第45話


それから学校に到着して三人で教室に向かって琴美とは私達の教室で別れた。琴美は本当に寂しそうにしていたけど結はウザそうに早く帰るように促すからそれでもひと悶着していて私はもう頭が痛かった。



そしていつも通り授業が始まる。

もうすぐ期末テストだからしっかり聞かないとならないけどやっぱり私はバカだから分からないところは何個かある。

前に比べたらましだけど勉強会の日に結にしっかり教えてもらう予定だ。


結は私が告白して数日後に普通に勉強会の提案をしてくれて最初は私の方が戸惑ってしまった。

勉強会は嬉しいけど結を好きでいる私と二人きりだなんて結が嫌かもしれないから私は提案するつもりはなかったのに結は気にもしていないようだった。



私が結を襲う何て事は考えられないけど結は私を信頼してくれて前みたいに接してくれるのが嬉しかった。

それに結と二人きりなのは結を好きな身としては純粋に嬉しいしまたドキドキしてしまいそうだなと思う。でも今日琴美が来たがっていたから二人は叶わないだろう。琴美はたぶんというか絶対どうにかして来るに違いないから。


私は勉強会を楽しみに授業を毎日しっかりこなして自分なりにも勉強をしつつ勉強会までいつも通りの日常を過ごした。



ところが勉強会前日、テスト期間はバイトの休みを長く取るのだが田村さんが風邪みたいで急遽出る予定になった。

生きてる限りこういう事は仕方ないから潔く代わりに出たんだけど今日は涼介と一緒で遠藤さんじゃないのか、とがっかりしていた。


「涼介の学校ってまだテスト期間じゃないの?」


私はデザートを作りながら涼介に聞いた。うちのファミレスはデザートはホールが作る事になっているから注文が入ったパフェを私は適当に作っていた。

涼介は少しジュースを飲みながら休憩しているけど大体いつでもバイト先にいるこいつはテストは大丈夫なのか。


「いや、今テスト中だぞ」


普通に答えた涼介に私はパフェに乗せようとしたアイスを落っことしそうになった。こいつ頭大丈夫なの?ていうか私をキレさせたいの?


「…なんでバイト来てんだよ」


「泉だって来てんじゃん。あっ、泉じゃなくて柳瀬か、いっつも忘れんな」


それに関しては私も忘れていたけどこいつテストをなめ腐っている。とりあえずパフェの最後の仕上げに生クリームを絞って完成させてから提供して裏に帰ってくると涼介はホールに出たみたいでいなかった。


あいつまた私が涼介のお母さんに嘆かれそうな事しやがって、文句言ってやろうと思っていたら帰ってきた涼介は思い出したように私に話しかけてきた。


「泉、そういえば夏休みの事なんだけどこないだ泉いない時に話してて川の近くで道具不要でBBQできるとこあるみたいでそれ良くねってなったんだけどどうだ?」


「普通に良いと思うけどそれよりテストだよ、テスト。余裕過ぎない涼介、勉強したの?」


夏休みの予定は楽しみだし行きたいけど私にはそんな事よりテストの方が重要だ。涼介はバカみたいに笑って答えた。


「ちょっとしたから大丈夫だって!俺今回は赤点ない気がすんだよ」


「気がするだけだろ。おまえ本当に人生なめてんな。何度も言うけど涼介が赤点取ると私が涼介のお母さんにまた勉強教えてあげてって言われるから本当やめてくれる?こないだ涼介のお母さん見かけた時に走って逃げたんだからな私」


詰まる話私は涼介に勉強を教えたくない。本当に頭が悪すぎるから。しかも涼介って話す内容が頭悪いんだなって思うような事とバスケの話ばっかでマジでどうでも良いし最終的に二人でもあんまりいたくない。涼介は相変わらず私の気持ちなんか分かってもなさそうだった。


