第104話
「……泉、いきなりどうしたの?……なんか、いつもと違う」
動揺が顔に現れている結の言ってる事が耳障りだった。そんな事聞きたいんじゃないんだ私は。
「結はさ、……私の事好き?」
「え?……そんなの当たり前でしょ」
「当たり前ってなに?……私はさ、好きか嫌いかで聞いてんの。はっきり答えてよ!」
「だ、だから、それは……」
さっきから私の聞いている事に答えてくれないもどかしさが私の怒りを強くする。私は結の手首を強く握った。
「それはなに?好きなの?嫌いなの?早く教えてよ!」
「…ちょっと、落ち着いてよ……!痛いから………」
私が思わず詰め寄ると結は怖がるように私を見つめるから頭が冷静になってきた。
私はなにをしてるんだ。モヤモヤしてイラついて、醜く激しい嫉妬をしてしまっていた。私の好きな結が私に恐怖を感じている。こんなの最低だ。
「ごめん……」
私は詰め寄っていた結から離れた。これじゃ宮本と同じだ。激しい自己嫌悪に私は結の顔を見れなかった。
「……いきなり怒ってごめん。結が告白されてんの見てから嫉妬してた。……結の気持ちは分かってるし信用してるんだけど、あいつが結を抱き締めてたのが許せなくて……。ごめん本当に」
情けないにもほどある。結に嫌われたかもしれない。恐る恐る結を見ようとしたら結は私を抱き締めてくれた。
「別にいい。私の方がごめん。私もうこれから告白受けないようにするから謝らないで」
「で、でも、私達の事言えないじゃん…」
結が言ってくれた事に動揺していたら、結は私に腕を回しながら優しく見つめてくれた。
「言えないけど許嫁がいるって言う。結婚はできないけど、あながち間違ってはないでしょ?詳しく聞かれたら適当に誤魔化すし、泉に嫌な思いさせたくない」
「……結」
「それにもう泉以外に抱き締められるなんてへましないから。あいつに掴まれた時点で投げてやれば良かった。泉と付き合ってるからって、ちょっと油断してた……」
怒ってしまったのに結の優しさが身に染みて泣きそうになる。いつも本当に私をよく考えてくれる結に視線を向けられなくて目を逸らして謝った。
「ごめん。我が儘言って」
「私は我が儘って思ってないから。泉、こっち見て?」
結に言われた通り顔を向けると結は笑ってキスをしてくれた。
「好き。大好き」
「……うん。私も好き」
私を助けてくれるのはいつも結だ。私はそのまま何度かキスをすると強く結を抱き締めた。やっと気持ちが落ち着いて大好きな結を感じられる。
「泉苦しい…」
「あぁ、ごめん。これで平気?」
「うん」
少し腕を緩めると結は抱きつきながら私を間近で見つめた。
「あの時助けようとしてくれてたの?」
確信を持っているような結はただ穏やかに笑っていた。結には本当に何でも見透かされている。私は恥ずかしさを感じながら正直に答えた。
「そりゃそうだよ。結は私と付き合ってるし困ってたから。しかも、私も本当にムカついたから割って入ろうとしてたよ」
「なにもできないくせに割って入って殴られたりでもしたらどうするの?」
そんなのカッコ悪いけど答えは一つだ。私は迷いなく答えた。
「殴られても結の事は守るよ。結だけはどうにか守って逃がすよ」
真面目に言ったのに結は嬉しそうに笑った。
「ねぇ、忘れたの?」
「なにが?」
「前に言った事」
「どの話?」
結とはもう一年以上一緒にいる。話した事は大体覚えているはずだけど今一ぴんとこない。結は私の頬にキスをした。
「なにもできないのに皆の事守ろうとしてた話。千秋達と動物園に行く時にボディーガードの話したでしょ?泉あの時と同じような事言ってる」
「あぁ、あれか」
初めて勉強会をした時に話したのを思い出した。懐かしいがよく覚えていたものだ。結は嬉しそうに続けた。
「あれ私嬉しかった。優しいんだなって思ってたのに……今じゃ付き合ってるなんて……あの時の私からしたら信じられない」
「そうだね。私あの時からずっと結が好きだったよ。なんか懐かしい」
あれから色々あったのに私の気持ちはずっと変わっていない。結は私に強く抱きついてきた。
「ずっと好きでいないと前みたいに投げるからね」
結の脅しも前から変わらない。いや、前に比べたら優しくなったかもしれないが。
