第60話
嫌な事の後には楽しい事がある。それは確かみたいでバイト続きの私は今日琴美とデートをしていた。
今日はあの日二人で考えて一番最初に琴美が行きたいと言い出したゲームセンターに来たのだが琴美は本当にはしゃいでいた。
「泉!すっごいゲームがいっぱいあるね!うるさいけど楽しい!」
琴美は私の手を繋ぎながら大喜びしている。ゲームセンターに行った事がないらしい琴美は予定を立てている時から楽しそうにしていた。私もあんまり行かないからそこまで詳しくはないが初めてなら楽しませてあげられるだろう。
「二人でやれるゲームやる?銃で撃ったりするの楽しいよ」
「やる!どれ?早くやろう!」
「うん、ちょっと待って」
琴美がすぐに頷いて楽しそうに手を引くから私は笑いながら二人でできるアドベンチャーゲームを探した。
「恐竜とか虫?倒すやつとゾンビ倒すやつあるけどどっちやる?」
倒すやつが違うだけで二人で座りながらやれるゲーム機の前で琴美に聞いた。
「ゾンビやだー。琴美怖くないやつが良い」
「じゃ、こっちにしよっか」
「うん!」
そういえば琴美は怖いのが苦手だったか。私は車のような外見のゲーム機の中に入った。中は二人掛けで座れるようになっていて銃が二つ備え付けられている。琴美はその銃に目を輝かせていた。
「わぁ!泉泉!銃がすっごいリアル!かっこいい!」
「今は大体こんなもんだよ?死なないように頑張ろうね琴美」
「うん!楽しみだなぁ」
楽しそうな琴美を見ていたら私まで笑ってしまった。たかがゲームセンターなのに琴美は本当に嬉しいみたいで来て良かったと思う。
私達は早速お金を入れてゲームを始めた。車で走りながら恐竜等に出くわして倒して行く内容のゲームは琴美を興奮させるのに充分だった。早速空を飛ぶ恐竜が出てきたのに琴美は大はしゃぎだ。
「わぁー!!すごいやつ出てきた!なにこれ!楽しい!」
「琴美もう戦うよ。ちゃんと撃ってね」
「うん!琴美が倒すから任せて!」
ゲーム機が話してくれる通りの操作をしながら銃を動かして恐竜を撃つ。銃を撃つ音と恐竜が鳴く声がうるさいけど銃が震えるし座っているゲーム機自体も動いて臨場感があって楽しかった。
「楽しいけど全然死なないよ泉!」
琴美は楽しそうに私に声をかけてきたけど琴美はゲーム機が助言してくれた通りの恐竜の弱点しか狙わない。動きが早いのに琴美は全く弾を無駄にしていなくて初めてなのか疑うくらい上手かった。
「そんなすぐ死んだら楽しくないから死なないよ」
「そっか!じゃあ琴美もっと頑張る!」
奇声を上げる恐竜は琴美のおかげで倒せそうだけど頑張らないとならないのは私だ。私は柄にもなくゲームを一生懸命頑張った。ちょっとやられかけているけど琴美の足を引っ張れない。
「あー!もう少しだ!」
「うん!あっ!止め刺したよ!!」
琴美のおかげで恐竜を倒して一つ目のエリアをクリアした。私死ななくて良かったとほっとしていたら琴美はクリアした喜びに私の腕に抱きついてくる。
「やったね泉!倒したよ!すっごく楽しいね!」
「うん、やったね琴美。ていうか琴美すんごい上手だったね」
「え?本当?琴美やった事ないけど上手かったの?」
分かっていない琴美はゲームさえもお手の物らしい。天才肌だなぁと思いながら頷いた。
「上手かったよ。私死にそうだったし、次のエリアですぐ死ぬと思うから死んだら応援するね」
「えー、泉が死んだら琴美つまんないよ」
「楽しいよ。ほら、次のエリア来たよ?」
不満そうに言う琴美に笑ってしまう。さっきあんな大興奮だったのに何を言っているのやら。
ゲームが次のエリアに移って始まったら琴美はまたはしゃぎながら銃を撃っていた。
私は宣告通りだいぶやられていたのですぐに死んでしまったけど琴美はかなりいい線まで行った。さすがに二人用だから次の恐竜は倒せなかったが銃を撃つのが楽しかったのか琴美は終わったあとも本当に喜んでいた。
「あぁー、楽しかった!泉次は何する?」
「ん?そうだね、次は……エアホッケーでもやる?」
「なぁにそれ?やりたい!」
「簡単だから楽しいよ。円盤みたいなのを打ち込むゲームなんだけど、こっちにあるかな…」
エアホッケーは負けるかもしれないけど簡単だし楽しいだろう。私は笑って案内した。エアホッケー台まで来ると琴美は目を輝かせていた。
「これ楽しそう!!琴美やった事ないけど見た事ある!」
「マジ?じゃあ大丈夫だよ。あっ、折角だから何か賭ける?それか琴美が買ったら何か奢ってあげようか?」