「まぁまぁ、大丈夫だって。それにちょっとくらい勉強教えてくれても良いじゃんか。泉あんなお嬢様学校に通ってんだから俺に教えるの何て簡単だろ?」


「いや、簡単じゃないから。涼介の頭の悪さはマジ引くしもうしたくないから。超妥協してノートは貸してやっても良いけどノート失くしたら殺すっていうか原型が失くなるくらい殴って…」


「ピーンポーン」


本当の思いを真顔でもっと言ってやろうと思っていたらオーダーを呼ぶベルが鳴った。良いところに鳴りやがって、涼介は私の言った事なんか気にもしてないかのようにオーダー取ってくるわと颯爽とホールに出た。


あいつ本当にいつになったらバカじゃなくなるんだよ、私は内心呆れつつも会計も呼ばれたのでレジに急いだ。

それから少し涼介を説教しながらバイトをしていたら思わぬ客がやってきた。



「泉~!!」


私のバイト先は教えていないのに入り口に来た私に琴美は入ってくるなり抱きついてきた。


「琴美?!いきなりどうしたの?…とりあえず今バイト中だから離れて」


突然来た琴美に驚いたけど琴美に色々思ったら負けだなと思って落ち着いた。琴美はこういう生き物と自分に言い聞かせながら冷静に引き剥がそうとしたら琴美はにこにこ笑いながら離れた。


「泉バイトの制服似合ってる!かっこ可愛い!琴美ドキドキしちゃった!」


「あ、うん、ありがとう。それより何しに来たの?」


「泉の事考えてたら泉に会いたくなっちゃって来ちゃった!」


「…あっそう…」


可愛らしく言われても私は苦笑いするしかなかった。今日も学校で会ったし話したんだけど、琴美って行動力ありすぎ。どうせ何か言っても帰らないだろうし私はとりあえず空いている席に案内しようと思った。


「何かありがとうね来てくれて。琴美とりあえず食べていけば?お腹空いてる?」


「うん!食べる!」


「じゃあ付いてきて」


私は適当に空いてる席に琴美を案内してあげると琴美は嬉しそうに席に座ってメニューを開いた。


「琴美決まったらこないだのファミレスみたいにベル鳴らして…」


「泉は何が好き?」


「え?私は別にそんなないけど」


一応説明しとこうと思ったけど唐突に遮ってきた琴美の質問に答えた。すると琴美はメニューを私に見せてきた。


「琴美は泉が好きなの食べたいから泉が選んで?」


「え、また?琴美自分の食べたいの食べなよ」


琴美は前も私と同じが良いと言っていたけど琴美って本当に子供みたい。私は琴美によく好かれている。


「琴美は泉と一緒じゃないと嫌なの!早く選んで?」


ちょっとむすっとしたような顔で急かしてきた琴美にしょうがないから私がよく食べているやつを教えてあげた。


「じゃあ、シーフードサラダとドリアとティラミスは?私よくバイト終わりに食べてるけど琴美は嫌いじゃない?」


「うん!琴美それにする!」


「はいはい。あ、あと琴美の好きなドリンクバーつける?」


「うん!つけて!あれ楽しいから琴美好き」


「うん分かったよ」


私はハンディに打ち込んでからハンディをしまった。琴美は前一緒に行ったファミレスでドリンクバーを気に入って色々混ぜて楽しんでいたから今日もやりそうだ。

私がドリンクバーの場所を教えてあげると琴美は早速嬉しそうにドリンクバーに向かってしまった。



私はその後いきなり来た琴美を気にかけながら料理を提供したり食べ終わった皿を片付けたりしていた。琴美は私がホールに出ているとずっと嬉しそうに私を見てきて何だかやりずらかった。そうこうして裏に戻ると興奮気味に涼介が話しかけてきた。


