第19話 ドライガーの腰の球体の能力を予想出来ただろうか?

 ギルド……おそらくは国からの隣国調査の仕事を受けたフーライとキリカ。

 2人は塩と携行食を大量に買い込み、他にも必要になりそうな物を余分に買っていく。

 幸い資金なら先日ダンケルから渡された袋に、100万入っていたので気にならない出費だ。


 着替えや毛布、外套なども。この際複数余分に購入しておく。

 毎回地下トーチカが使える状況だとも思えなかったので、2人用のテントも購入。

 テントは独立式の物を選び、組み立てたまま収納した。

 これで取り出すだけで使えるからだ。

 風が強くて飛ばされる心配があるなら、それこそ他を無視して地下トーチカを作ればいい。


 ほぼ全ての購入品はフーライの収納の中だが。

 収納のないハンターが持つのと同じだけは、各自袋に入れて持っている。

 本来、能力とは秘匿するもの。

 なので収納持ちとバレないように、常に常人を装う事にした。


 宿に戻り受付で明日の朝まで泊まり、以降の分はキャンセルにした。

 キャンセル料に半分持っていかれたが、後でギルドに請求しようとキリカは思った。

 早めに食事を取り部屋へ戻る。


 キリカに背を向ける形でベッドに座るフーライ。

 キリカは鎧を脱いでから、インナーも脱いでいく。

 腰まで脱いだ時に、次からは上半分を裏返して腰から履こうと思った。

 自分達と所持品の全てに洗浄を使い、それぞれのベッドで眠る。

 朝日が登れば行動開始だ。

 長旅が予想されるので、休める時はしっかり休もう。



 目覚めると、キリカがインナーを装着し終えたところだった。

 鎧の装着を手伝い、フーライ自身はドライガーを発動する。

 キリカは面頬を着けずに、左右に分けたまま兜の頬部分に収納してある。

 フーライも顔部分だけは解除して、顔が覗けるようにしてある。

 こらから朝食であるし、街中で顔を隠す理由がないからだ。




「こんな事なら昨日のうちに、ダンケル殿に手入れを頼んでおくのでした」


「そうは言っても受けた時間からして、間に合わなかったと思うが?」


「ええ、まあ。刀の手入れは特殊ですから、例えダンケル殿でも間に合ったかどうか」


「うーん。なんとかなる、かもしれない」

「本当ですか、フーライ殿!?」


「まあ見てな」


 フーライは収納からウサギの角刃を1枚取り出すと、中程で折ってから腰の球体へと吸収させた。

 そのまましばらく歩いてから。


「出来た」


 と言うと。腰の球体から折れたはずの角刃が、元に戻った状態で出てきた。


「なっ、なんなのですかそれはー!!」


 キリカが振り返ると、丁度球体から角刃が取り出され始めた瞬間だった。

 そして見終わったキリカは、驚き叫んだ。


「こいつは中に入れたものを調べて、最高の状態にして出してくれるらしい。ただ半分しか入れなかったら、材料がないから元に戻せない。そんな制限はあるけどな」


「そんな能力があるなら、是非とも某の刀の修復を!」


「まあ、ちょっと待て」


 抜刀位置の関係から右を歩いているキリカに、掲げたドライガーの拳の甲を見せ刃を出す。


「こいつはウサギの角を何十にも固めた刃なんだが、キリカはどんな性能だと思う?触ってもいいぜ」


「では、失礼して」


 フーライの意図は読めないが、この頭の回る相棒の考えに乗る事にした。

 キリカは拳を見やすい位置に移動させると、刃を調べ始めた。

 それからしばらくして、フーライの意図が読めてきた。


「硬いだけではなく、しなやかさも併せ持つ金属に近い何かで出来た角刃ですか。1本なら使用に耐えられませんが、これならこのまま刀に加工するならかなり優秀な素材と言えるでしょう」


「わかったみたいだな。そう、俺の収納には。まだまだ山ほどウサギの角が入っている。どうする?キリカ」


「お願いします。某の刀、フーライ殿に預けます」

「任された」


 フーライはないよりマシと、代わりの武器として金属入の木刀をキリカに渡す。

 預かった刀は腰の球体に吸収させ。

 そのまま掌から直接、収納の角刃を無数に吸収へと吸収させていく。



 キリカの刀は、まだ修復され始めたばかり。

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