第101話
梨奈はその日の放課後私に話しかけてきた。
「泉!今日テスト前の気晴らししね?カラオケ行きてーんだけどあたし」
その誘いは楽しそうで私はすぐに乗ってしまった。今日は予定がない。
「カラオケ?良いじゃん、行く行く。久しぶりだな~。あ!プリもとり行こうよ?」
「あり!あー、ちょっと待って。あたし腹減ったからポテトも食いてぇ」
「いいよいいよ。ポテトも行こう」
「よし!じゃあまずはプリだな!」
予定が決まった私達は鞄を持って教室を出た。今日は久々にカラオケに行く。何を歌うか今から楽しみだ。
「梨奈なに歌うの?」
「あたしはKANAKO。超好きなんだよKANAKO」
KANAKOは今人気の女性歌手だ。恋愛ソングを歌うKANAKOの歌は私も好きだったからテンションがあがる。
「え?!私もめっちゃ好きKANAKO!新曲やばくない?」
「え、泉も聴くの?KANAKO本当やべーよな。新曲あたし死ぬほど聴いてんだけど」
梨奈は驚いて嬉しそうに話した。歌も気が合うみたいで嬉しい。
「まじ?もー、早く言ってよ梨奈。知らなかったよ」
「いやこっちだからなそれ。あたしKANAKO好きすぎてライブCD集めてっから貸そうか?」
梨奈の発言に私は跳び跳ねそうになった。そんな嬉しい申し出を断るはずがない。
「貸して!勉強頑張って教えるから!」
「じゃあ、持ってくるよ。すっげー良いから期待しとけ」
「梨奈ありがとう。本当に嬉しい。称えるわ」
「大袈裟じゃね泉。てか、テンション上がりすぎだし。ビビったわ」
二人で笑いながら下駄箱で靴を履き替えて校門を出ようとしたら校門には結と琴美がいた。琴美は私を見つけると大きな声で呼んできた。
「泉!」
「琴美?どうしたの?」
琴美は私に近寄ってくると梨奈に目を向けた。
「あれ、梨奈泉と友達なの?」
「そうだけど。おまえら友達だったの?」
梨奈は私と琴美に目を向ける。琴美はにっこり頷いた。
「うん!琴美と泉は親友だよ!」
「なんだよ全然知らなかったわ。泉教えろよ」
「え?だって私も知らなかったよ」
この二人はまさかの友達らしい。琴美と梨奈ってどんな繋がりなのか想像もつかないが二人は仲良さげだった。
「泉もそうだけど梨奈も教えてくれたら良かったのに!あ、梨奈また琴美の家に来て?琴美すっごいおっきいパズル買ったんだよ!」
「おっ、マジ?行くわ。こないだ昼寝しちまったし、次は頑張んねーと終わんねーから頑張ろう」
「うん!琴美良い方法思い付いたから次は平気だよ絶対!」
なんの話かよく分からないが琴美と話が噛み合ってる梨奈はすごい。なに繋がりなんだろう?私が話しかけようとしたら琴美の後ろにいた結が琴美に話かけた。
「琴美、誘うんじゃないの?」
琴美は結の声にハッとする。
「あっ!ごめん忘れてた!泉明日の放課後暇?明日結と一緒にエレクトーンやろうって話してたんだけど泉も来ない?」
本題はそれだったのか。せっかくの誘いだから行きたいが明日は塾がある。
「行きたいけど明日塾あるから無理だ」
「えー!塾あるのー?泉とも遊びたかったのに!!」
とても残念がる琴美に結は外面の笑顔で穏やかに言った。
「予定があるんじゃしょうがないでしょ」
「でも琴美は泉とも遊ぶ予定だったもん!」
「それは琴美の中の予定でしょ?いつでも遊べるんだからもう帰るよ琴美」
「んー!琴美三人で遊びたい~」
「琴美」
我が儘を言う琴美は引き下がらなさそうだった。これは長くなりそうな予感がする。結も引かなさそうだし私がどうにかするか、そう思っていたら琴美は珍しく諦めたようだった。
「もー……じゃあ中間終わったら遊ぼうね?絶対だからね?」
「うん、いいよ。朝三人で決めようよ日にち」
「うん」
「じゃあまたね」
次の予定を決められた事で二人に挨拶をして別れた。中間が終わったらいつもの三人で遊ぶのは冬休み前のテスト以来だから楽しみでもある。でも、その前にカラオケだ。