「泉!七卓の子泉の友達か?めっちゃ可愛いな!」


「え?ああ、そうだけど…」


卓番まで覚えている暇あったら仕事しろよと思うけど涼介はそれどころじゃないみたいだった。


「あんな可愛い子初めて見たかもしんねぇ……あの子天使か?!可愛すぎて五度見しちゃったよ俺!あの子俺に紹介してくれ泉!頼む!」


必死そうに言ってきた涼介に顔がひきつってしまう。こいつ本当キモい。私は本当に引きながら事実を述べた。


「琴美は無理だよ。琴美は生粋のお嬢様だしあんた何かそこら辺の石ころと一緒だよ。無様にボールみたいに転がってろ。てか、必死過ぎて気持ち悪いんだけど。鳥肌立つわ」


「えー!バスケできるイケメンいるって言ってくれよ」


「バスケって言ったってボール投げて走るのが上手いだけでしょ?強い訳でもないのに金にも腹の足しにもならない事自慢してどうすんだよ。いいから早くオーダー行ってきて。呼んでるから」


嘆いてきた涼介をあしらってオーダーに向かわせると私は料理の提供をして空いたテーブルを片付ける。一通り片付けが終わった私は裏でゴミ集めをしていたら涼介が私に近付いてきた。またくだらない事かよって思って無視しようとしていたら涼介はでかい声で嬉しそうな顔をして声をかけてきた。


「泉!友達が呼んでるぞ!」


「ん?琴美?」


「おう!俺も一緒に行って話したい!」


こいつの発言に顔がひきつって仕方ない。私は集めていたゴミの袋を渡した。


「キモいから来ないでマジで。私行ってくるからとりあえずゴミ集めしてゴミ出しといてよ」


「えー、仕方ねぇな……」


もう料理提供も終わったのに何だろう。涼介は悲しそうにゴミ集めを代わってくれたから私は琴美のテーブルに向かうと琴美は嬉しそうに笑っていた。


「琴美どうかしたの?」


デザートのティラミスを食べながら何かヤバイ色した飲み物を飲んでいる琴美は携帯を私に向けた。


「あっ!泉待ってたんだよ?泉の写真撮りたいから動かないで?」


「え?写真?」


そんなの撮ってどうすんの?と言おうとしたらもう撮られてしまった。そして私の手を掴むとカメラを自撮りできるように切り替えて私に密着してくる。


「二人のも撮ろ?ちゃんと笑ってね?」


「はいはい」


何枚か写真を撮った琴美は満足そうに笑うけど私の手を離してくれない。こんなとこでやめてほしいけど琴美がやめるはずがない。


「えへへ、泉が働いてる姿が新鮮で可愛いくてかっこいいから琴美顔がにやけてきゅーってなっちゃう!」


「……うん、よく分かんないけど普通だよ」


「普通じゃないよ?泉かっこいいもん!琴美にやにやが止まらなくて明日からずっとにやにやしちゃうかも」


「…うん、だから普通だよ琴美」


琴美に誉められても私はマジで普通だからどう反応すればいいのやら。その後も誉めてくる琴美と少し話して琴美の会計をしてあげたけど琴美は普通な顔をして高そうな財布からブラックカードを出した。


「泉、ここはカードって使えるの?」


「今大体どこでも使えるよ。カードでいいの?」


「うん、カードで」


金持ちしか持たないブラックカードを初めて見たなと思いながらレジを操作する。琴美って知ってたけどヤバイお嬢様なんだなと関心しながらレシートと控えとカードを返す。


「はい、ありがとうございました」


「うん!楽しかったよ泉!泉もうすぐバイト終わりでしょ?一緒に帰りたいし話したいから琴美外で待ってるね!」


「え、琴美…ちょっと……」


悪いから断ろうとしたのに琴美は笑顔で嬉しそうに行ってしまった。家近いからいいのに、バイト終わりに外に出たら本当に待っていた琴美に車で家まで送られた。琴美の好意による行動は驚くし反応しづらいけど琴美が嬉しそうだからいいかと思う私は甘いのか。


車の中で琴美は私のバイト中の事しか話さなくてその表情があんまり嬉しそうだから私も笑ってしまっていた。



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