契約して広告料が入るらしくてね…」
また別の日。
“…というツイートをした男女を警察は○○法違反の疑いで逮捕し…”
「まったく! またかよ!」
父の怒りは過熱する一方である。
「こんなふざけたことしやがってよ! なんだ、Twitterっつうのは儲かんのか!?」
「あ~、いやYouTubeとは違って直接広告料が入るってワケじゃないけど……」
……ん?
『儲かんのか』…?
父の台詞に一抹の違和感を覚えた。
いやまさか。いくら何でも自分の父が「インターネットでひと儲け!」なんて夢を抱いているはずがない。そう思いたい。信じたい。
「……俺もそろそろ終活を進めなければならない」
「はあ」
「で、倉庫に俺が集めた文学全集(それなりに貴重品。図書館にもそうそうないレベル)があるだろ」
「……はい」
「あれ、『メルカリ』で売ろうぜ!」
……ついに来た。YouTubeでもTwitterでもなかったが、やはり彼はインターネットに夢を見ていた――。
「いやお父さん、あれはさすがに専門の古本屋さんに見てもらったほうがいいって」
「いや! ああいう店は買い叩かれるだろ!(謎の不信) ネットなら高く売れる!(謎の自信)」
父よ。顔の見える相手より見えない相手を信用するのか。夢見すぎだろ。
「…お父さん。」
私は興奮する父をなるべく刺激しないように静かに言った。
「メルカリに出品するには、まず(中略)だいたい考えてみてくださいよ、誰が会員登録して(中略)そして仮に買ってくれる人がいたとして、あの大荷物をどんな方法で梱包するとか、送料どうするかとか、『写真と違う』なんてクレームが来たらどうするかとか、いったい誰が……」
…って言えば諦めると思ったけど、父のあの目は「そういうメンドクセェことはお前がやるに決まってんだろ」と言っていた。
や ら な い よ
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