私はお金を入れながら琴美に聞いた。ただやるだけじゃつまらないから、こうした方がやる気が出る。琴美は少し考えるような素振りをすると私の手を引いてきた。
「そういうのじゃないとダメ?」
「え?いや、別に何でも良いよ?」
ちょっと不安そうにするから私は笑って答えてあげる。すると琴美は可愛らしく笑った。
「じゃあ、次のアクアリウム展に行ったら琴美がいつも遊んでる部屋に行こう?琴美泉と二人っきりでいたい」
「え?……まぁ別に良いけど、デートなのに良いの?」
今の時点でも二人きりだけど琴美の意見は変わらない。
「うん。琴美は泉とだけいたいの」
琴美のストレートな物言いは私を少しドキッとさせる。可愛い琴美にこんな事を言われては少し照れるけど小さなお願い事は正直嬉しくて私はしっかり頷いた。
「いいよ。じゃあ、私が勝ったら……琴美のヴァイオリン聴かせて?」
「そんなので良いの?ヴァイオリンなんか泉が聴きたいならすぐに聴かせてあげられるよ?」
確かに琴美なら私が言えばやってくれるだろうけどこれは琴美のために言ったから変更はしない。私は急かすように言った。
「いいのいいの。早くやろ?」
「う、うん」
私達は打つための道具であるマレットを持ってエアホッケーを始めた。
最初は私が優勢だった。琴美は初めてだからちょっとズルかったかなと思ったけど私はすぐに形勢逆転をされていた。ここのエアホッケーは十点どちらかが取れば終わりだけど私の点は四点。それに対して琴美は八点だ。早い段階で私はすぐに追い詰められてしまっていた。
「琴美強いね。全然目で追えないよ」
現に今も素早いスマッシュを決められて点数を取られた。あと一点で負ける。頑張ってやってるのに琴美は反射神経が良いみたいで私がスマッシュを打ってもすぐに止めてくる。その割りに琴美の動きは機敏で早くて私は翻弄されてしまっていた。
「絶対勝ちたいもん!負けないからね泉」
この点数差じゃ私が勝つのは無理に等しいけど私も最後まで頑張るつもりだ。
「うん!私もまだ頑張るからね」
息込んでパックと呼ばれる円盤を早速打ったけど琴美はやっぱり止めてきた。
「ふふふ、でもこれ楽しいね」
琴美は楽しそうにスマッシュを打ってくる。慌ててどうにかマレットで止められたけど次来たら止められるかどうか。私は勢いよくパックを弾いた。
「あっ!入れられちゃった…。次で決めるからね泉!」
まぐれでゴールに入れられたけど琴美の闘志を益々燃やしてしまったみたいだ。
「絶対止めるから平気」
それでも私は楽しくて笑ってしまった。こんなゲームで真剣に頑張ってしまえる私達は単純だ。だけど琴美は宣告通り一瞬で私から点数を取ってきた。琴美のスマッシュは早すぎて反応できない。
「やった!琴美の勝ちだ!!」
「あーあ、負けちゃったよ。琴美おめでとう」
道具を片付けると琴美は笑って私に近寄ってきたと思ったらすぐにまた手を繋がれた。
「泉さっきの守ってよ?」
「うん、分かってるよ。でも、もう少し遊んでこうよ?まだゲーム沢山あるから」
「うん!琴美さっきの銃で撃つのみたいな楽しいやつやりたい!」
「うん、いいよ」
私は琴美をまた案内しながらゲームを楽しんだ。エアホッケーは負けてしまったけど琴美のお願いが叶うなら別に構わない。私の勝った時の願いも琴美がもし負けた時に琴美のお願いを叶えられるようにしただけだしこれは完全にできレースみたいなものだった。それでも楽しかったから私は良いのだ。
その後もいろんなゲームをして楽しんだ。銃で撃つゲームを気に入った琴美は見かけが清楚なお嬢様だから銃を持つだけで違和感があったけれど楽しそうだった。それにリズムゲームもやったけどそれも琴美は本当に上手かった。琴美は結の幼馴染みだけある。
ゲームセンターで一通りゲームを楽しんだ私達は次の目的地、アクアリウム展に向かった。都内で夏場限定で開かれるそれは金魚をメインにした水槽の展示をしていて幻想的な水中アートを売りにしている。このアクアリウム展はテレビでも有名だった。
これを提案したのは私だが、琴美は喜んで頷いてくれたのだ。
アクアリウム展に着くとチケットを買って楽しそうな琴美を連れて展示されているエリアに入った。
「うわぁー、めっちゃ綺麗だね琴美」
中は薄暗いけど金魚の水槽が様々な色を使って照らされていて輝いている。水槽も様々な形をしているから光が反射してそれが幻想的で綺麗で感動した。
それは琴美も一緒みたいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます