人嫌い、解散する

「さてそれじゃ、君あそこに入ってきてよ。」


「なんで俺が。」


「さっきの店長の話を、実際に見てみたくてね。僕のような部品より、世間的には君の方が正規品だ。」


「高山くんは自分を下に見すぎだ。」


「そうでもないと思います。彼にも言われたんですが、僕は人格が破綻してるかと。」


「そこまでは言って…ないと思うぞ。」


「おいおい。」


「そこに彼のように、求められる人材が行けばどうなるのか?見てみたいんです。」


「…まあ他の注文ないか聞くくらいなら。」


「じゃあそれで。」


正人はテーブル席へ、秀人と店長はその様子を見る。


「しかし、結果は見えてるがな。」


「そうですかね。」


「高山くんの歪みに、彼らはぴったりはまったんだよ。もうあの場所は、きっと君しか入れない。」


「その言葉、今の僕が望まない第一位ですよ。」


「…店長、追加は無しだと。」


「分かった。」


「なあお前、俺には無理だぞ。」


「どうしてさ。クラスじゃ君は、上手くやってるんじゃないのかい。」


「…蔵野さんは聞き逃しそうになる。あの会話テンポは、掴むまで時間がかかりそうだ。生山は単に声がでかい。すると蔵野さんや岸辺の声が、時々聞こえないんだよ。岸辺も主張するタイプじゃないから、ボソッと言うしな。」


「あの短時間で流石じゃないか。」


「続けるぞ。会長は回し役にピッタリだが、主張が少ない。周りの言葉を漏らさないよう、聞きに徹してるからかもな。笠原さんは一言だから考えが読みにくい、姫野さんははっきり意見を言ってくる。心愛さんは…緩い。」


「はい正部くん、これは奢りだよ。」


「ありがとうございます…あの中心に入る奴は、それぞれのテンポについていけて、なおかつ返答もしないといけない。さらに一人に集中すると他を漏らす、すると会話にズレが出てきておかしな事に。」


「君、将来は分析官なんてどうだろう。」


「うるせえ。たった2分もない会話で、ここまでまとめたんだぞ。」


「まあ最初は難しくても、しばらくしたら慣れるさ。」


「俺は無理だっての。店員だから話す機会もあるが、普段じゃ用事もない。」


「僕の代役って事で1つ。」


「そしたら高山くん、家まで押し掛けられると思うが。」


「まあ何かあったのかって、問い詰められたいなら良いぜ?」


「…やめとくよ。」


秀人はため息を、正人は疲れて深呼吸を。普段関わらないグループに飛び込み、その性格すら考えていた正人の苦労は多かった。秀人は手っ取り早く代えを見つけられず、悩むことになった。


「もう良いんじゃないか?高山くんは卒業まで、あのグループと過ごしても。」


「1%でも一人になれる世界があるなら、僕はそこに行きたいんですよ。」


「筋金入りか…まあ諦めるのも手だってこと、人生の先輩から教えとく。」


「あっそれは学びました。ここまでで何回か、諦めを使う機会があったので。」


「…そうなんだ。」


「お前もせっかく好かれてるのに、変な動機だよな。一人になりたいなら、そう言えば良いじゃねーか。」


「言うよ?僕のストレスがピークに来た日は、お一人デーを設けるかはね。」


「…ああそうですか。」


「なんで2人とも、呆れた顔なのさ。」


「「なんでもない。」」


「店長さん、私そろそろ帰ります。高山秀人くん、確かに覚えたから。」


「明日には忘れて、仕事頑張ってください。」


「君も忘れないでよね。まだ私は、1つ借りを返さなきゃいけないんだから。」


「だからいらないってのに…」


「津河山さん、また来店してください!」


「どうも。」


舞は会計を済ませ、外の車に乗り込んだ。どうやら仕事らしい。


「…何を…してたの?」


「先生!この後はどうしましょうか!」


「ぼ、僕としては解散でも…」


「まあ時間も午後に入る頃か…今から戻ることもできるな。」


「2択。」


「運命の選択になるわね。あなたの答えは、想像できるけれど。」


「もしくはーこのままウチとーバイトとかー。」


「解散で。」


「…次は…試合観戦?」

 

「林さんの試合日ですね!」


「な、生のボクシングが見れるなんて。」


「む?そう言えばチケット代を渡してなかったな、今でもいいかな。」


「いらない。」


「…まあ部活の試合に、チケット料金は聞かないもの。」


「まあそうだろうね。料金を取るのは、将来の話でしょ。」


「そう。」


「ウチは他校だけどー平気かなー。」


「言っとく。」


「…それじゃ…当日ね。」


「今後はキズナで!」


「そ、それじゃあまた。」


「うむ。みんな健康に気をつけて、しっかり揃おう。」


「承知。」


「また会いましょう。」


「んじゃーねー。」


各自会計を済ませ帰り出す。秀人も料金を払い、その流れにのって帰っていった。


「はあ、騒がしいのがいなくなりましたね。」


「…さて正部くん。男二人、頑張ろうか。」


男二人、まだ仕事が残っていた。

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