人嫌い、休日の過ごし方
携帯を買った翌日、早速ネットを使いバイト探しをしていた秀人。
「へー、交通整理なんて楽そうだね。」
「ミャー。」
「でももうすぐ夏か…暑いのはまずいな。」
季節はもうすぐ夏になり、その暑さは仕事によっては大打撃になる。外で作業する仕事にとっては、地獄といっても過言ではない。
「…悩んでも仕方ない。気分転換に外出てくるから、タマも行ったら?」
「ミャー。」
「よし、行こうか。」
部屋で1人煮詰まっても、良い結果というのは出にくい。外で気分転換を図ることで、アイデアが降りてくることもある。
「じゃあね。もしここが嫌だったら、余所の家に行っても良いから。」
「ミャー。」
「返事されても…まあ任せるよ。」
猫の室内飼いも、あまりストレスには繋がらないそうだ。しかし部屋にキャットタワー等、用具品を揃えてない秀人は外に出して遊ばせていた。
危険な行為ではあるが、もともと野良のタマを閉じ込めるのは悪い気がしていた。もし昔の居場所や、世話になってた人がいるならそっちに行く方が幸せと考えていた。
「さて。気晴らしに本でも買いに行こう。」
秀人は本屋に向かう。彼にとって本は、人間を知るための教科書になっている。どんなタイプが存在して、どう考えるのかを本で読むことが、他人と関わらない秀人にとって唯一の思考材料だった。
「ついでに、タマの遊び道具でも見よう。」
もし戻っていた場合に備えて、少し猫器具を買うことにした。近くのスーパーでは揃わないため、少し遠くの商店街で探すことにした。特に近所付き合いもないため、気楽に歩いていた。
「んー…久しぶりに1人か。なんて気楽で、こうも羽が伸びた気分なんだろ。」
入院から帰って来てみれば、何故か付き合いの輪が広がってしまった秀人。どうしてそうなったかと聞かれても、本人には一切心当たりがない。なんなら、どう繋がりを断ち切って1人になるかを考える秀人だった。
「お、この本続編が出たのか。」
考え事は時間を使う。気づいたら目的地に着いた秀人は、まず本を探すことにした。彼が読むのは推理やサスペンス、要はドロドロなのが好きだ。
「なるほど…犯人は助手だったのか。買おう。」
彼の買い方は変わっていて、まずオチを読む。オチのインパクトで買う本を決め、どうやってそこに繋がるのかを楽しむタイプだ。また、事前に犯人が分かっていて読むと、犯人がどう騙していくのかの過程が楽しめるらしい。
「さて。後はペットショップだね。」
ペットショップを検索すると、近くにあることが分かった。こんなときだけは、携帯に感謝する秀人だ。
「うわ、便利だな。」
行ってみると小さいながらも品揃えが良く、欲しいものはすぐに揃った。
「ありがとうございます。猫ちゃんですか?」
「ええ。初めてなので、道具を揃えようと。」
「なら、爪研ぎボードも買った方がいいですよ。爪切りも必要ですが、壁で研がれると傷になっちゃいますから。」
「なるほど。」
業務的な会話は、秀人にとって苦痛でもない。なんなら、素人が無理するより知識人に聞いた方が確実な事が多い。
「ありがうございました。」
「どうも。」
買い物が終わった秀人は、まっすぐ家に帰る。食事は昨日父親が置いていったカップ麺が残っているので、それで済ませるとした。
「ミャー。」
「あれ、帰ってきたんだ。お帰り。」
「ミャー。」
ドアの前で寝ていたタマを中に入れ、秀人も家に入る。誰とも会わず、静かに過ごせた秀人は満足の一日だった。
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