人嫌い、海へ行く

「ついに来ちゃったか…」


「みゃー。」


「じゃあ行こうか。」


「みゃー。」


バイト続きの生活を過ごしていた秀人、気づけば行くことになった海の家バイトの日になった。


「それじゃあタマ、この中入ってね。」


「みゃー。」


タマをキャリーバックへ入れ、秀人は喫茶寄り道へ向かう。キズナを見れば、すでに到着している奴もいるらしい。


「うわ早いな。まだ30分前なのに、何やってんだか。」


「みゃー。」


「まあよほど暇なのか、遅刻防止のためだろうね。」


「みゃー。」


まだ時間はあるとゆっくり歩き、秀人が到着するころには全員集まっていた。


「先生!おはようございます!」


「…おは。」


「きょ、今日も暑いね。」


「やあ高山くん。」


「ちゃんと来たわね。」


「久しぶり。」


「やほー秀人ー時間ぴったりだねー。」


「よお高山。」


「こんにちわ。」


「…人が多い。帰りたい。」


「みゃー。」


「…まあまあ。」


「おったまさん!お元気そうで!」


「ほ、本当に連れてきたんだね。」


「それで、迎えはいつ来るのかしら?」


「可愛いねーねこちゃーん。迎えはーもうすぐだよー。」


「心愛のおじさんだろ?」


「博人さんだよね。」


「そーだよー。」


「…これ以上人が増えるのか。」


「みゃー。」


「おーい!待たせたなー。」


そこにやって来たのはマイクロバス、その運転席から現れたのは月見博人つきみやひろと。今回のバイト募集を心愛に頼んだ人物だった。


「おじさーん、そんなにー大きなバスいるー?」


「どんぐらいいるかー分からなくてなー!」


「…似てるね。」


「遺伝てものはあるんだね。」


「みゃー。」


「こんなに大きなバス、楽しみですね!」


「や、やることが派手だね。」


「修学旅行で見たことがあるな。」


「まあ人数が多いと、あれくらいがいいのかしら。」


「凄い。」


「おじさんもよく運転できるよな。」


「ワクワクするよね。」


「それじゃーみんな乗ってくれー!」


「はいはーい、並んで乗ってねー。」


来た当初は戸惑ったが、乗ってみればバス内は快適だった。秀人は奥の席に座り、隣にタマを置いて誰も座れないようにした。


「失礼。」


「させないよ。僕の隣はタマ以外ありえない、これだけは譲れないからね。」


「…駄目なの?」


「あーほら林さんはあちら!麗華さんはこちらです!」


「ざ、座席は事前通りにね。」


「そうだぞ?高山くんにストレスを与えると、ふらっと消えてしまうからな。」


「向こうに着くまでは、彼の好きにさせましょう。」


「むー我慢するー。」


「ほら心愛、座らないと危ないぞ。」


「心愛ちゃんはこっちね。」


「なんだ、打ち合わせ済みなら安心したよ。」


「みゃー。」


どうやら秀人をゆっくりさせるため、全員が気をつかっていたようだ。秀人は後ろでタマを眺め、読書に耽っていた。


「んー…気にくわないオチだな。」


「みゃー。」


「どう考えても、犯人は隣のおじさんだよ。」


「みゃー。」


秀人とタマの会話?は、彼らにとっては普通の事だった。しかし視線を感じ、秀人は本を読んでいた顔を上げる。


「…なんかよう?」


「猫ちゃん。」


「…鳴いてるの…初めて。」


「自分や麗華さんが話しても、顔を向けてくれるだけです!」


「た、高山くんとは話すけど…前にお邪魔したとき僕には興味なさそうだったな。」


「タマは好き嫌いがあるのか、私も撫でるのが精一杯だったよ。」


「近くには来てくれたけど…触れなかったわね。」


「えーウチもやるータマちゃーん。」


「…」


「おいタマ?心愛が呼んでるぞ?」


「…」


「本当に高山くんが好きなんだね。」


「そうなの?」


「みゃー。」


「無念。」


「…絆だね。」


「自分もそこまでいけるよう、頑張ります!」


「ひ、引っ掻かないよね…」


「まあ泊まりの間に、少しは仲良くなれると。」


「日焼けに気を付けないとね。」


「よーし、頑張るよー。」


「泳ぐのも楽しみだな!」


「水着のお披露目もあるしね。」


「…はあ。気が重たい。」


「みゃー。」


窓の外から見え始めた海を眺め、秀人は1人重い気持ちになるのだった。

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