「あれ本当に痛かったからもうやめてよ?結が嫌いって言っても私はずっと好きだから」
「じゃあキスして?ちゃんと愛情表現してくれないと好きって分からない」
結には何でこんなに胸がドキドキしてしまうのだろうか。結が求めてくれるだけで私は嬉しくて恋しくて応えてあげたくなる。
「結?そのまま首に抱きついてて?」
「え?うん」
私は結を喜ばせてあげたくて背中に腕をしっかり回すと結をお姫様抱っこしてあげた。
「よいしょ!こないだも思ったけど結軽くない?ちょっとそのまま掴まっててよ?」
「あんたいきなり何してんの?……恥ずかしいんだけど」
怒りよりも恥ずかしさが勝った結は私を恥ずかしそうに睨んできたがこの感じは大丈夫だ。
「いちゃいちゃしてるだけなのにそんな照れないでよ」
「これは違うでしょ。……早く運べバカ」
私は軽い結を揺らさないように運んだ。ソファについて結を解放すると結を私の足の間に座らせて抱き寄せる。そしてお互いに引き寄せられるようにキスをすると結が手を握ってきたので握り返した。
「結ってさ、嫉妬とかしてもちゃんとコントロールしてるんだね」
私は結の温もりを感じながら話しかけた。初めて感じた激しい嫉妬は信じられないくらい自分を乱した。全く私に怒ったりしない結は大人だと思う。
「私は表に出さないだけ」
「それでもすごいよ。私全然ダメだった。もやもやしてイライラして大変だったよ」
何でこんなにガキなんだろうと思うがそんなすぐに変われないのが人間である。私はまた嫉妬をしたら同じ事になりそうで怖かった。
「嫉妬なんだからそうなるでしょ。泉も溜め込まないで言ってね?私がどうにかするから」
頼りになる結はかっこよくて私はまたキスをした。やっぱり私には結しかいない。
「結、本当に大好き。いつもありがとう」
「……別に」
「さっきはごめんね怒って」
結を抱き締めて改めて謝る。結は抱き締め返してくれた。
「平気。……ちょっと怖かったけど、そんなに嫉妬してくれると思ってなかったから嬉しかった。私がとられるって思ったの?」
「だって私告白されてるの知らなかったし、あいつが結を抱き締めてたから…」
ほぼ情けない言い訳なのに結は呆れたように笑って囁いた。
「じゃあ、今からする?」
「え?」
突然の誘いにどぎまぎする。結は体を離すと色っぽく笑った。
「不安だったんでしょ?それに最近してないし…。私が泉をどれだけ好きか教えてあげる」
「でも、時間とか平気?」
こんなつもりじゃなかった私はいつも自分からしてるくせに戸惑っていた。結とできるのは嬉しいんだけど結に言われると緊張する。結はそんな私に反して落ち着いていた。
「そんなのどうでもいいから。脱がして?したくないの?」
「それは、したいよ…。じゃあ脱がすよ?」
「うん」
結に誘われてしたくないはずがない。私は結の服を脱がした。もう何度もしてるのに結に見られていると落ち着かない。
「泉?」
ショーツだけになった結は私に膝立ちになって肩に手をおくと愛しげに私を見つめる。
「泉にしかこういう事させないし泉にしか私は体を見せた事ないからね。私の全部を見て触って良いのは泉だけ。……だから泉は特別なんだからね?」
「うん…」
結から目が離せなくて生唾を飲みながらショーツを脱がす。結は私にキスをすると恥ずかしそうに呟いた。
「胸……舐めて?もう濡れてるから……中にもほしい……」
興奮を隠さない結に私は無言で頷いた。
私達はその後ソファで何回もしてしまった。エッチを久しぶりにしたのもあるが結がいつもより気持ちを伝えてくれるから私は嬉しくて結を激しく求めた。
私の嫉妬は結の私への気持ちを考えると本当にいらないものだったのだ。
しかし、明日は結に予定があるから早めに帰った。結のおかげで嫉妬の気持ちもなくなって結の事がやっぱり好きだなと再認識した私は気分が良かった。
そしてやってきた中間テストは今回も良くできた。問題は梨奈だったが梨奈はテストが終わった瞬間からできたと興奮して私に言ってきたから大丈夫だろう。
私達はテスト返却を楽しみに待っていた。
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