梨奈とはその後プリクラをとってから梨奈が好きだというポテトが美味しい店でポテトを食べていた。美味しいねと言いながら味の違うポテトをシェアしていると梨奈は意外そうな顔をして話しだした。
「そういえば泉って琴美と友達だったんだね。しかもあの
何がどうヤバイのか分からない私は聞き返した。
「え、何がヤバイの?」
「え?だって
「えっ?!そうなの?」
聞き捨てならないそれに耳を疑う。男の噂とか聞いたことないし私なんなら付き合ってるんだけどどういう事?梨奈はポテトを食べながら教えてくれた。
「泉知らねーの?あいつ一年の時から学年一位だし可愛いからひっきりなしに告白されてんじゃん。誰と付き合ってるのかは知らんけどずっと噂されてんし今もよく告白されてんよ。許嫁いるとか言われてっけどどうなんだろうな。泉知ってる?」
「……いや、知らん…」
衝撃的な話に私は動揺しかしていなかった。告白されても言わないのは分かるけどそんなに告白されてたの?そんな結をゲットできた私は優越感すら感じるけどそんな話ではない。
私鈍いにもほどがないか?自分が嫌になる。そんなの全く知らずに過ごしてたとか能天気かよ。しかもこないだのデートで逆に心配されてるし。私が心配しないといけない立場なのに。
私はダメージを受けながら梨奈に更に聞いた。
「他にはなんか言われてんの?結って」
こないだの誕生日を知らなかっただけでも罪なのに最悪だよ私。この際ショックを受けても良いから聞こう。
「んー、可愛くて頭が良いとはずっと言われてんな。んでもあいつはそれより男ネタだろ。めっちゃ振ってるみたいだから理想高いんじゃねって話じゃん?まぁ、あんだけ可愛けりゃ分かるけどあいつと付き合うって相当揃ってないと無理だろ」
「……あー、確かにそうだね…」
全然揃ってない私が付き合ってるんだけどちょっと傷つく、とは言えずに苦笑いした。
とりあえずまとめると皆さんから高嶺の花の結を男達が狙っているが、付き合っているのか詳細は分からずいろんな噂は耐えないのに男は引かずに告白しまくっているらしい。
新事実を知った私は色々ショックを受けていた。結に告白するのは腹立つし結がそんなに狙われてると大丈夫だと思うが心配になる。
「泉そろそろ行こーぜ。カラオケで発散しよ」
「あぁ、そうだね」
カラオケしてる場合じゃないんだけど気を紛らすためにもカラオケをしよう。こういうのは大事。
私はポテトを食べ終わると梨奈と一緒にカラオケ屋さんに向かった。二時間くらいKANAKO中心にはしゃいで歌いまくったから結を忘れられて楽しかったのに終わった瞬間から結を考えてしまっていた。
結は基本的に聞かないと言わない時があるが告白されたって自慢みたいに聞こえるから普通は言わないだろう。それにしても気になる。結に告白の事を聞きたいがいきなり告白されてるんだって?とは聞けない。でも、気になって気になって仕方ない。それでも聞きづらい。小心者の自分のせいで気分が下がる。そもそも告白の話題とか一切出さないし結を信じきっている私はそんな心配を全くしていなかったので、衝撃的すぎて心が落ち着かないのだ。
梨奈からの話を聞いてから私は結にずっと悶々としていた。告白されてる事実を知ってから結のことがいつも以上に気になる。
結は今告白されているんだろうか。常に結の告白の事が頭から離れない私は結にずっと聞けずにモヤモヤして一人でそわそわしていた。
そんな時に私が食いつきたくなるような話を持ってきたのはやはり梨奈だった。
その日はいつも通りな日だったのに梨奈は帰り際に私の腕を引いて楽しそうに話しかけてきた。
「泉!今日面白いもん見に行こうぜ!」
「いきなりなに?なに見に行くの?」
突然どうしたんだろう。梨奈は私に小声で説明してきた。
「
「えっ?!誰?!行く!!」
私は思わぬ情報に即答していた。
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