第14話タイヨウの現実

北風太陽には友達がいなかった。

これといった趣味もない。

最近では両親とも関係も良好とは言えず、最後に会話を交わしたのはいつ頃だろうか。

と思っている。

客観的にタイヨウを見れば小学生、中学生の頃からの友達はいる。

それに読書に大半の時間を費やしていることから趣味と呼べるだろう。

両親とも必要最低限のコミュニケーションを交わすくらいには会話をしている。

16歳という多感な時期を加味すれば、北風家以上に険悪な家庭は同世代にいくらでもあることだろう。

しかしそれはあくまでも客観的に見ればの話である。

タイヨウはそう思っていなかった。

高校に進学してからというもの、クラスの中ではなかなか友人を作れずにいた。

そんな状態が夏休みを目前とした3ヶ月間も続けば、高校に通うのも苦痛以外の何物でもなかった。

問題の多くはタイヨウ本人にあった。

父親の望む志望校に合格することができず、滑り止めの学校に入学したことを未だにわだかまりとして心に残している。

そのせいか同級生をどこか自分よりも下に見て接してしまう悪癖が抜けない。

言葉を交わす度に否定から入る、揚げ足を取る彼と、友達になろうとするクラスメイトはいなかった。

”高学歴な父の血を引いている自分はもっと上の学校に通うべき人間だ”という歪んだプライドを持ち、その父の母校が不合格であったという結果に自尊心は傷ついていた。

その間でいつまでも折り合いを付けることができずにいるのが、今のタイヨウであった

また第一志望校から不合格の通知が来てからというもの、家庭の環境にも変化が生じていた。

それまでタイヨウのことを甘やかし放任していた父親は、露骨に学業に口を出すようになっていた。

せめて自分と同じ大学には進学してもらいたいという気持ちが透けて見えており、それがタイヨウにはたまらなく不満であった。

そしてタイヨウの反骨心を期待してか、2歳年下の妹により目を掛けるようになった。

これもタイヨウの気に障った。

母親は父の肩を持ちつつもタイヨウを勇気づけ、入学した学校で新たな目標を持つことを勧めた。

一度学情から遠ざかることで、タイヨウ本来の個性が開花することを望んでの発言であった。

しかしタイヨウからしてみればそれは、それまで秀でていた勉学から見切りをつけられたとしか思えず、母親を猜疑の目で見てしまう。

そして歳の近い利発で活発な妹からは何も言われなかったが、それはそれで兄として張り合いがなく虚しかった。

それまで妹とは良好な関係を築けてきただけに、自分に関心がなくなってしまったのかと悪い方へ考えていた。

妹としては兄の苦悩する現状を慮り、口を出さず静観していただけに過ぎない。

学校、両親、兄妹、自分を取り巻く環境が高校に入学してからというもの、全てが気に入らなかった。

そんな環境をどうしたらいいのかもう分からなくなっていた。

結果、気づけばタイヨウには自分の部屋しか居場所はなく、そこで無為に過ごす日々が長いこと続いていた。

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