人嫌い、久しぶりのバイト

「行ってくるよ。」


「みゃー。」


海の家バイトがあったため、寄り道での仕事は久しぶりの事になる。やり方を忘れたわけではないが、何故だか緊張するものだ。


「制服は持ったし、あとはあいつと一緒じゃなきゃ完璧かな。」


「みゃー。」


「外に出る?だったら僕は遅くなるから、待つ事になるけど。」


秀人が試しにドアを開けると、タマは外へ出ていつものように散歩へ出掛けた。


「…行ってらっしゃい。」


タマの見送りもそこそこに、秀人は喫茶寄り道へ到着した。


「おはようございます。」


「おー秀人じゃんかーおっはー。」


「よお高山くん。久しぶりだな、ちょっと日焼けしたか?」


「まあ海に連れ出されたので。」


「そんなこと言ってー楽しそうだったよー。」


「目が腐ってるんじゃないですかね。」


「やーん店長ー秀人がいじめるー。」


「それで?高山くん的にはどうだったよ。」


「かなり稼げましたね。ここを今辞めても、食っていけそうです。」


「…不吉なこと言わないでくれよ。」


「まーまー秀人も冗談キツいぞーうりうりー。」


「やめろ。」

 

「いちゃつきもそこまでにして、店開けるよ。」


「はーい。」


「僕は被害者です。」


久しぶりのバイトといえ、始まってみれば体は覚えているようだった。


「順調だねー。」


「いつも通りじゃないですか。」


「海の家だとー忙しすぎてー目が回ってたよー。」


「はあ。僕はのんびり緩やかに、仕事してましたけど。」


「それは良かったよー。」


「話もいいけど、これ4番テーブルね。」


「はい。」


「もー店長ー。」


「月宮さんも頼むよ?」


「はーい。」


夏休みだからと忙しさが増すわけでもなく、淡々と仕事を終わらせていく寄り道スタッフ。来店する常連客の中には、久しぶりに来た秀人と心愛に話しかける人もいた。


「あらまぁ、仕事辞めちゃったかと思ってたのよ。」


「少し家の用事が。」


「頑張ってよねお兄さん、店長さんも歳だから。」


「誰が歳ですか!まだまだ頑張れますよ!」


「あれ心愛ちゃん、少し焼けた?」


「まーねー。」


そんなやり取りを秀人はうまく流し、心愛は受け止めて仕事をしていた。気づけば閉店間際となり、二人は帰り支度を始めるのだった。


「ふう。」


「お疲れ秀人ーウチの癒しいるー?」


「お断りします。」


「相変わらずガード固いね。月宮さんに言い寄られて、こうもなびかないのは凄いよ。」


「秀人はー堅物だねー。」


「…誉め言葉として受け取りましょう。」


「多分分かってないから…許してあげて。」


「んー?」


「そうだ高山くん。これからのシフトだけど、事前に貰ったままで平気?」


「大丈夫ですけど、どうして聞くんですか?」


「ほら。学生の予定ってのは、急にできたり消えたりでしょ?夏休み前はなかったのに、急にイベントやら祭りに行くって決まることとか。」


「僕に限ってそれはないですね。」


「いやー分からないよー。」


「まあ出れない日があったら早めに教えて。最悪俺1人、もしくは正人くんとゆっくりやるから。」


「はあ。」


「それじゃー店長お疲れー。」


「お先に失礼します。」


「ありがとね2人とも!」


強制ではないが、遅くに帰る心愛を送ってほしいと言われている秀人。道もそこまで外れないので、必要はないだろうが付き添っている。


「ねー秀人ー。」


「無理です。」


「えーまだ何もー言ってないのにー。」


「大方頼み事ですよね。」


「正解ー。」


「そういうのは僕じゃなく、こっちにお願いします。」


秀人は昼食会のグループを見せる。心愛が入ったところで、問題はないと秀人は判断した。


「これってー誘われてるー?」


「好きにしてください。まあ相談事なら、こっちで呟く方が答えをもらえると思いますよ。」


「そっかー…沙弥と明奈もいいー?」


「誰でしたっけ…まあいいんじゃないですか?」


「それじゃーお言葉に甘えるねー。」


秀人は年のために、昼食会グループにメッセージを残すことにした。


秀人[バイト先の人が相談だそうです。後は頼みます。]


このメッセージに何人かが返答してきたが、秀人はこれ以上することもないとキズナを閉じる。


「よーし、ウチ達もーグループ入りー。」


「じゃあ後はそこで。」


「秀人もーいざって時はー助けてねー。」


「予定が空いてれば行く可能性はありますね。」


「もー相変わらずだなーうりうりー。」


「白紙にするぞ。」


「やーん、それだけはー勘弁ー。」


心愛の家付近に来たので、送りはここまでと別れることになった。ふとキズナを見ると通知が多く来ていたが、秀人はこれをスルー。


「僕がいなくても、こんだけ人数集まれば知恵くらい出るでしょ。そのまま解決してくれれば、僕要らずって事にもなるしね。」


秀人もようやく家に着く。ドアの前には丸くなり、ぐっすり寝ているタマがいた。


「よく寝れるね…このまま部屋に入れるか。」


寝ているタマを抱え、秀人自信も帰宅する。明日からもしばらくバイトなので、入浴を済ませてすぐ寝ることにした。


彩花[また予定が増えそうね。]


そんな通知を見ることもなく。

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