夏は全裸。酒を飲んだ日はさらなり。

 最近、全裸で生活している自分に違和感を抱かなくなってきた。

 

 飲んでいないときは、流石にパンツくらいは履く。逆に言えば、パンツ以外履かないし着ない。素面のときに全裸で過ごしていると、人間としての尊厳はどこに行ったのだろうかと考えてしまう。生きる上で必要不可欠なプライド、尊厳、矜持……。


 だけど酒を飲んでいるときは、全裸になる。気がつけば全裸になっている。ようし、脱ぐぞ! と思うこともなく当然のように、全裸になる。酒を飲んだ結果としての全裸なんだ。酔っているときに人間の尊厳なんて関係ない。クソ食らえだ。生きる上で必要不可欠なプライド? 酒には不要だ。矜持? んなもん知るか。


 少しでも金に余裕があれば常に酒を飲んでいるから、完全に酒が入っていない時間は短い。


 仕事によっては仕事中に日本酒をラッパ飲みしたりする。

 酒は飲んでも良い。酔ってはいけないだけだ。


 そういうわけだから、最近は全裸でいることが増えた。僕の部屋はアパートの二階にあり、わざわざ部屋を覗こうとしない限りは外から見えない。カーテンを開けて全裸。全裸で鉄のフライパンを振るい、全裸で掃除をし、全裸で仕事をし、全裸でゲームをする。そして全裸で風呂に入るが、寝るときはパンツを履く。


 どうして脱ぐのかと聞かれると、困る。


 夏だからとしか言いようがない。


 エアコンの風に弱い体質だから風の強さを弱めるしかなく、温度も高めに設定するしかない。そうすると、最後には脱ぐしか選択肢が無くなる。逆に冬は厚着するしか選択肢がないから、家の中でマフラーを巻いている。


 要は全裸は夏の風物詩。


 春はあけぼのと同じ文脈なのだ。


 夏は全裸。


 だけどここ数日は酒を飲めていないから、パンツだけ履いている。

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