ゆっくりと、その子の嗜好を辿る。

耽美な文章で描かれたこの女の子の禁忌的嗜好の濃密さは、まるで私達読者を湖底に引き摺り込みながら、息のできない苦しみさえ愉悦に変えてしまうような抗い難い引力を持って、作品の魅力に取り込んでしまうように思えます。

『嗜好』と、一言で言ってしまうこともできるのかもしれませんが、指先に針を当てる感覚もそれ以上の自虐も、ママからのお仕置きもライーサの事故も、全て『嗜好』の一言で片付けてしまうにはあまりに背景が重く、それらを一つ一つ辿っていくことで、いかにして彼女がこの『嗜好』に辿り着いたかを示してくれているように感じます。

文章を楽しみ、言葉を楽しみ、情緒を楽しむ。
このような作品に触れると、その読書の喜びを思い出すように思います。

この女の子の甘美な愉しみに共鳴していく感覚を、ぜひ味わっていただきたいです。

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半身